ケース面接対策

【アンゾフの成長マトリクスとは】MBB内定者がフレームワークの使い方をわかりやすく解説|具体例で学ぶ⑪

「企業の成長戦略を考えよ、と言われても何から手をつければいいかわからない…」
「アンゾフの成長マトリクスって聞いたことはあるけど、ケース面接でどう使えばいいの?」

戦略コンサルティングファームのケース面接、特に企業の「成長戦略」を問うお題は頻出テーマの一つです。限られた時間の中で、構造的かつ網羅的に成長の方向性を検討するためには、強力な思考の武器が必要になります。

その武器の一つが、「アンゾフの成長マトリクス」です。

この記事では、実際にMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)の内定を獲得した筆者が、数あるフレームワークの中でも特に成長戦略の検討に役立つ「アンゾフの成長マトリクス」について、その基本的な考え方から、ケース面接での実践的な使い方、よくある失敗例までを、具体的なケース解説を交えながら徹底的に解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたはアンゾフの成長マトリクスを自在に使いこなし、戦略コンサルタントのように鋭い視点で企業の成長戦略を立案できるようになっているでしょう。



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アンゾフの成長マトリクスとは?基本的な考え方をケース面接向けに解説

まず、「アンゾフの成長マトリクス」がどのようなフレームワークなのか、その基本的な考え方を理解しましょう。

アンゾフの成長マトリクスは、経営学者イゴール・アンゾフが提唱した、企業の成長戦略を「製品」「市場」の2つの軸を用い、それぞれ「既存」「新規」に分類して、4つの象限で網羅的に検討するためのフレームワークです。

このフレームワークを使う最大のメリットは、企業の成長の方向性をモレなくダブりなく(MECEに)洗い出し、思考を整理できる点にあります。

既存市場新規市場
既存製品市場浸透戦略市場開拓戦略
新規製品製品開発戦略多角化戦略

それぞれの戦略について、具体的に見ていきましょう。

① 市場浸透戦略 (Market Penetration)

  • 何をやるか?: 「既存の市場」「既存の製品」をさらに多く売る戦略です。
  • 具体例:
    • 既存顧客の購入頻度・購入量を増やす(例:ポイントカード、キャンペーン)
    • 競合他社から顧客を奪う(例:価格競争、プロモーション強化)
    • これまで製品を使っていなかった層にアプローチする
  • 特徴: 最もリスクが低く、短期的な成果を出しやすい戦略です。市場シェアの拡大を目指します。

② 製品開発戦略 (Product Development)

  • 何をやるか?: 「既存の市場(顧客)」に対して「新しい製品」を投入する戦略です。
  • 具体例:
    • 既存製品の改良版や新機能を追加した製品を出す(例:スマートフォンの新モデル)
    • 既存顧客の他のニーズを満たす新製品を開発する(例:菓子メーカーがアイスクリームを発売)
  • 特徴: 既存の顧客基盤やブランド力を活用できる一方、新製品開発にはコストと時間がかかります。

③ 市場開拓戦略 (Market Development)

  • 何をやるか?: 「既存の製品」「新しい市場」に投入する戦略です。
  • 具体例:
    • これまで進出していなかった新しい地域に進出する(例:国内企業が海外展開)
    • 異なる顧客セグメントにアプローチする(例:法人向け製品を個人向けに販売)
  • 特徴: 新しい市場の開拓にはリスクが伴いますが、成功すれば大きな成長が見込めます。

④ 多角化戦略 (Diversification)

  • 何をやるか?: 「新しい市場」「新しい製品」を投入する、最もチャレンジングな戦略です。
  • 具体例:
    • 既存事業とは全く関連のない新しい事業を始める(例:電機メーカーが金融事業に参入)
    • M&Aによって新市場・新製品を獲得する
  • 特徴: 4つの戦略の中で最もリスクが高く、成功確率も低いですが、企業の新たな成長エンジンとなり得ます。既存事業とのシナジーが成功の鍵を握ることが多いです。

