「企業の強みって、どうやって分析すればいいんだろう?」
「『持続的な競争優位性』が大事だとは聞くけど、それって一体何?」
戦略コンサルティングファームのケース面接では、クライアント企業の戦略を考える上で、その企業の「強み」を正確に特定し、それが競合に対してどれだけ有効かを評価することが不可欠です。
しかし、単に「ブランド力がある」「技術力が高い」と挙げるだけでは不十分。その強みが「持続的な競争優位性」に繋がりうるのか、その質を見極める必要があります。この強みの「質」を評価するための強力なフレームワークが「VRIO分析」です。
この記事では、実際にMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)の内定を獲得した筆者が、企業の内部環境分析に特化した「VRIO分析」について、その基本的な考え方から、ケース面接での実践的な使い方、よくある失敗例までを、具体的なケース(メルカリの成長戦略)を交えながら徹底的に解説します。
この記事を通じて、企業の強みを表層ではなく構造的に捉える視点が身につくはずです。
VRIO分析とは?基本的な考え方をケース面接向けに解説
まず、「VRIO分析」がどのようなフレームワークなのか、その基本をしっかりと押さえましょう。
VRIO分析は、経営学者ジェイ・B・バーニーが提唱した、企業の経営資源(リソース)が「持続的な競争優位性」の源泉となるかを評価するためのフレームワークです。企業の内部環境、特に「強み」を深掘りする際に用いられます。
VRIOは、以下の4つの問いの頭文字から名付けられています。
評価項目 | 英語 | 問い |
---|---|---|
経済的価値 | Value | その経営資源は、事業の機会を活かし、脅威を無力化するのに役立つか? |
希少性 | Rarity | その経営資源を保有している企業は、ごく少数か? |
模倣困難性 | Imitability | その経営資源を、競合他社が模倣(獲得)するのは困難か? |
組織 | Organization | その経営資源を最大限に活用するための、組織的な体制(方針、手続き)が整っているか? |
VRIO分析の評価フロー(視覚的理解)
VRIO分析は、ある経営資源(強み)に対して、V→R→I→Oの順番に「Yes/No」で問いを立てていくことで、その競争上の優位性のレベルを判定します。

graph TD
A[経営資源] -->|Value(価値)は?| B{Yes/No};
B -- No --> C[競争劣位];
B -- Yes --> D{|Rarity(希少性)は?|};
D -- No --> E[競争均衡];
D -- Yes --> F{|Imitability(模倣困難性)は?|};
F -- No --> G[一時的な競争優位];
F -- Yes --> H{|Organization(組織)は?|};
H -- No --> I[活用できていない競争優位];
H -- Yes --> J[持続的な競争優位];
- V (価値) が No: そもそも競争の土台に立てていない「競争劣位」の状態。
- V が Yes, R (希少性) が No: 価値はあるが競合も持っているため、「競争均衡(平均レベル)」の状態。
- V, R が Yes, I (模倣困難性) が No: 価値があり希少だが、すぐに真似されるため、「一時的な競争優位」に留まる。
- V, R, I が Yes, O (組織) が No: 宝の持ち腐れ。持続的な優位性のポテンシャルはあるが、「活用できていない競争優位」の状態。
- V, R, I, O すべてが Yes: 初めて「持続的な競争優位性」と評価できる。
VRIO分析とSWOT分析の違い
SWOT分析も企業の強み(Strength)を分析しますが、VRIO分析とは目的と深さが異なります。
- SWOT分析: 内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を網羅的に洗い出し、整理するのが主な目的。強みをリストアップする段階。
- VRIO分析: SWOT分析で洗い出した「強み」の中から、特に重要なものを取り出し、その「質」を評価・判定するのが目的。「その強みは、本当に競争優位の源泉なのか?」「それは長続きするのか?」を深掘りする段階。
ケース面接では、まずSWOT分析で自社の強みをリストアップし、その中で特に重要と思われる経営資源についてVRIO分析を用いて深掘りする、という流れで使うと、分析に深みが出ます。
ケース面接でVRIO分析が活きるお題と見極めのポイント
VRIO分析は、企業の内部環境、特にその「強み」の質を問う場合に非常に有効です。どのようなお題でこのフレームワークが思考の武器となるのか、その見極め方と使う際のポイントを解説します。
VRIO分析が活きるお題のパターン
1. 「〇〇社の競争優位性の源泉は何か?」を問うお題
- お題例:
- 「クライアントはメルカリです。その持続的な競争優位性の源泉を分析し、今後の成長戦略を提案してください」
- 「なぜキーエンスはあれほど高い利益率を誇るのか?その競争力の源泉を構造的に説明してください」
- なぜ活きるのか?
