【MBB内定者が解説!】高難易度フェルミ推定に挑戦!ケース面接過去問解説シリーズ③

「戦略コンサルティングファームのケース面接で、『観光客数』を推定するようなフェルミ推定が出題されることがあるらしいけど、どうやって考えればいいんだろう?」
「特定の地域の観光客数を推定する場合、どんな情報や仮説の立て方が有効なの?」

戦略コンサル、特にMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)を目指す皆さんにとって、フェルミ推定は避けては通れない、論理的思考力と仮説構築力を測るための重要な選考プロセスです。これまでのシリーズでは、市場規模や生産量といったテーマを扱ってきましたが、今回は特定の地域における「観光客数」の推定という、より具体的な状況設定と多角的なアプローチが求められる高難易度なフェルミ推定に挑戦します。

この記事では、実際にMBBの内定を獲得した筆者が、過去に出題された「熱海温泉の年間観光客数」というテーマを取り上げ、そのフェルミ推定の思考プロセス、アプローチの選択、数値設定のロジック、そして面接官がどこを見ているのかをステップバイステップで徹底解説します。

単に人口ベースで考えるだけでなく、交通手段、宿泊施設、観光シーズナリティといった多様な要素を考慮し、それらを構造的に組み合わせて推定するこの種の問題は、あなたの情報整理能力、仮説構築力、そして数値に対するセンスを試すものです。

本記事で扱うフェルミ推定問題:

  • フェルミ推定:熱海温泉の年間観光客数を求めよ。

目次

  1. 「観光客数」推定の難しさとアプローチの多様性
  2. 【フェルミ推定 解説】熱海温泉の年間観光客数の推定
    • 前提確認と「観光客」の定義
    • アプローチの選択(供給ベース vs 需要ベース vs 複合アプローチ)
    • 選択したアプローチに基づく分解と構造化
    • 各要素の数値設定ロジックと計算
    • リアリティチェックと結論のまとめ方
    • ディスカッションで深掘りされうるポイント
  3. MBB面接官からの一言アドバイスと「差がつくポイント」
  4. まとめ:複数の視点を組み合わせ、説得力のある推定を

それでは、まず「観光客数」を推定する上での特有の難しさと、考えられるアプローチについて見ていきましょう。



【お知らせ】Strategistsを活用し戦コン内定を獲得した方のインタビューはこちら



1. 「観光客数」推定の難しさとアプローチの多様性

フェルミ推定において「観光客数」を推定するお題は、一見すると市場規模推定と似ているようで、いくつかの特有の難しさと、それゆえのアプローチの多様性が存在します。

「観光客数」推定の主な難しさ:

  1. 「観光客」の定義の曖昧さ:
    • どこからが「観光客」なのか? 日帰り客は含むのか? ビジネス目的の訪問者は除くのか? 地元住民のレジャー利用は? 「熱海温泉」というからには温泉利用が前提か?
    • この定義次第で、推定の対象範囲が大きく変わってきます。
  2. 多様な来訪手段と目的:
    • 観光客は、電車、自動車、バスなど様々な交通手段で訪れます。また、宿泊する人もいれば日帰りの人もいます。目的も、温泉、食事、観光スポット巡り、イベント参加など多岐にわたります。
    • これらの多様性をどう整理し、推定の構造に落とし込むかが難しいポイントです。
  3. シーズナリティ(季節変動)の考慮:
    • 多くの観光地では、季節(ゴールデンウィーク、夏休み、年末年始、オフシーズンなど)によって観光客数が大きく変動します。年間観光客数を推定するには、このシーズナリティをどう平準化して考えるか、あるいは季節ごとに分けて考えるかといった工夫が必要です。
  4. データの取得困難性(特にニッチな地域の場合):
    • 「熱海」のような有名観光地であれば、ある程度の観光統計データ(入込客数など)のイメージが湧くかもしれませんが、よりマイナーな地域が対象となった場合、基礎となる数値の仮定が非常に難しくなります。
  5. 「延べ人数」か「実人数(ユニーク客数)」か:
    • 年間観光客数を「延べ人数(年間に訪れた人の総数、同一人物が複数回訪れた場合もカウント)」で捉えるのか、「実人数(年間に訪れた純粋な人数)」で捉えるのかによって、アプローチや解釈が変わってきます。一般的には「延べ人数」を指すことが多いですが、確認が必要です。

「観光客数」推定の主なアプローチ:

これらの難しさを踏まえ、観光客数を推定するための代表的なアプローチをいくつか紹介します。どのアプローチが最適かは、お題の特性や与えられた情報、制限時間によって異なります。

  1. 供給ベース(キャパシティ起点):
    • 宿泊施設起点:
      • 熱海温泉の総宿泊可能部屋数 × 平均稼働率 × 平均宿泊人数/部屋 × 年間営業日数
      • これに日帰り客数を別途加算する必要がある。
    • 交通インフラ起点:
      • 熱海駅の一日あたり乗降客数 × 観光客の割合 × 年間日数
      • 熱海に乗り入れる主要道路の交通量 × 乗用車の平均乗車人数 × 観光目的の割合 × 年間日数
    • 主要観光施設のキャパシティ起点:
      • 熱海にある主要な観光施設(例:〇〇城、△△水族館)の年間来場者数の合計から、重複を除いて推定する(難易度高)。
  2. 需要ベース(訪問者の行動起点):
    • 日本の総人口(または特定のターゲット層人口)起点:
      • 日本の総人口 × 熱海温泉への年間平均訪問率 × 1回あたり平均滞在日数(日帰り含むなら調整)
      • セグメント別(例:関東圏在住者、高齢者層など)に分解して積み上げる。
    • 旅行市場全体からのシェア推定:
      • 日本国内の年間総旅行者数(または温泉旅行者数)× 熱海温泉のシェア
  3. 複合アプローチ:
    • 上記のアプローチを複数組み合わせたり、一方のアプローチで算出した数値をもう一方のアプローチで検証したりする。
    • 例えば、宿泊施設のキャパシティから宿泊客数を推定し、それに別途日帰り客数を需要ベース(例:関東圏からの日帰りレジャー需要)で推定して加算するなど。

BCGのケース面接で意識すべきこと:

  • 前提確認の徹底: まず「観光客」の定義、対象期間(年間)、延べ人数か実人数か、などを面接官と明確にすり合わせます。
  • アプローチ選択の論理性: なぜそのアプローチを選択したのか、そのメリット・デメリット、他のアプローチをなぜ選択しなかったのかを説明できるようにします。
  • 構造化と分解の明確さ: 選択したアプローチを、具体的な計算要素にMECEに分解し、その構造を分かりやすく提示します。
  • 仮定の妥当性と感度: 各パラメータに設定する数値の根拠を説明し、どの仮定が結果に大きく影響するか(感度が高いか)を意識します。

次の章では、これらのアプローチの中から一つ(または複合的に)選択し、「熱海温泉の年間観光客数」を具体的に推定していきます。

2. 【フェルミ推定 解説】熱海温泉の年間観光客数の推定

前章で「観光客数」推定の難しさと多様なアプローチについて確認しました。ここからは、お題である「熱海温泉の年間観光客数」を具体的に推定していきます。複数のアプローチが考えられますが、ここでは供給ベース(宿泊施設起点)と需要ベース(日帰り客)を組み合わせた複合アプローチで進めてみます。

お題:熱海温泉の年間観光客数を求めよ。(制限時間:例として7~10分程度を想定)

ステップ1:前提確認と「観光客」の定義(思考時間:~1分)

まず、何を「観光客」とし、どの範囲で推定するのかを明確にします。

  • 「熱海温泉」の範囲: 熱海市内の温泉地全体を指すとします。
  • 「観光客」の定義:
    • 宿泊客: 熱海市内の宿泊施設(旅館、ホテル、民宿、リゾートマンション等)に宿泊する人。
    • 日帰り客: 宿泊はしないが、熱海を訪れ、温泉利用、飲食、観光などを行う人。
    • ビジネス目的の訪問者は今回は除外する(または、観光客の中に一定割合含まれるとして合算する)。
    • 地元住民の温泉利用やレジャーは、経済効果の観点からは外部からの流入が重要であるため、今回は「市外からの来訪者」を主に対象とします。
  • 集計単位: 年間の「延べ人数」とします。

面接官への確認(例):
「熱海温泉の年間観光客数について、熱海市内の温泉地を訪れる延べ人数を推定します。大きく『宿泊客』と『日帰り客』に分けて考えたいと思いますが、この定義でよろしいでしょうか? また、ビジネス目的の訪問者は今回は除外し、主に市外からの来訪者を観光客と捉えたいと思います。」

ステップ2:アプローチの選択と構造化(思考時間:~2分)