ケース面接では、これらの4つの象限を思考の出発点として、「クライアントはどの戦略を取るべきか?」を多角的に検討していくことになります。

ケース面接でアンゾフの成長マトリクスが活きるお題と見極めのポイント

アンゾフの成長マトリクスは万能ではありません。しかし、特定のタイプのお題においては、思考を整理し、議論を深めるための強力な武器となります。ここでは、このフレームワークが特に活きるお題の見極め方と、使う際のポイントを解説します。

アンゾフの成長マトリクスが活きるお題のパターン

主に以下の3つのパターンで、アンゾフの成長マトリクスは有効です。

1. 「〇〇社の成長戦略を考えよ」という広範なお題

  • お題例:
    • 「大手菓子メーカー(明治)の3年後の成長戦略を立案してください」
    • 「国内アパレル企業(ユニクロ)の今後の成長戦略を検討してください」
  • なぜ活きるのか?
    「成長戦略」という非常に広範な問いに対して、思考の出発点として網羅的な選択肢を洗い出すことができます。「市場浸透」「製品開発」「市場開拓」「多角化」という4つの方向性をまず提示することで、議論の全体像を構造化し、「どの方向に進むべきか」という本質的な論点にスムーズに移行できます。いきなり具体的な施策を考えると思考が発散しがちですが、このフレームワークを使うことで、思考の迷子を防ぐことができます。

2. 既存事業が成熟・衰退期にある企業のお題

  • お題例:
    • 「国内の新聞社の売上向上策を考えてください」
    • 「老舗の文房具メーカーの成長戦略を立案してください」
  • なぜ活きるのか?
    既存の市場が縮小している場合、「市場浸aturation(市場浸透)」戦略だけでは限界があります。アンゾフの成長マトリクスを用いることで、「既存市場に留まるべきか、それとも新天地を求めるべきか?」という根本的な問いを立てることができます。「製品開発」で新たな付加価値を提供できないか、「市場開拓」で海外に活路を見出せないか、あるいは「多角化」で全く新しい事業にピボットすべきか、といった戦略オプションを体系的に検討する上で非常に有効です。

3. クライアントが特定のアセット(強み)を持つ企業のお題

  • お題例:
    • 「大手鉄道会社の成長戦略を考えてください」
    • 「全国に店舗網を持つ大手飲料メーカーの成長戦略を立案してください」
  • なぜ活きるのか?
    クライアントが持つ強力なアセット(例:鉄道会社の保有する不動産や顧客基盤、飲料メーカーのブランド力や流通網)を「どの市場」で「どの製品(サービス)」に活用すれば成長に繋がるかを考える際に、アンゾフの成長マトリクスが役立ちます。例えば、鉄道会社が既存の沿線住民(既存市場)に対して、不動産アセットを活用した新しいサービス(新規製品:製品開発)を提供する、といった形で、アセットの活用方法を4つの象限で整理し、最適な戦略を導き出すことができます。

フレームワークを使う際の重要なポイント

ケース面接でアンゾフの成長マトリクスを使う際には、ただ4象限を説明するだけでは評価されません。以下のポイントを意識してください。

  • 分析の目的を明確にする:
    「なぜこのフレームワークを使うのか?」を常に意識しましょう。目的は「成長戦略の方向性を網羅的に洗い出し、最も有望な選択肢を特定するため」です。
  • フレームワークありきで考えない:
    まずはお題の前提確認と現状分析(3C分析など)をしっかり行い、クライアントが置かれている状況を理解することが先決です。その上で、「現状分析の結果、成長の方向性を考える上でアンゾフの成長マトリクスが有効だと考えられます」という流れで導入するのが自然です。
  • 各象限の魅力度を評価する:
    4つの選択肢を提示するだけでなく、それぞれの戦略の「市場魅力度(市場規模、成長性)」「実現可能性(自社の強みとのフィット、投資規模、リスク)」を評価し、なぜその戦略オプションが有望なのか(あるいは有望でないのか)の論拠を明確に示すことが重要です。
  • 組み合わせや優先順位を考える:
    必ずしも1つの戦略に絞る必要はありません。「短期的には市場浸透で足場を固めつつ、中長期的には製品開発で新たな収益源を確保する」といったように、時間軸を考慮して戦略を組み合わせたり、優先順位をつけたりすることで、より現実的で説得力のある提案になります。