このタイプのお題は、VRIO分析の核心である「持続的な競争優位性」を直接問っています。VRIOの4つの問い(Value, Rarity, Imitability, Organization)は、企業の強みを評価するための明確なチェックリストとして機能します。「メルカリの強みは大きなユーザーベースですが、これはVRIOの観点から分析すると…」というように、構造的かつ網羅的に強みの質を評価し、なぜそれが「一時的」ではなく「持続的」な優位性に繋がっているのかを説得力を持って説明することができます。
2. 競合が激しい市場での差別化戦略や防衛戦略を考えるお題
- お題例:
- 「あるスタートアップが、既存の大手企業がひしめく市場に参入します。どのように競争優位を築き、維持すべきですか?」
- 「クライアントは業界トップシェアですが、近年、競合の猛烈な追い上げを受けています。どのように競合の模倣を防ぎ、トップの座を守るべきですか?」
- なぜ活きるのか?
競争戦略を考える上で、「いかにして競合に真似されないか」という視点は極めて重要です。VRIO分析の「I: 模倣困難性」と「O: 組織」は、まさにこの点を分析するための重要な観点です。どのような経営資源(例:特許、独自の企業文化、複雑なオペレーション、長年の顧客との信頼関係など)が模倣の壁となるのかを特定し、その壁をさらに高くするための戦略を考える上で、VRIO分析は強力な思考の羅針盤となります。
3. クライアントの「アセット(経営資源)活用」がテーマのお題
- お題例:
- 「大手不動産会社が持つ都心の一等地や顧客データを活用して、新規事業を立案してください」
- 「伝統的な製造業が持つ、熟練工の技術という無形資産を、どのようにして今後の競争優位に繋げるべきか?」
- なぜ活きるのか?
このタイプのお題では、まずクライアントが持つアセット(経営資源)がVRIOの観点でどのような評価を受けるかを分析します。例えば、「熟練工の技術」は価値があり(V)、希少で(R)、模倣も困難(I)かもしれません。しかし、その技術を活用する組織(O)、例えば、技術を若手に伝承する仕組みや、新しい製品開発に活かすプロセスがなければ、「宝の持ち腐れ」になってしまいます。VRIO分析を用いることで、単にアセットをリストアップするだけでなく、それを「どう活用すれば持続的な競争優位に繋がるのか」という、組織的な側面まで踏み込んだ戦略を検討することができます。
フレームワークを使う際の重要なポイント
- 分析対象となる「経営資源」を具体的に定義する:
分析を始める前に、「ブランド力」「技術力」といった曖昧な言葉ではなく、具体的に何を指しているのかを明確にします。例えば、「技術力」であれば、「〇〇に関する特許群」や「△△を製造するための独自のノウハウ」といったレベルまで具体化することで、分析の精度が上がります。 - VRIOは4つの関門をクリアするゲームと捉える:
Valueの関門をクリアできなければ、その時点で分析は終了(競争劣位)。次にRarity、Imitability、Organizationと、段階的に評価を進めていくことで、思考が整理され、論理的な説明がしやすくなります。 - 特に「I(模倣困難性)」と「O(組織)」を深掘りする:
ケース面接で差がつくのは、なぜそれが「真似できないのか(I)」、そしてそれを活かすためにどのような「組織的な仕組み(O)」があるのかを具体的に説明できるか、という点です。模倣困難性の源泉(例:歴史的経緯、因果関係不明性、社会的複雑性)や、組織的な仕組み(例:人事制度、情報システム、業務プロセス)にまで踏み込んで分析できると、非常に評価が高くなります。
ケース面接で陥りがち!VRIO分析利用時のよくある失敗
VRIO分析は、企業の強みを深く、鋭く分析するためのフレームワークですが、その概念を正しく理解していないと、表層的な分析に終始し、かえって評価を下げてしまうことがあります。ここでは、VRIO分析を用いる際によくある失敗例と、その回避策について解説します。
失敗例1:「強み」と「競争優位性」の混同
企業の持つ特徴や経営資源をリストアップし、それを全て「強み」であり「競争優位性」であるかのように語ってしまうパターンです。例えば、「高い知名度」「全国の店舗網」「豊富な資金力」などを挙げ、「これらが強みです」と結論づけてしまいます。
- なぜダメなのか?
