「市場のどこを狙えばいいのか、どうやって差別化すればいいのかわからない…」
「STP分析って、マーケティングの基本らしいけど、ケース面接でどう使えばいいの?」
戦略コンサルティングファームのケース面接において、企業のマーケティング戦略やブランド戦略を考えることは頻出テーマです。闇雲に「誰にでも売れる」製品を考えるのではなく、「誰に、どのような価値を提供して、競合との差別化を図るのか」を論理的に導き出すことが求められます。
この「誰に」「どのような価値を」という戦略の根幹を定めるための強力なフレームワークが「STP分析」です。
この記事では、実際にMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)の内定を獲得した筆者が、マーケティング戦略の王道である「STP分析」について、その基本的な考え方から、ケース面接での実践的な使い方、よくある失敗例までを、具体的なケース(SEIKOのブランド戦略)を交えながら徹底的に解説します。
この記事を読み進めれば、STP分析を活用して市場を切り分け、顧客に響く独自のポジションを築くための戦略的思考法を理解できるはずです。
STP分析とは?基本的な考え方をケース面接向けに解説
まず、「STP分析」がどのようなフレームワークなのか、その基本をしっかりと理解しましょう。
STP分析は、「近代マーケティングの父」と称されるフィリップ・コトラーが提唱した、マーケティング戦略を立案するための基本的なフレームワークです。以下の3つのステップの頭文字を取って「STP」と呼ばれています。
- S: Segmentation(セグメンテーション)
- 何をやるか?: 市場全体を、同じようなニーズや性質を持つ顧客グループ(セグメント)に細分化するプロセス。
- 目的: 市場の全体像を理解し、自社が狙うべき市場を見つけるための準備。
- T: Targeting(ターゲティング)
- 何をやるか?: 細分化したセグメントの中から、自社の強みを最も活かせる、最も魅力的な市場セグメントを選び出すプロセス。
- 目的: 経営資源を集中投下すべき顧客グループを特定する。
- P: Positioning(ポジショニング)
- 何をやるか?: ターゲットとして選んだセグメントの顧客に対して、競合製品と比べて自社製品がどのような独自の価値を提供するのかを明確にし、顧客の心の中に特別な位置(ポジション)を築くプロセス。
- 目的: 競合との差別化を図り、「選ばれる理由」を明確にする。
STP分析の思考フロー(視覚的理解)
STP分析は、「市場を切り分け(S)→狙いを定め(T)→独自の立ち位置を築く(P)」という一連の流れで思考を進めます。

graph TD
A[市場全体] -->|セグメンテーション(S)| B(セグメント1);
A -->|セグメンテーション(S)| C(セグメント2);
A -->|セグメンテーション(S)| D(セグメント3);
subgraph ターゲティング(T)
C --"この市場を狙う"--> E{ターゲット市場};
end
subgraph ポジショニング(P)
E --> F["独自の価値提案<br>(競合との差別化)"];
end
なぜSTP分析が重要なのか?
現代のように顧客ニーズが多様化し、競争が激化した市場では、「すべての人に、すべてのものを売る」というマス・マーケティングは非効率です。限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を最も効果的に活用するためには、「選択と集中」が不可欠です。
STP分析は、この「選択と集中」を論理的に行うための思考の羅針盤であり、「誰のために、どのような価値を提供するのか」というマーケティング戦略の骨子を明確にするために極めて重要なフレームワークなのです。
ケース面接でSTP分析が活きるお題と見極めのポイント
STP分析は、マーケティングに関連するあらゆるお題で基礎となる考え方ですが、特にそのフレームワークを明確に意識して使うことで、思考が整理され、鋭い示唆が得られやすいお題のパターンがあります。
STP分析が活きるお題のパターン
1. 新商品開発や新規事業立案に関するお題
- お題例:
- 「ある飲料メーカーが、新しい健康ドリンクを開発する際の戦略を考えてください」
- 「家電メーカーが、D2C(Direct to Consumer)モデルで新規事業を立ち上げる際の戦略を立案してください」
- なぜ活きるのか?