ケース面接でやりがち!アンゾフの成長マトリクス利用時のよくある失敗

アンゾフの成長マトリクスは、正しく使えば強力なツールですが、使い方を誤ると「フレームワークに振り回されている」「思考が浅い」といったネガティブな印象を与えかねません。ここでは、ケース面接でよく見られる失敗例とその回避策を解説します。

失敗例1:ただ4つの象限を説明して終わる「フレームワークの暗唱」

これは最も多い失敗例です。面接官から「〇〇社の成長戦略は?」と問われ、「はい、成長戦略のフレームワークであるアンゾフの成長マトリクスによれば、市場浸透、製品開発、市場開拓、多角化の4つがあります」と、教科書的な説明を始めてしまうパターンです。

  • なぜダメなのか?
    • 面接官はフレームワークの知識を問うているのではなく、「このお題に対して、あなた自身の頭でどう考えるか」を見ています。単なる暗唱は、思考停止の表れと見なされます。
    • クライアントの具体的な状況分析が抜け落ちており、一般論に終始してしまいます。
  • どう回避するか?
    • 必ず現状分析(3C分析など)の後にフレームワークを用います。「現状分析の結果、〇〇という課題と△△という強みが明らかになりました。これを踏まえ、成長の方向性を網…」という流れを徹底しましょう。
    • 「なので、どうするべきか?」というスタンスを明確にします。4つの選択肢を提示した後、必ず「これらの選択肢の中で、市場の魅力度と実現可能性を考えると、今回は〇〇戦略に注力すべきと考えます。なぜなら…」と、自分なりの評価と論点設定に繋げることが不可欠です。

失敗例2:各象限の評価や比較がない「選択肢の羅列」

4つの戦略オプションを挙げるものの、それぞれのメリット・デメリットや、どちらを優先すべきかの評価が伴わないパターンです。「市場浸透としては〇〇ができます。製品開発としては△△も考えられます。市場開拓も…」と、アイデアを並べるだけで終わってしまいます。

  • なぜダメなのか?
    • コンサルタントの仕事は、選択肢を提示するだけでなく、データと論理に基づいて最適な選択肢を推奨し、クライアントの意思決定をサポートすることです。評価と比較なき羅列は、その役割を放棄しているのと同じです。
    • 議論が発散したままとなり、核心的な論点にたどり着けません。
  • どう回避するか?
    • 評価軸を設定する: 各戦略オプションを比較するための明確な評価軸を設定します。例えば、「市場の魅力度(市場規模・成長性)」「実現可能性(自社の強みとのフィット感・投資規模・リスク)」の2軸で評価するのが一般的です。
    • メリハリをつける: 全ての選択肢を均等に扱う必要はありません。「市場浸透は短期的な打ち手としては有効ですが、市場が飽和しているため大きな成長は見込めません。一方で、製品開発は当社の技術力を活かせるため、中長期的な成長エンジンになり得ます」というように、強弱をつけて議論しましょう。

失敗例3:製品・市場の定義が曖昧な「不正確なマッピング」

「製品」「市場」の「既存」「新規」の定義が曖昧なまま議論を進めてしまい、どの戦略がどの象限に当てはまるのかが不明確になるパターンです。例えば、既存製品のマイナーチェンジを「新規製品」と捉えてしまったり、同じ国内の異なる年齢層へのアプローチを「新規市場」と大きく捉えすぎたりするケースです。

  • なぜダメなのか?
    • 議論の前提が揺らぎ、論理的な一貫性が失われます。
    • 戦略の規模感やリスクの評価が不正確になります。
  • どう回避するか?
    • 思考の初期段階で定義する: 「今回のケースにおける『新規製品』とは、既存の技術基盤から大きく逸脱した製品と定義します」「『新規市場』とは、主に海外市場を指すこととします」というように、面接官と合意形成しながら進めましょう。
    • 具体例で確認する: 「例えば、〇〇という施策は、既存顧客向けのマイナーチェンジなので『市場浸透』の範疇で考えます」と具体例を挙げることで、自分の定義を明確に伝え、面接官との認識を合わせることができます。