- VRIO分析の本質は、単なる強み(特徴)と、競合を上回り利益を生み出す「競争優位性」とを区別することにあります。競合他社も同じような資源(例:大手なら豊富な資金力は当たり前)を持っていれば、それは希少性(R)がなく、「競争均衡」の状態であり、優位性の源泉とは言えません。
- 思考の深さがないと判断されます。何が「その他大勢」との違いを生み出しているのか、その本質を見抜けていません。
- どう回避するか?
- 必ず4つの問い(V→R→I→O)を順番に適用する: リストアップした経営資源の一つひとつについて、「①そもそも価値はあるか?」「②競合は持っていない希少なものか?」と段階的に問いかけます。このプロセスを経ることで、単なる特徴と真の競争優位性を篩い分けることができます。
- 常に「競合と比較して」という視点を持つ: 「その強みは、本当に競合にはないものか?」と自問自答する癖をつけましょう。
失敗例2:「I(模倣困難性)」の分析が浅い
ある経営資源が「希少(R)」であると判断した後、「なぜそれが模倣困難なのか(I)」という最も重要な問いに対して、「独自のノウハウだから」「企業文化だから」といった具体性のない言葉で片付けてしまうパターンです。
- なぜダメなのか?
- 「持続的な」競争優位性を考える上で、模倣困難性の源泉を特定することは極めて重要です。ここが曖昧だと、戦略の説得力が著しく低下します。
- なぜ競合が同じことをできないのか、その「壁」の正体を具体的に言語化できていないと、思考が浅いと見なされます。
- どう回避するか?
- 模倣困難性の源泉を具体的に分解する: なぜ模倣が難しいのか、その理由を具体的に説明します。一般的に、模倣困難性は以下のような要因から生まれます。
- 独自の歴史的条件: たまたまその企業だけが経験した歴史的な経緯や、幸運によって得られた資源。(例:都心の一等地の不動産を昔安く手に入れた)
- 因果関係不明性: なぜその企業が成功しているのか、その成功要因の結びつきが複雑で、外部からは(時には内部の人間からも)完全には理解できない状態。(例:トヨタ生産方式、卓越した企業文化)
- 社会的複雑性: 企業内の人間関係、サプライヤーや顧客との信頼関係、企業文化など、多くの人々や関係性の相互作用によって成り立っている資源。
- 特許や知的財産: 法的に保護されている資源。
- 模倣困難性の源泉を具体的に分解する: なぜ模倣が難しいのか、その理由を具体的に説明します。一般的に、模倣困難性は以下のような要因から生まれます。
失敗例3:「O(組織)」の視点の欠如
価値があり(V)、希少で(R)、模倣困難(I)な経営資源を見つけたことに満足してしまい、それを「活用するための組織的な仕組み(O)」についての分析が完全に抜け落ちてしまうパターンです。
- なぜダメなのか?
- どんなに素晴らしい資源も、それを活かす組織がなければ「宝の持ち腐れ」です。VRIO分析の4つの要素は全て揃って初めて「持続的な競争優位性」となります。Oの視点の欠如は、フレームワークの理解不足と見なされます。
- 戦略の実行可能性に対する考慮が欠けていると判断されます。コンサルタントは、戦略を描くだけでなく、それを実行する「組織」の側面も考慮する必要があります。
- どう回避するか?