新しい製品や事業を市場に投入する際には、「誰をターゲットにするのか?」という問いが全ての出発点になります。STP分析を用いることで、まず市場全体を俯瞰し(Segmentation)、様々な顧客セグメントの未充足ニーズ(アンメットニーズ)を洗い出します。その中から、自社の強みを活かせる最も魅力的なセグメントを特定し(Targeting)、そのターゲットに響く独自の価値(Positioning)を定義する、という戦略立案の王道を論理的にステップバイステップで進めることができます。
2. 成熟市場におけるブランド再生(リブランディング)や売上向上のお題
- お題例:
- 「国内の腕時計市場における、国産メーカー(SEIKO)のブランド戦略を提案してください」
- 「成熟期にあるビール市場において、大手ビールメーカーが若者向けに売上を伸ばすための施策を考えてください」
- なぜ活きるのか?
市場が成熟し競争が激化すると、従来のターゲット層だけでは成長が難しくなります。STP分析を用いることで、既存の市場認識を疑い、新たなセグメンテーションの切り口を見つけ出すことができます。例えば、年齢や性別といったデモグラフィック変数だけでなく、ライフスタイルや価値観(例:「健康志向」「サステナビリティ重視」)といったサイコグラフィック変数で市場を再定義(Segmentation)することで、これまで見えていなかった新しいターゲット市場を発見し、そこに向けた新しいポジショニングを構築する、という戦略的な思考が可能になります。
3. 競争が激しい市場での差別化戦略を問われるお題
- お題例:
- 「格安航空会社(LCC)業界における、新規参入企業の生き残り戦略を考えてください」
- 「乱立するオンライン学習サービス市場で、クライアントがシェアを拡大するための戦略は?」
- なぜ活きるのか?
競合が多数存在するレッドオーシャン市場で成功するためには、明確な差別化が不可欠です。STP分析の最後のステップであるポジショニング(Positioning)は、まさにこの差別化を考えるためのプロセスです。競合がどのようなポジションを取っているかを分析した上で(ポジショニングマップなど)、ターゲット顧客にとって重要であり、かつ競合が提供できていない「空白のポジション」を見つけ出し、そこに自社の製品・サービスを位置づける、という思考が極めて有効です。
フレームワークを使う際の重要なポイント
- セグメンテーションの切り口を複数検討する:
市場を切り分ける軸は一つではありません。地理的変数(国、地域)、人口動態変数(デモグラフィック)(年齢、性別、所得)、心理的変数(サイコグラフィック)(ライフスタイル、価値観)、行動変数(購買頻度、求めるベネフィット)など、複数の切り口をまず検討し、「今回のケースにおいて、顧客のニーズを最も的確に分けることができる軸はどれか?」という視点で最適な切り口を選択することが重要です。 - ターゲティングの評価軸(6R)を意識する: どのセグメントを狙うかを決める際には、感覚ではなく、明確な評価軸で判断します。マーケティングでよく使われる「6R」という観点が参考になります。
- Realistic Scale (市場規模): 十分な売上が見込める規模か?
- Rate of Growth (成長性): 今後、市場は成長するか?
- Rival (競合): 競合の激しさはどうか?勝ち目はあるか?
- Rank / Ripple Effect (優先順位/波及効果): 他のセグメントへの影響は?
- Reach (到達可能性): そのセグメントにアプローチできるか?
- Response (反応の測定可能性): 施策の効果を測定できるか?
- ポジショニングは顧客視点で考える:
ポジショニングは、企業が「こう思われたい」と考えるものではなく、「ターゲット顧客の頭の中に、競合と比べて相対的にどう認識されるか」という視点が重要です。顧客が重視する価値軸(例:価格、品質、機能、デザインなど)で競合との位置関係を整理する「ポジショニングマップ」を作成すると、思考が整理しやすくなります。
ケース面接で陥りがち!STP分析利用時のよくある失敗
STP分析はマーケティング戦略の基本であり、その思考プロセス自体が評価対象となります。しかし、その使い方を間違えると、「マーケティングの基本を理解していない」「思考が表層的だ」と判断されかねません。ここでは、STP分析を用いる際によくある失敗例と、その回避策について解説します。
失敗例1:セグメンテーションの切り口が安易すぎる
市場を細分化する際に、思考停止で「年齢・性別」といったデモグラフィック変数のみを使ってしまうパターンです。例えば、「若者向け」「女性向け」といった大雑把なくくりで終わってしまいます。
- なぜダメなのか?