これらの失敗を回避し、アンゾフの成長マトリクスを思考を深めるための「ツール」として使いこなすことが、ケース面接突破の鍵となります。次の章では、これを実際に用いたケース解説を行います。

【ケース面接 徹底解説】アンゾフの成長マトリクスで解く「大手菓子メーカーの成長戦略」

ここからは、本記事の核心であるケース解説です。「大手菓子メーカーの成長戦略」というお題を用いて、アンゾフの成長マトリクスをどのように実践的に活用するのか、思考プロセスを追いながら具体的に解説します。

お題:クライアントは大手菓子メーカー「明治」。3年間の成長戦略を立案してください。


1. 前提設定、問題の背景の言語化(面接官とのすり合わせ)

まず、議論の土台を固めるために、面接官に確認・提案を行い、前提を明確にします。

  • クライアントについて:
    • 「明治」は菓子事業以外にも乳製品事業などが大きいですが、今回は「菓子事業」にスコープを絞ってよろしいでしょうか?(面接官:はい、それでお願いします)
    • 菓子事業の中でもチョコレート(きのこの山、たけのこの里など)、グミ、スナックなど多岐にわたりますが、特定のカテゴリではなく菓子事業全体の成長戦略という理解でよろしいでしょうか?(面接官:はい、結構です)
  • 目標設定:
    • 「成長戦略」の具体的な目標として、「3年間で菓子事業の売上高を市場成長率以上に向上させ、国内シェアNo.1の地位を盤石にすること」と設定してもよろしいでしょうか?(面接官:良いでしょう)
  • 市場環境:
    • 国内の菓子市場は、人口減少の影響もあり、全体としては微増〜横ばいの成熟市場と認識しています。この理解でよろしいでしょうか?(面接官:はい、その通りです)
  • 制約条件:
    • M&Aなどの大規模な投資も選択肢に含めて考えてよろしいでしょうか?(面接官:はい、構いません)

【議論のゴール】
以上の前提を踏まえ、「国内の成熟した菓子市場において、明治が3年間で売上を伸ばしトップシェアを盤石にするための成長戦略」を立案する。

2. 仮説創出のための業界・商材の特徴分析

次に、菓子業界やクライアントの特徴を分析し、仮説の種となる示唆を抽出します。

  • 3C分析
    • 市場 (Customer):
      • ニーズの多様化: 健康志向(低糖質、高カカオ)、ご褒美需要(高級志向)、時短・簡便性、SNS映えなど、ニーズが細分化。
      • 人口動態: 少子高齢化により、子供向け市場は縮小傾向。一方で、シニア層の市場は拡大の可能性。
      • 購買チャネル: スーパー、コンビニが主戦場だが、EC、ドラッグストア、専門店などチャネルも多様化。
    • 競合 (Competitor):
      • ロッテ、江崎グリコ、森永製菓など大手国内メーカーが多数存在し、競争は激しい。
      • PB(プライベートブランド)商品や、輸入菓子、異業種(健康食品メーカーなど)からの参入も脅威。
    • 自社 (Company – 明治):
      • 強み: 高いブランド力と信頼性(「きのこの山」「たけのこの里」など国民的ブランドを多数保有)、強力な販売網、研究開発力(カカオポリフェノールの健康効果など)、乳製品事業とのシナジー。
      • 弱み: 伝統的なブランドが多い故の目新しさの欠如?若年層への新しいアプローチが必要かもしれない。
  • ビジネス特性分析
    • 典型的なBtoC消費財: ブランドイメージと店頭での配荷力(棚の確保)がKSF。
    • トレンドの移り変わりが早い: 新商品が次々と発売され、ヒット商品のライフサイクルも短い。定番ブランドの維持と新商品開発の両輪が重要。
    • 原材料価格の影響を受けやすい: カカオ豆、砂糖、小麦などの市況に収益が左右される。

【分析からの示唆・初期仮説】
国内市場は飽和状態であり、従来のやり方(市場浸透)だけでは大きな成長は難しいのではないか?明治の強みである「ブランド力」や「研究開発力」を活かし、多様化するニーズに応える「新製品」や、未開拓の「新市場(顧客層)」に活路を見出すべきではないか?