- 常に「仕組み」を問う: 「その素晴らしい技術を、全社的に活用するための情報共有システムはあるか?」「その優秀な人材を正当に評価し、リテンションするための人事制度は整っているか?」「その強力なブランドを維持・向上させるためのマーケティング部門の権限やプロセスは適切か?」というように、経営資源とそれを支える組織的な仕組み(システム、プロセス、権限など)をセットで考える癖をつけましょう。
VRIO分析は、企業の強みを「静的」にリストアップするのではなく、競争環境の中でいかにその価値を「動的」に維持・活用していくかを考えるためのフレームワークです。これらの失敗例を回避することで、より深く、戦略的な分析が可能になります。
【ケース面接 徹底解説】VRIO分析で解く「メルカリの成長戦略」
ここからは、本記事の核心であるケース解説です。「メルカリの成長戦略」というお題を用い、VRIO分析をどのように実践的に活用し、企業の競争優位性の源泉を特定、そこから戦略を導き出すのか、思考プロセスを追いながら具体的に解説します。
お題:クライアントはフリマアプリ最大手のメルカリです。その持続的な競争優位性の源泉を分析し、今後の3年間の成長戦略の方向性を提案してください。
1. 前提設定、問題の背景の言語化(面接官とのすり合わせ)
- クライアントについて:
- メルカリは、C2C(個人間取引)のフリマアプリ市場におけるリーディングカンパニー。
- ビジネスモデルは、出品者と購入者をマッチングするプラットフォームを提供し、取引成立時に販売価格の10%を手数料として徴収する成功報酬型。
- 現状:
- 国内市場では圧倒的なシェアを誇るが、成長はやや鈍化傾向にある可能性。
- 金融サービスの「メルペイ」、越境ECなど、周辺領域への事業多角化を進めている。
- 市場環境:
- 競合として、PayPayフリマ、楽天ラクマなどのフリマアプリ、ヤフオク!などのネットオークション、リサイクルショップなどのオフライン事業者も存在する。
- 目標設定:
- 「持続的な競争優位性」を維持・強化し、国内フリマ事業の再成長と、周辺事業とのシナジー創出を3年間のゴールとする。
【議論のゴール】
メルカリの持続的な競争優位性の源泉をVRIO分析で特定し、それをテコにして国内事業の再成長を実現するための3年間の戦略の方向性を提言する。
2. 仮説創出のための業界・商材の特徴分析
まず、メルカリのビジネスの根幹である「プラットフォームビジネス」の特性と、メルカリが持つ経営資源を洗い出します。
- ビジネス特性(プラットフォームビジネス):
- ネットワーク外部性(鶏と卵の問題): 買い手が多いほど売り手にとって魅力的になり、売り手(出品数)が多いほど買い手にとって魅力的になる、という好循環が事業成長の鍵。一度、支配的な地位を築くと、他社の追随が非常に困難になる。
- 信頼性・安全性: 個人間取引であるため、詐欺やトラブルを防ぎ、安心して取引できる環境の提供が極めて重要。
- メルカリの主な経営資源(強み候補):
- 圧倒的なユーザーベースとGMV(流通取引総額)
- 使いやすいUI/UX(簡単出品、匿名配送など)
- 強力なブランド認知度(「メルカリする」という動詞化)
- 取引データとAI技術
- 信頼性・安全性を担保する仕組み(エスクロー決済、メルカリ便、サポート体制)
- 金融サービス「メルペイ」との連携
【分析からの示唆・初期仮説】
メルカリの強みは単一の要素ではなく、複数の経営資源が絡み合って形成されている。特に、一度構築されると他社が模倣困難な「ネットワーク外部性」こそが、持続的な競争優位性の最大の源泉ではないか?