- 現代のように価値観が多様化した市場では、「20代女性」といっても、そのニーズやライフスタイルは千差万別です。年齢や性別だけでは、顧客の真のニーズを捉えることができず、有効な戦略に繋がりません。
- 思考の深さがないと判断されます。誰でも思いつくような切り口では、コンサルタントとしての付加価値を示すことができません。
- どう回避するか?
- 常に複数の切り口を提示する: まず、「市場を分ける軸としては、年齢・性別といったデモグラフィックな軸の他に、ライフスタイルや価値観といったサイコグラフィックな軸、あるいは製品に求める便益(ベネフィット)で分ける軸が考えられます」と、複数の選択肢を提示します。
- お題に最適な切り口を選択し、その理由を述べる: その上で、「今回の腕時計のケースでは、単なる年齢よりも『腕時計をどのような目的で利用するか』という行動変数(求めるベネフィット)で市場を分けることが、顧客ニーズを的確に捉える上で最も有効だと考えます。なぜなら…」というように、なぜその軸を選んだのかを明確に説明します。
失敗例2:ターゲティングの根拠が薄弱
細分化したセグメントの中からターゲットを選ぶ際に、「なんとなく儲かりそうだから」「最近注目されているから」といった曖昧な理由で選んでしまうパターンです。
- なぜダメなのか?
- 戦略的意思決定の根幹であるターゲット選定に、論理的な根拠が欠けています。
- 自社の強み(S)や外部環境の機会(O)との連携が考慮されておらず、成功確率の高い戦略になりません。
- どう回避するか?
- 評価軸に基づいて客観的に評価する: 前章で紹介した「6R」のような評価軸(特に市場規模、成長性、競合環境、自社とのフィット感)を用いて、「複数のセグメントを比較した結果、〇〇という点で最も魅力的な△△セグメントをターゲットとすべきです」と、客観的な評価に基づいて結論を導きます。
- SWOT分析と連携させる: 「当社の強みである〇〇を活かせ、かつ市場機会である△△を捉えられるのは、このセグメントです」というように、自社の内部環境・外部環境分析と一貫性を持たせることが重要です。
失敗例3:ポジショニングが曖昧、または独りよがり
「高品質でリーズナブルなポジションを目指します」のように、どの企業も目指すような、曖昧で差別化になっていないポジショニングを設定してしまうパターンです。あるいは、競合を無視して「最高の機能を持つ製品」というように、企業の自己満足的なポジショニングを考えてしまうこともあります。
- なぜダメなのか?
- ポジショニングの目的は、競合との差別化を図り、顧客に「選ばれる理由」を明確に認識させることです。曖昧なポジショニングでは、顧客の心に響きません。
- 独りよがりなポジショニングは、顧客が本当にその価値を求めているか、そしてそのポジションを確立するために競合が許してくれるか、という視点が欠けています。
- どう回避するか?
- 顧客が重視する価値軸を特定する: ターゲット顧客が製品を購入する際に、何を重視しているのか(例:価格、品質、デザイン、ステータス、利便性など)を明確にします。
- ポジショニングマップを作成する: 特定した2つの価値軸でマップを作成し、競合他社がどこに位置しているかをプロットします。これにより、市場の競争構造と、まだ競合がいない「空白地帯(空いているポジション)」を視覚的に把握することができます。
- 具体的でユニークな言葉で表現する: 例えば『高品質』という曖昧な表現ではなく、『熟練の職人が手掛ける、一生モノの品質』といった具体的な言葉にする。
STP分析は、S→T→Pの各ステップが相互に連動し、一貫したストーリーを構築することが求められます。これらの失敗例を反面教師として、論理的で説得力のある戦略を組み立てましょう。
【ケース面接 徹底解説】STP分析で解く「腕時計市場におけるSEIKOのブランド戦略」
ここからは、本記事の核心であるケース解説です。「国産腕時計メーカーSEIKOのブランド戦略」というお題を用い、STP分析をどのように実践的に活用するのか、思考プロセスを追いながら具体的に解説します。