3. 論点の構造化とイシューの絞り込み(アンゾフの成長マトリクスの活用)

ここで、分析から得られた示唆をもとに、成長戦略の方向性を網羅的に検討するため、アンゾフの成長マトリクスを活用します。

既存市場(国内菓子市場)新規市場
既存製品① 市場浸透戦略 (△)③ 市場開拓戦略 (⚪︎)
新規製品② 製品開発戦略 (◎)④ 多角化戦略 (×)

各戦略の評価と絞り込み:

  • ① 市場浸透戦略 (△):
    • 論拠: 国内市場は飽和しており、大手競合とのシェア争いは消耗戦になりやすい。広告宣伝や販促強化は必要だが、これだけで「市場成長率以上」の成長を達成するのは困難。優先度は低い。
  • ② 製品開発戦略 (◎):
    • 論拠: 市場ニーズが「健康志向」「ご褒美需要」など多様化しているため、ここに向けた新製品開発のポテンシャルが最も高い。明治の強みである「ブランド力」と「研究開発力」を最大限に活かせる領域。既存の販売網を使えるため、リスクも比較的低い。これを最重要イシューとする。
  • ③ 市場開拓戦略 (⚪︎):
    • 論拠: 海外市場、特にアジア市場は成長性が高い。明治のブランド力は一定の強みになる。ただし、3年という期間で大きな収益を上げるには、現地でのサプライチェーン構築やマーケティングに時間がかかる。また、「国内シェアNo.1を盤石に」という目標を考えると、国内市場への注力が優先されるべき。ただし、国内の未開拓セグメント(例:シニア層、法人向け)へのアプローチは有望であり、検討の価値がある。これを重要イシューとする。
  • ④ 多角化戦略 (×):
    • 論拠: 菓子事業から大きく逸脱した事業は、既存アセットとのシナジーが薄く、リスクが高い。3年間の戦略としては優先度が最も低い。

【絞り込み結果】
3年間の成長戦略としては、「② 製品開発戦略」を主軸に据え、多様化する国内の顧客ニーズを的確に捉えることで成長を目指す。並行して、「③ 市場開拓戦略」として、国内の未開拓顧客セグメントへのアプローチも強化する。

4. 打ち手

最重要イシューである「製品開発戦略」を軸に、具体的な施策を立案・提案します。

【推奨戦略】
「健康軸」と「プレミアム軸」を核とした高付加価値製品開発戦略

  • How to Win(具体的な施策):
    1. 「健康軸」製品ラインの強化:
      • ターゲット: 健康意識の高い30代〜50代、およびシニア層。
      • 具体策: 明治の強みであるカカオ研究を活かし、「高カカオチョコレート効果」シリーズをさらに拡充(例:ストレス緩和、睡眠改善など機能性を細分化)。乳酸菌などの知見を活かした「腸活グミ」や、低糖質・高たんぱくのスナック菓子などを開発・投入する。
      • チャネル: ドラッグストアや健康食品売場での展開を強化。
    2. 「プレミアム・ご褒美軸」製品ラインの強化:
      • ターゲット: 自分へのご褒美を求める20代〜40代の働く男女。
      • 具体策: 「ザ・チョコレート」シリーズのようなスペシャリティ路線を強化。産地や製法にこだわった高級チョコレート、有名パティシエとのコラボ商品、季節限定の高級スイーツなどを開発。
      • チャネル: 百貨店、高級スーパー、自社ECサイトでの限定販売などでブランド価値を高める。
    3. パーソナライズ戦略の導入(クロス戦略):
      • 自社ECサイトやアプリを通じて、顧客の好みや健康志向に関する簡単な診断コンテンツを提供。
      • 診断結果に基づき、上記「健康軸」「プレミアム軸」の製品の中から最適な商品をレコメンドし、定期購入(サブスクリプション)モデルへ誘導する。
  • リスクと対策:
    • リスク: 新製品開発の失敗リスク、既存商品とのカニバリゼーション。
    • 対策: スモールスタートでのテストマーケティング実施。既存ブランドの派生商品とすることで失敗リスクを低減。
  • 優先順位・マイルストン:
    • 1年目: 市場調査と製品コンセプト開発。既存ブランド(チョコレート効果など)のライン拡充から着手。
    • 2年目: 新規ブランドのテストマーケティングと本格ローンチ。ECサイトでのパーソナライズ機能実装。
    • 3年目: 成功モデルの横展開、チャネル拡大。
  • 次の一歩:
    まず、ターゲット層(健康志向層、プレミアム志向層)の深層ニーズに関する詳細な市場調査を実施し、具体的な製品コンセプトの妥当性を検証すべきです。