3. 論点の構造化とイシューの絞り込み(VRIO分析の活用)
洗い出した経営資源の中から、特に重要と思われる「①ユーザーベース(ネットワーク外部性)」と「②信頼性・安全性を担保する仕組み」を取り上げ、VRIO分析でその優位性の「質」を評価します。
VRIO分析:メルカリの経営資源
経営資源 | V (価値) | R (希少性) | I (模倣困難性) | O (組織) | 競争優位性のレベル |
---|---|---|---|---|---|
① ユーザーベース (ネットワーク外部性) | Yes (売買の機会を創出) | Yes (国内最大規模) | Yes (先行者利益、スイッチングコスト) | Yes (UI/UX改善、マーケティング) | 持続的な競争優位性 |
② 信頼性・安全性 (エスクロー、匿名配送) | Yes (取引の不安を解消) | No (競合も追随) | – | – | 競争均衡 |
【分析からの示唆と絞り込み】
- ②信頼性・安全性を担保する仕組み:
- 匿名配送やエスクロー決済は、C2C取引の不安を解消する上で極めて価値が高い(V)。
- しかし、現在ではPayPayフリマや楽天ラクマなど主要な競合も同様の仕組みを導入しており、希少性(R)は失われている。
- したがって、これは競争に勝つための「優位性」ではなく、市場で戦うための「必要最低条件(競争均衡)」となっている。
- ①ユーザーベース(ネットワーク外部性) (◎):
- V (価値): 売り手には「売れやすさ」、買い手には「見つかりやすさ」という直接的な価値を提供する。Yes。
- R (希少性): 国内フリマアプリで最大のユーザーベースと出品数を誇り、極めて希少。Yes。
- I (模倣困難性):
- 先行者利益: 一度ユーザーが集まると、ネットワーク外部性が働き、後発が追いつくのは非常に難しい(鶏と卵の問題)。
- スイッチングコスト: ユーザーは自身の取引履歴や評価をリセットしてまで、他のプラットフォームに移行するインセンティブが低い。
- これらの理由から、模倣は極めて困難。Yes。
- O (組織):
- メルカリは、この最大の資産であるユーザーベースを維持・拡大するために、継続的なマーケティング投資、UI/UXの改善、新規ユーザー向けキャンペーンなどを組織的に行っている。Yes。
- 結論として、ユーザーベースに起因するネットワーク外部性こそが、メルカリの「持続的な競争優位性」の源泉である。これを最重要イシューとする。
【絞り込み結果】
メルカリの成長戦略は、持続的な競争優位性の源泉である「ネットワーク外部性の維持・強化」を主軸に据えるべきである。
4. 打ち手
最重要イシューである「ネットワーク外部性の維持・強化」を実現するための具体的な施策を提案します。
【推奨戦略】
「取引の活性化」と「カテゴリーの深化」によるネットワーク外部性強化戦略
- How to Win(具体的な施策):
- 出品体験の更なる簡略化(売り手の増加・活性化):
- AI出品サポート機能の強化: 商品の写真を撮るだけで、AIが最適なカテゴリ、商品名、説明文、売れやすい価格を自動で提案する機能を強化。出品にかかる手間と心理的ハードルを極限まで下げる。
- 梱包・発送の簡略化: 「あとよろメルカリ便」のような、梱包・発送を代行してくれるサービスを拡充・低価格化する。特に大型商品やブランド品などで展開し、これまで出品をためらっていた層を取り込む。
- カテゴリーの専門化・深化(買い手の満足度向上):
- 専門性が高い「カテゴリー」の強化: 現在のファッションやホビーといった大きな括りだけでなく、よりニッチで専門性の高い領域(例:「ヴィンテージ古着」「トレーディングカード」「ハンドメイド資材」など)を深掘りする。
- 専門カテゴリー特化の機能開発: 各カテゴリーの専門家やインフルエンサーを公式アンバサダーとして起用し、真贋鑑定サポート(トレカなど)、相場情報、専門的な検索機能などを提供。これにより、マニアックなユーザー層のエンゲージメントを高め、そのカテゴリーにおける圧倒的な地位を築く。
- メルペイ連携による経済圏の強化:
- メルカリでの売上金を、手数料無料でよりシームレスに日々の決済(コンビニ、飲食店など)で利用できるようにする。
- メルペイでの決済実績や信用情報を基に、メルカリ内での取引をよりスムーズにする(例:後払い枠の拡大など)ことで、ユーザーをメルカリ経済圏にロックインする。
- 出品体験の更なる簡略化(売り手の増加・活性化):
- リスクと対策:
- リスク: カテゴリー深化は、開発リソースが分散するリスクがある。
- 対策: 全方位で展開するのではなく、GMVやユーザーの熱量が高いカテゴリーから優先的に着手し、成功モデルを確立してから横展開する。
- 優先順位・マイルストン:
- 1年目: AI出品サポート機能の精度向上とUI/UX改善。注力する専門カテゴリーの特定と、アンバサダーのリクルーティング。
- 2年目: 特定カテゴリーにおける専門機能のベータ版をリリース。梱包・発送代行サービスの実証実験開始。
- 3年目: 成功した専門カテゴリーのモデルを他カテゴリーへ展開。メルペイ連携をさらに強化。
- 次の一歩:
まず、既存の取引データを詳細に分析し、GMVが大きいにもかかわらず、まだ専門的な機能が提供できていない、ポテンシャルの高いニッチカテゴリーを複数特定すべきです。
5. 学びの抽象化、今回の問題を通じて伝えたいこと
- 「強み」と「持続的な競争優位性」は違う: 企業が持つ多くの「強み」の中で、競合が模倣困難で、かつ組織的に活用できているものだけが「持続的な競争優位性」となる。VRIO分析は、その質を見極めるための有効なツールである。
- プラットフォームビジネスの核心: プラットフォームビジネスの競争優位性は、多くの場合「ネットワーク外部性」に起因する。戦略の要諦は、いかにしてこの好循環を維持・強化するかにある。
- 戦略は優位性をテコにする: 企業の成長戦略は、その持続的な競争優位性を起点(テコ)として考えることで、より効果的で実現可能性の高いものになる。
6. 差がつくポイント、元面接官からのコメント
- VRIO分析の的確な適用: メルカリの複数の強み候補の中から、本質的なもの(ネットワーク外部性)を見抜き、それに対してVRIO分析を適用できているか。他の強みがなぜ「持続的」ではないのか(例:UI/UXは模倣可能)を説明できると、さらに評価が高い。
- 「模倣困難性」の源泉の言語化: なぜメルカリのユーザーベースが模倣困難なのかを、「先行者利益」「スイッチングコスト」といった具体的なメカニズムで説明できているか。
- 戦略との一貫性: 導き出した「持続的な競争優位性(ネットワーク外部性)」を、その後の成長戦略の明確な起点として位置づけ、全ての施策がその強化に繋がるという一貫したストーリーを構築できているか。
- ビジネスモデルへの深い理解: C2Cプラットフォームにおける「売り手」と「買い手」双方の重要性を理解し、両サイドに働きかけるバランスの取れた施策を提案できているか。
- ディスカッションでの深掘り耐性: 「PayPayフリマが大規模なキャンペーンを打ってきたら、ネットワーク外部性は崩れませんか?」「メルカリの次の脅威は何だと思いますか?」といった深掘り質問に対し、VRIO分析で特定した優位性の本質に立ち返って、冷静に議論できるか。
まとめ:「VRIO分析」を武器に、企業の“真の強み”を見抜く
この記事では、戦略コンサルティングファームのケース面接で企業の競争力を深く分析するためのフレームワーク、「VRIO分析」について、その本質的な考え方から実践的な使い方、具体的なケース解説までを詳述してきました。
最後に、VRIO分析をあなたの思考ツールキットに加え、使いこなすための要点を振り返ります。
「VRIO分析」とは?
企業の経営資源(強み)が、単なる特徴に留まらず「持続的な競争優位性」に繋がるかを、以下の4つの問いで評価するフレームワークです。
- V (Value): その資源に価値はあるか?
- R (Rarity): その資源は希少か?
- I (Imitability): その資源は模倣困難か?
- O (Organization): その資源を活かす組織はあるか?