お題:クライアントは国産腕時計メーカー「SEIKO」。成熟する国内腕時計市場において、今後3年間でブランド価値を向上させ、持続的な成長を実現するためのブランド戦略を提案してください。
1. 前提設定、問題の背景の言語化(面接官とのすり合わせ)
- クライアントについて:
- SEIKOは、クオーツ式時計を世界で初めて製品化するなど高い技術力を持ち、エントリーモデルから高級ライン(グランドセイコー、クレドール)まで幅広い製品ポートフォリオを持つ、日本を代表する腕時計メーカー。
- 市場環境:
- 国内の腕時計市場は成熟しており、全体としての大きな成長は見込みにくい。
- 競合は、スイスの高級時計ブランド(ロレックス、オメガ等)、ファッションブランドの時計、同価格帯の国産メーカー(シチズン、カシオ)、そして近年ではApple Watchに代表されるスマートウォッチが存在。時間を知る機能はスマートフォンに代替されており、腕時計の価値は変化している。
- 目標設定:
- 短期的な売上向上だけでなく、3年間で「SEIKOブランドの価値(特に若年層・中間層からのブランドイメージ)を向上させ、将来の収益基盤を強化すること」をゴールとする。
- スコープ:
- 今回は国内市場に絞って検討。また、超高級ラインの「クレドール」や、完全に別ブランドとしてマーケティングされている「グランドセイコー」は一旦除外し、「SEIKO」ブランド本体の戦略を考える。
【議論のゴール】
スマートウォッチが台頭し、価値観が多様化する国内腕時計市場において、SEIKOが今後3年間でブランド価値を再構築し、持続的成長の基盤を築くためのSTP戦略を立案する。
2. 仮説創出のための業界・商材の特徴分析
STP分析を行う前に、腕時計市場の現状とSEIKOの立ち位置を分析します。
- 市場 (Customer):
- 腕時計に求める価値が「時間を知るツール」から「自己表現のアクセサリー」「ステータスシンボル」「資産」「ガジェット」へと多様化・多極化している。
- 若年層はそもそも腕時計を着けない層が増加。着ける場合でも、ファッション性やスマートウォッチの機能性を重視する傾向。
- 一方で、機械式時計など、伝統的な腕時計の魅力に惹かれる層も一定数存在する。
- 競合 (Competitor):
- スイス高級時計: 高価格帯、ステータス、資産価値で圧倒的ブランド力を誇る。
- スマートウォッチ (Apple Watch): 利便性、ガジェットとしての機能性で市場を席巻。
- ファッションウォッチ: デザイン性、手頃な価格で若年層に人気。
- 国産競合 (シチズン, カシオ): 技術力や機能性(電波ソーラー、G-SHOCKのタフネスなど)で独自のポジションを築いている。
- 自社 (Company – SEIKO):
- 強み(S): 高い技術力と信頼性(クオーツ、機械式両方)、幅広い価格帯をカバーする製品ラインナップ、真面目で実直なブランドイメージ。
- 弱み(W): 「おじさんの時計」というやや古風なイメージが定着しており、若年層への訴求力が弱い。スイス時計のような圧倒的なステータス性や、スマートウォッチのような革新性のイメージに欠ける。製品ラインナップが広すぎ、ブランドイメージが曖昧になっている可能性。
【分析からの示唆・初期仮説】
腕時計市場が価値観によって細分化している中、SEIKOの「真面目で高品質だが、少し古風」という現在のポジションは、どのセグメントにも中途半端にしか響いていない可能性がある。市場を顧客の価値観で再定義(Segmentation)し、SEIKOの技術力という強みを活かせるターゲットを明確に定め(Targeting)、彼らに響く新しいブランドイメージを構築(Positioning)する必要があるのではないか。
3. 論点の構造化とイシューの絞り込み(STP分析の活用)
【S: Segmentation】
まず、国内腕時計市場をセグメント分けします。切り口として、①デモグラフィック(年齢・所得)、②腕時計に求めるベネフィット(価値観)が考えられます。