5. 学びの抽象化、今回の問題を通じて伝えたいこと

  • 成熟市場における成長戦略の定石: 成熟市場では、単純なシェア争い(市場浸透)には限界がある。市場内の「構造変化(ニーズの多様化など)」を捉え、そこに向けた「製品開発」「未開拓セグメントへの市場開拓」が有効な打ち手となる。
  • フレームワークの戦略的活用: アンゾフの成長マトリクスは、思考の出発点として選択肢を網羅的に洗い出し、議論の全体像を構築するのに非常に有効。しかし、それ自体が答えを出すのではなく、分析結果と組み合わせ、評価・絞り込みを行うことで初めて価値を発揮する。
  • 自社の強みを活かす: 成長戦略は、自社の強み(アセット)を最大限に活用できる領域でこそ成功確率が高まる。今回のケースでは、明治の「ブランド力」と「研究開発力」が製品開発戦略の成功確度を高める強力な根拠となる。

6. 差がつくポイント、元面接官からのコメント

  • 前提設定の質: 「明治」という具体的な企業名から、どのような強み・弱み、ブランドイメージを想起し、それを前提に盛り込めているか。国内菓子市場のトレンド(健康志向など)を的確に捉えられているか。
  • フレームワーク導入の自然さ: 「アンゾフありき」ではなく、現状分析から「成長の方向性を整理する必要がある」という流れで、ツールとして自然に導入できているか。
  • 絞り込みの論拠の鋭さ: なぜ「製品開発」が最も有望なのか、その理由を市場の魅力度と自社の強みを結びつけて説得力高く説明できているか。他の選択肢をなぜ「選ばないのか」の理由も明確に述べられているか。
  • 打ち手の具体性と一貫性: 絞り込んだ戦略(製品開発)と、具体的な打ち手(健康軸・プレミアム軸)が一貫しているか。ターゲット、製品、チャネルまで具体的に落とし込めているか。
  • ディスカッションでの深掘り耐性: 「健康志向市場の競合は?」「プレミアム路線の価格設定はどう考える?」といった深掘り質問に対し、思考を停止させず、ディスカッションを通じて考えを深めていけるか。

まとめ:「アンゾフの成長マトリクス」を武器にケース面接を突破する

この記事では、戦略コンサルティングファームのケース面接で頻出する「成長戦略」のお題を攻略するための強力なフレームワーク、「アンゾフの成長マトリクス」について、基本的な考え方から実践的な使い方、そして具体的なケース解説までを詳述してきました。

最後に、この記事の要点を改めて整理します。

「アンゾフの成長マトリクス」とは?