この4つの関門をすべてクリアして初めて、その経営資源は「持続的な競争優位性」の源泉と評価されます。
ケース面接での実践ポイント
- 「強みの質」を問う: SWOT分析などで洗い出した企業の「強み」を深掘りし、その競争上の有効性(一時的なのか、持続的なのか)を判定する際に活用します。
- 「なぜ模倣できないのか?」を徹底的に考える: ケース面接で差がつくのは、特に「I:模倣困難性」の分析です。その源泉(歴史的経緯、因果関係不明性、社会的複雑性など)を具体的に言語化することで、分析の深さを示すことができます。
- 「O:組織」の視点を忘れない: どんなに優れた資源も、それを活かす仕組みがなければ意味がありません。資源とそれを支える組織的な体制をセットで考えることで、実行可能性の高い戦略に繋がります。
- 戦略の起点とする: VRIO分析で特定した「持続的な競争優位性」をテコとして、それをどう強化し、活用していくかという視点で成長戦略を構築することで、一貫性のある力強い提案が可能になります。
VRIO分析は、企業の競争力の源泉を本質的に理解するための鋭いメスです。このフレームワークを使いこなし、企業の表面的な特徴に惑わされず、その“真の強み”を見抜く分析力を身につけてください。あなたの挑戦が成功裏に終わることを心から応援しています。
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の「初心者」ないし「初級」のお客様です。
再現性高く、最短距離で、内定を取れる理由
最高のケース面接対策プログラムの設計を始めたとき、
我々のチームが最初に考えたのが
「理想的な上達プロセス」についてでした。
スポーツでも勉強でも、何か新しいことを始めるとき
「最短距離で最高峰を目指そう!」と思ったら
どういうやり方をするのが正解なのだろうか?
それについて考えるところから始まりました。
結論、我々が辿り着いた答えは
①学習する:プロから正しく学ぶ
②練習する:繰り返し練習し学んだことを自分の体に染み付かせる
③実践する:実践で到達度や課題を明確化する
→①②に戻る
というサイクルを回すことが
「理想的な上達プロセス」なのではないか?ということでした。
そこで、この「理想的な上達プロセス」に沿う形で
さまざまな教材・トレーニングメニューを綿密に設計・用意し
「内定レベルのケース面接」を最短距離で習得できるカリキュラムが完成しました。
プログラムの全体像はこちらです。
①正しく学ぶ
Strategistsのオリジナル教材、教科書・動画講座を使って
必要な思考法や知識を体系的にインプットしていただきます。
②反復練習で定着:課題ケース演習
厳選した良問を、自主課題としてメンターが指定。
時間制限を設けず熟考する形式で自主演習し、
さらに専用フォームに筆記ケース形式でアウトプットしていただきます。
教科書や動画講座で学んだ思考法や知識を思い返しながら
実際の過去問を題材に試行してみる。
あなたの思考力が”変わる・鍛えられる”のが
このトレーニングの役割です。

③実践&現状把握:模擬ケース面接
専属メンターと模擬面接を実施。
詳細なフィードバックをもらうことで
現状を把握し、弱点・課題を発見できるのはもちろん
内定レベルの解答例や思考のポイントなど
1問を題材に「次に活かせる」学びを詳しく解説します。

メンタリングの質へのこだわり
皆さんは『メンタリングの質』というものについて考えたことはありますか?我々は『問題を解き→フィードバックをもらい→模範解答を見る』というプロセスを経ての成長幅こそが『メンタリングの質』だと考えています。
『メンタリングの質』はメンターの質はもちろん、扱う問題と模範解答の質によって決まると考えており、我々のサービスでは厳選された問題からしか出題を行いません。メンタリングでの使用を構想してから実際にお客様にお出しする「デビュー」までに数ヶ月かかることも多いです。
我々はケース対策における「良問」を
・得られる学びが深くて多い
・抽象化して次に活かせる普遍性がある
・これまでのお題とも次回以降のお題とも被らない新たな学びがある
と定義しています。各問題が単に「マッキンゼー対策」「公共系」のような表面的なジャンル分けにとどまらず、「BSとPLの構造理解」「”実現可能性とインパクト”の落とし穴」「サブスク事業のキードライバー」など裏テーマが設定してあります。
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