- 切り口①:デモグラフィック軸: 年齢(20代、30-40代、50代以上)や所得で分ける。分かりやすいが、同じ20代でもスマートウォッチ派と機械式時計派がいるように、ニーズの本質を捉えきれない。
- 切り口②:求めるベネフィット軸: こちらの方が顧客の購買動機に直結するため、より有効と判断。以下のように市場を4つに細分化する。
- ステータス・資産性重視層: 高級ブランドによる自己表現や、資産としての価値を求める。
- ガジェット・利便性重視層: スマートウォッチの通知、決済、健康管理などの機能を重視。
- ファッション・トレンド重視層: 服装に合わせるアクセサリーとしてのデザイン性や、流行を重視。
- 実用性・こだわり重視層: 時計本来の機構や技術、ストーリー、長く使える品質を重視。
【T: Targeting】
各セグメントの魅力度とSEIKOとのフィット感を評価し、ターゲットを絞り込みます。
セグメント | 市場魅力度 | SEIKOとのフィット感 | 総合評価 |
---|---|---|---|
① ステータス層 | △ (市場規模大、利益率高) | × (スイスブランドが圧倒的) | × |
② ガジェット層 | ◎ (市場規模大、成長性高) | △ (Apple Watchが圧倒的) | △ |
③ ファッション層 | ⚪︎ (市場規模中、購買頻度高) | △ (ブランドイメージが合わない) | △ |
④ 実用性・こだわり層 | ⚪︎ (市場規模中、ロイヤリティ高) | ◎ (技術力・信頼性と親和性大) | ◎ |
- 論拠:
- ①ステータス層、②ガジェット層は、それぞれロレックス、Apple Watchというガリバーが存在し、SEIKOが今からポジションを覆すのは困難。
- ③ファッション層は、SEIKOの「真面目」なイメージと合致しにくい。
- ④実用性・こだわり層は、SEIKOの「高い技術力」「信頼性」「真面目なモノづくり」という強み(S)が最も響くセグメントであり、競合のガリバーも存在しない。ニッチだが熱量が高く、ブランドのファンになりやすい。ここを最重要ターゲット(◎)とすべき。
【P: Positioning】
ターゲットである「実用性・こだわり層」に対し、どのような独自の価値を訴求し、ポジションを築くか。
- 顧客インサイト: 彼らは、時計のブランド名だけでなく、その背景にある技術やストーリー、作り手の哲学に価値を感じる。見せびらかすためではなく、自己満足や知的好奇心を満たすために時計を選ぶ。
- 競合ポジション:
- スイス時計:「歴史」「伝統」「ステータス」
- スマートウォッチ:「利便性」「革新性」
- G-SHOCK:「タフネス」「ストリートカルチャー」
- SEIKOが狙うべきポジション: 競合が手薄な「日本の先進技術と匠の技が融合した、インテリジェントなツールウォッチ」というポジションを確立する。
- 差別化ワード: 「テクノロジー」「機能美」「ジャパンクオリティ」「オーバースペック」
4. 打ち手
STP分析で定めた戦略に基づき、具体的な施策を立案します。
【推奨戦略】
「実用性・こだわり層」をターゲットとした、技術志向のブランドイメージ再構築戦略
- How to Win(具体的な施策):
- 製品戦略(4P: Product):
- 「PROSPEX(プロスペックス)」や「ASTRON(アストロン)」など、技術志向の強い既存ブランドに経営資源を集中。
- 技術の物語化: 各製品に搭載されている独自技術(スプリングドライブ、GPSソーラーなど)の優位性や開発ストーリーを、WebサイトやSNS、雑誌広告で積極的に発信する。
- 専門家・他業種とのコラボ: プロの登山家やダイバー、宇宙飛行士などとのコラボモデルを開発し、過酷な環境下での実用性を証明する。
- コミュニケーション戦略(4P: Promotion):
- ターゲットメディアへの露出強化: MONOQLO、日経トレンディ、ガジェット系ウェブメディア、趣味の専門誌など、ターゲット層が接触するメディアでの露出を増やす。