企業の成長戦略を「製品(既存/新規)」「市場(既存/新規)」の2軸で捉え、4つの基本的な方向性を網羅的に洗い出すための思考の枠組みです。

  1. 市場浸透戦略: 既存市場で、既存製品をさらに売る。(低リスク・短期的)
  2. 製品開発戦略: 既存市場に、新製品を投入する。
  3. 市場開拓戦略: 新規市場で、既存製品を売る。
  4. 多角化戦略: 新規市場に、新製品を投入する。(高リスク・長期的)

ケース面接での実践ポイント

  • 「成長戦略」という広範なお題で、思考の出発点として活用する。
  • フレームワークありきではなく、必ず現状分析(3Cなど)の後に、思考を整理するツールとして用いる。
  • 4つの選択肢を提示するだけでなく、評価軸(市場魅力度、実現可能性など)を設けて比較し、注力すべき戦略を絞り込む
  • なぜその戦略を選ぶのか(選ばないのか)、その論拠を明確に説明する。
  • 絞り込んだ戦略に基づき、具体的な打ち手へと思考を深めていく。

ケース面接で求められるのは、フレームワークの知識そのものではありません。それをいかに「ツール」として使いこなし、自分自身の頭で考え、説得力のある結論を導き出せるかです。

アンゾフの成長マトリクスという武器を正しく理解し、練習を重ねることで、あなたはどんな「成長戦略」のお題にも自信を持って立ち向かえるようになるはずです。この記事が、あなたの戦略コンサルタントへの道を切り拓く一助となることを心から願っています。

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「理想的な上達プロセス」についてでした。

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どういうやり方をするのが正解なのだろうか?
それについて考えるところから始まりました。

結論、我々が辿り着いた答えは
①学習する:プロから正しく学ぶ
②練習する:繰り返し練習し学んだことを自分の体に染み付かせる
③実践する:実践で到達度や課題を明確化する
→①②に戻る
というサイクルを回すことが
「理想的な上達プロセス」
なのではないか?ということでした。

そこで、この「理想的な上達プロセス」に沿う形で
さまざまな教材・トレーニングメニューを綿密に設計・用意し
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プログラムの全体像はこちらです。

①正しく学ぶ

Strategistsのオリジナル教材、教科書・動画講座を使って
必要な思考法や知識を体系的にインプットしていただきます。

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②反復練習で定着:課題ケース演習

厳選した良問を、自主課題としてメンターが指定。
時間制限を設けず熟考する形式で自主演習し、
さらに専用フォームに筆記ケース形式でアウトプットしていただきます。
教科書や動画講座で学んだ思考法や知識を思い返しながら
実際の過去問を題材に試行してみる。
あなたの思考力が”変わる・鍛えられる”のが
このトレーニングの役割です。

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③実践&現状把握:模擬ケース面接

専属メンターと模擬面接を実施。
詳細なフィードバックをもらうことで
現状を把握し、弱点・課題を発見できるのはもちろん
内定レベルの解答例や思考のポイントなど
1問を題材に「次に活かせる」学びを詳しく解説します。

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メンタリングの質へのこだわり

皆さんは『メンタリングの質』というものについて考えたことはありますか?我々は『問題を解き→フィードバックをもらい→模範解答を見る』というプロセスを経ての成長幅こそが『メンタリングの質』だと考えています。

『メンタリングの質』はメンターの質はもちろん、扱う問題と模範解答の質によって決まると考えており、我々のサービスでは厳選された問題からしか出題を行いません。メンタリングでの使用を構想してから実際にお客様にお出しする「デビュー」までに数ヶ月かかることも多いです。

我々はケース対策における「良問」を
・得られる学びが深くて多い
・抽象化して次に活かせる普遍性がある
・これまでのお題とも次回以降のお題とも被らない新たな学びがある

と定義しています。各問題が単に「マッキンゼー対策」「公共系」のような表面的なジャンル分けにとどまらず、「BSとPLの構造理解」「”実現可能性とインパクト”の落とし穴」「サブスク事業のキードライバー」など裏テーマが設定してあります。

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大谷

新卒でMBB2社に内定。Strategists卒業生。通常半年から1年ほど対策期間を要する新卒の戦略コンサル就活において、たった3ヶ月で内定を獲得。「内定獲得の秘訣は対策の量ではなく、質である」という考えから、現在は質の高いコンテンツ作成や指導を行っている。

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