- 体験イベントの実施: ファクトリーツアーや、時計技師による組み立て実演イベントなどを開催し、モノづくりのこだわりを直接伝える機会を創出する。
- デジタルコンテンツ強化: YouTubeで技術解説動画や開発者インタビューを配信。SNSでユーザーの「こだわり」投稿を促すキャンペーンを実施。
- チャネル戦略(4P: Place):
- 家電量販店での販売は維持しつつ、ブランドの世界観を体現する直営店やコンセプトストアを主要都市に展開。専門知識を持つスタッフを配置し、顧客との深いコミュニケーションを図る。
- 製品戦略(4P: Product):
- リスクと対策:
- リスク: ターゲットを絞り込むことで、他のセグメントへの売上が減少する可能性。
- 対策: 急激な製品ラインナップの縮小は行わず、まずはコミュニケーション戦略から着手し、徐々にブランドイメージの転換を図る。
- 優先順位・マイルストン:
- 1年目: ターゲットメディアへの広告・PR出稿強化。デジタルコンテンツの制作・配信開始。
- 2年目: 都市部でのコンセプトストアのオープン。専門家とのコラボモデル第一弾発売。
- 3年目: 成功事例を基に、全国の主要店舗へコンセプト展開。新たな技術を搭載したフラッグシップモデルの投入。
- 次の一歩:
まず、「実用性・こだわり層」の顧客解像度をさらに高めるための詳細なデプスインタビューを実施し、彼らがどのような情報源に触れ、どのようなストーリーに価値を感じるのかを特定すべきです。
5. 学びの抽象化、今回の問題を通じて伝えたいこと
- マーケティングは「戦う場所を選ぶ」ことから始まる: 全方位にアプローチするのは悪手。自社の強みが最も活き、かつ競合との無用な消耗戦を避けられる市場(セグメント)を見極めることが戦略の第一歩である。
- セグメンテーションの軸が思考の質を決める: 顧客を「どう分けるか」で、その後の戦略の質は大きく変わる。お題の本質を見抜き、顧客の購買動機に直結するような鋭い切り口を見つけることが重要。
- ポジショニングは相対的な概念: 自社が何を言いたいかではなく、「顧客の頭の中で、競合と比べてどう思われるか」が全て。競合のポジションを正確に把握し、空いている魅力的な場所を見つけ出す必要がある。
6. 差がつくポイント、元面接官からのコメント
- 市場の構造変化の的確な把握: 「時間を知る」という機能的価値がコモディティ化した後の、現代における腕時計の「意味的価値」(自己表現、ステータス、ガジェット等)の多様化を、分析の出発点にできているか。
- セグメンテーションの切り口の妙: 安易なデモグラフィック変数に頼らず、「求めるベネフィット」といった顧客インサイトに基づく切り口を主体的に設定し、その妥当性を説明できているか。
- ターゲット選定の論理の明快さ: 各セグメントを客観的な軸で評価し、なぜそのターゲットを選ぶのか(そして、なぜ他を選ばないのか)を、自社の強みと絡めて説得力高く説明できているか。
- ポジショニングの具体性: 「高品質」といった曖昧な言葉で終わらせず、ターゲットに響くユニークで具体的なコンセプト(例:「インテリジェントなツールウォッチ」)を言語化できているか。
- STPと4Pの一貫性: STPで定めた戦略と、その後の具体的な打ち手(Product, Price, Place, Promotion)が一気通貫しているか。例えば、ターゲットを絞ったのに、プロモーションがマス広告のままでは一貫性がない。
まとめ:STP分析で論理的なマーケティング戦略を構築する
この記事では、戦略コンサルティングファームのケース面接で頻出する「マーケティング戦略」や「ブランド戦略」のお題を攻略するための根幹的なフレームワーク、「STP分析」について、その基本的な考え方から実践的な使い方、具体的なケース解説までを詳述してきました。
最後に、この記事の要点を改めて整理し、あなたがSTP分析を自信を持って使いこなすためのポイントを確認します。
「STP分析」とは?
マーケティング戦略の立案プロセスを、以下の3つのステップで構造化するフレームワークです。
- S (Segmentation): 市場を切り分ける
- 顧客のニーズや性質に基づき、市場を意味のあるグループに細分化する。
- ポイント: 年齢・性別だけでなく、ライフスタイルや求めるベネフィットなど、お題に最適な切り口を見つける。
- T (Targeting): 狙いを定める
- 細分化したセグメントの中から、市場の魅力度や自社の強みを基に、最も攻略すべき市場を選ぶ。
- ポイント: 客観的な評価軸に基づき、なぜそのターゲットを選ぶのかを論理的に説明する。
- P (Positioning): 独自の立ち位置を築く
- ターゲット顧客の心の中で、競合製品と比べて自社製品が持つ独自の価値を明確にする。
- ポイント: 競合との相対的な位置関係を意識し、ユニークで魅力的なポジションを確立する。
ケース面接での実践ポイント
- 「選択と集中」の論拠を示す: なぜ「そこ」を攻めるのか、なぜ「そのように」戦うのか。STP分析は、戦略の根幹である「選択と集中」を論理的に説明するための強力なストーリーラインを提供します。
- 思考のプロセスを明確にする: S→T→Pというステップを意識して議論を展開することで、思考が整理され、面接官に論理的な思考プロセスを分かりやすく伝えることができます。
- 分析と戦略を結びつける: STP分析は、現状分析(3Cなど)の結果を、具体的な打ち手(4Pなど)に繋ぐための重要な「橋渡し」です。各ステップが一貫したストーリーで繋がっていることが重要です。
STP分析は、マーケティング戦略における普遍的な思考法です。このフレームワークを単なる知識として知っているだけでなく、ケース面接という実践の場で柔軟に使いこなすことで、あなたの思考の深さと戦略構築能力を効果的にアピールすることができるでしょう。この記事が、あなたの挑戦の一助となることを願っています。
【ケース面接対策TV】おすすめ動画
YouTubeでは、MBB内定者によるケース面接の実演解説や、Strategists卒業生や現役メンターの生々しい体験談を公開中です!ブログでは伝えきれないリアルな声と具体的なノウハウを、ぜひ動画でご確認ください。
- ケース面接おすすめ動画
- 体験談おすすめ動画
戦略コンサルへの入社/転職を成功させるケース面接対策法
ここまで読んでくれたあなたは、
「ケース面接でライバルに差をつけたい!」
「絶対に戦略コンサルに内定・転職したい」
という強い意欲がある方でしょう。
その意欲があるあなたは、
確実に戦コン内定・転職のポテンシャルを持っています。
そんなあなただからこそ、
対策不十分で本番のケース面接に臨んで爆死してしまったり、
間違った方向に努力をして時間を無駄にしたりは
してほしくないと我々は考えています。
何事も、自己流には限界があります。
最短距離で内定レベルのケース力を習得し
ボーダーラインギリギリではなく面接官を唸らせるレベルのアウトプットを出し
入社後も活躍したいのであれば、
プロからケース面接の正しい考え方や知識
さらに、対策の仕方や選考の戦略を教わりましょう。
独学でもある程度のレベルには達するかもしれませんが
あなたの目標は
「一次面接を通過すれば良い」
「ケース面接っぽいことができるようになれば良い」
ではなく
「トップ戦略ファームの合格ラインを堂々と超える
アウトプットが再現性高く出せるようになり
自信を持って面接に臨むことができること。
そして、内定を獲得することでしょう。」
プロからのアドバイスが不可欠です。
プロの指導は、やり方を教えるだけではなく
何が間違っていてどう改善すべきかを
的確に指摘し、あなたが気づいていない問題点を
明らかにしてくれます。
また我々のプログラムはマンツーマンのケース指導に加えて
フェルミ推定やケース面接の正しい思考法や
知っておかなければならない経営理論やビジネス知識を
網羅体系的にまとめた教科書を用意しており
受講生には必ずそれをみていただきます。
今なら、期間限定で無料で弊社の講師と1on1で話すことができるキャンペーンを行っております。
✅転職活動の悩みを相談したい
✅自分の今の実力を把握したい
✅ケース面接対策のプロに指導してもらいたい
といった方は以下のフォームから
初回メンタリング(60分/無料)
にぜひお越しくださいませ!

我々のマンツーマン指導プログラムについて
サービス開始の2022年以来、累計500名以上を指導し、
受講生の戦コン内定率(累計)約43% (新卒約45%/既卒約40%)、
2024年度の卒業生に関しては、16人のうち13人(82%)がトップ外資戦略コンサル(McK/BCG/Bain/KnY/S&/ADL/RB)の内定を獲得
(通常、戦コン志望者のうち内定を取れるのは数%程度とされます)
という驚異的な内定者輩出実績を誇る我々Strategistsが
多数の受講生の指導や教材制作を経て蓄積・言語化してきたオリジナルのノウハウを基に、本番での評価ポイントを熟知したMBB面接官経験者の視点も組み込みながら、最強のケース対策プログラムを制作しました。
我々のプログラムの最大の特長は、
・ケース面接初心者や苦手意識のある方であっても
・再現性高く、最短距離で、最高峰(内定レベル)のケース力
を習得することができる点です。
実は我々のお客様の63%は入会時点で
「一切対策はやってない」or「市販の書籍を読んだ程度」
の「初心者」ないし「初級」のお客様です。
再現性高く、最短距離で、内定を取れる理由
最高のケース面接対策プログラムの設計を始めたとき、
我々のチームが最初に考えたのが
「理想的な上達プロセス」についてでした。
スポーツでも勉強でも、何か新しいことを始めるとき
「最短距離で最高峰を目指そう!」と思ったら
どういうやり方をするのが正解なのだろうか?
それについて考えるところから始まりました。
結論、我々が辿り着いた答えは
①学習する:プロから正しく学ぶ
②練習する:繰り返し練習し学んだことを自分の体に染み付かせる
③実践する:実践で到達度や課題を明確化する
→①②に戻る
というサイクルを回すことが
「理想的な上達プロセス」なのではないか?ということでした。
そこで、この「理想的な上達プロセス」に沿う形で
さまざまな教材・トレーニングメニューを綿密に設計・用意し
「内定レベルのケース面接」を最短距離で習得できるカリキュラムが完成しました。
プログラムの全体像はこちらです。
①正しく学ぶ
Strategistsのオリジナル教材、教科書・動画講座を使って
必要な思考法や知識を体系的にインプットしていただきます。
②反復練習で定着:課題ケース演習
厳選した良問を、自主課題としてメンターが指定。
時間制限を設けず熟考する形式で自主演習し、
さらに専用フォームに筆記ケース形式でアウトプットしていただきます。
教科書や動画講座で学んだ思考法や知識を思い返しながら
実際の過去問を題材に試行してみる。
あなたの思考力が”変わる・鍛えられる”のが
このトレーニングの役割です。

③実践&現状把握:模擬ケース面接
専属メンターと模擬面接を実施。
詳細なフィードバックをもらうことで
現状を把握し、弱点・課題を発見できるのはもちろん
内定レベルの解答例や思考のポイントなど
1問を題材に「次に活かせる」学びを詳しく解説します。

メンタリングの質へのこだわり
皆さんは『メンタリングの質』というものについて考えたことはありますか?我々は『問題を解き→フィードバックをもらい→模範解答を見る』というプロセスを経ての成長幅こそが『メンタリングの質』だと考えています。
『メンタリングの質』はメンターの質はもちろん、扱う問題と模範解答の質によって決まると考えており、我々のサービスでは厳選された問題からしか出題を行いません。メンタリングでの使用を構想してから実際にお客様にお出しする「デビュー」までに数ヶ月かかることも多いです。
我々はケース対策における「良問」を
・得られる学びが深くて多い
・抽象化して次に活かせる普遍性がある
・これまでのお題とも次回以降のお題とも被らない新たな学びがある
と定義しています。各問題が単に「マッキンゼー対策」「公共系」のような表面的なジャンル分けにとどまらず、「BSとPLの構造理解」「”実現可能性とインパクト”の落とし穴」「サブスク事業のキードライバー」など裏テーマが設定してあります。
ケース対策は量よりも圧倒的に質です。
質の高いメンター×体系的な基礎インプット×良問での演習で確実に内定をGETするなら我々にお任せください。

復習にご活用いただけます
※現時点では、扱う問題によって資料が無い場合もございます。
初回体験を申し込む
ここまで読んでいただき、マンツーマン指導に興味を持っていただいた方は、まず初回メンタリングをお受けください。無理な勧誘等は一切ございません。お気軽に申し込みください。
模擬面接+FBはもちろん、参加特典としてMBB過去問を題材に
『再現性高くライバルに差をつけるアウトプットを出す方法』
を徹底解説したPDF資料をプレゼント!
単なる”模範解答例”ではなく、問題のポイントや次に活かせる学びをまとめています。
我々の初回メンタリングはありがちなサービス勧誘・営業の場ではなく
本プログラムの 『0講目』の扱いですから、
「これがStrategistsのクオリティか」とご実感いただける機会になることをお約束します。