宿泊客と日帰り客で、それぞれ異なるアプローチで推定し、最後に合算する方針とします。

年間観光客数 = ①年間宿泊客数 + ②年間日帰り客数

① 年間宿泊客数(供給ベース:宿泊施設のキャパシティ起点)
年間宿泊客数 = (A)熱海市内の総客室数 × (B)年間平均稼働率 × (C)1室あたり平均宿泊人数 × (D)年間営業日数
* (D)は365日で固定できるため、実質的には(A)~(C)の推定が中心。

② 年間日帰り客数(需要ベース:主に近隣からの訪問者起点)
年間日帰り客数 = (E)日帰り観光圏人口 × (F)年間熱海訪問率(日帰り)
* (E)は首都圏や静岡県東部など、日帰り可能な範囲の人口。
* (F)はその中で、年間にどれくらいの割合の人が熱海に日帰りで訪れるか。

思考のポイント:

  • 宿泊客は「供給側の制約(部屋数)」から考えるのが比較的現実的。
  • 日帰り客は「需要側の動機(アクセスの良さ、魅力)」から考えるのが自然。
  • このように、対象に応じてアプローチを使い分けることで、より精度の高い推定を目指します。

ステップ3:各要素の数値設定ロジックと計算(思考時間:~5分)

各パラメータに対して、論理的な根拠を示しながら数値を設定し、計算を実行します。

① 年間宿泊客数の推定

  • (A) 熱海市内の総客室数:
    • 推論の足掛かり: 熱海は日本有数の温泉観光地。大規模な旅館やホテルが多いイメージ。
    • 仮に、大規模旅館・ホテル(平均200室)が30軒、中規模旅館・ホテル(平均50室)が100軒、小規模民宿・その他(平均10室)が200軒あると仮定。
    • 計算: (200室×30軒) + (50室×100軒) + (10室×200軒) = 6,000 + 5,000 + 2,000 = 13,000室
      • BCG的深掘りポイント: この内訳の置き方が肌感覚すぎないか?例えば「熱海の旅館組合のウェブサイトに登録されている軒数から類推して…」など、少しでもリアリティのある根拠を示せると良い。
  • (B) 年間平均稼働率:
    • 推論の足掛かり: 週末や繁忙期(夏休み、GW、年末年始)は高いが、平日は低い。インバウンド需要も影響。
    • 仮に、年間を通じて平均60%と仮定。
      • 理由: 温泉地は比較的安定した需要があるが、全国平均よりやや高め程度か。
  • (C) 1室あたり平均宿泊人数:
    • 推論の足掛かり: 和室の旅館もあれば、洋室のホテルもある。家族連れ、カップル、友人同士など多様。
    • 仮に、平均して2.5人/室と仮定。
  • (D) 年間営業日数: 365日
  • 計算(年間宿泊客数):
    13,000室 × 0.60 × 2.5人/室 × 365日
    = 13,000 × 1.5人/室 × 365日
    = 19,500人/日 × 365日
    ≒ 20,000人/日 × 365日 = 7,300,000人
    約730万人 (あるいは19,500 × (360+5) = 702万 + 9.75万 ≒ 712万人 のように計算)

② 年間日帰り客数の推定

  • (E) 日帰り観光圏人口:
    • 推論の足掛かり: 熱海へのアクセスが良い主要な近隣都市圏(首都圏、静岡県東部・中部など)に居住し、日帰りレジャーに出かける可能性のある人口。 首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)から約5000万人、東海地方東部・中部から約1000万人とすると、合計約6000万人。このうち、実際に日帰り旅行のターゲットとなり得るアクティブな層として、仮に1,000万人と設定。
  • (F) 年間熱海訪問率(日帰り):
    • 推論の足掛かり: 日帰り観光圏のアクティブ人口が、1年間に平均して何回熱海に日帰りで訪れるか。箱根や伊豆といった近隣の競合観光地の存在も考慮。 仮に、年間平均0.2回/人と仮定。
    • 理由: 熱海は有名観光地であり、首都圏からのアクセスも良好であるため、日帰り客は一定数見込める。しかし、年間を通じて複数回訪れる人は限られることや、他の観光地の選択肢も多いことから、アクティブ人口全体でならすと、1人あたり年0.2回程度と想定。これは、例えば「アクティブ人口のうち20%の人が年に1回訪れる」あるいは「10%の人が年に2回訪れる」といった状況を集約したイメージ。

      計算(年間日帰り客数): 年間日帰り客数 = (E)日帰り観光圏アクティブ人口 × (F)年間平均熱海日帰り訪問回数
      = 1,000万人 × 0.2回/人・年 = 200万人
  • 計算(年間日帰り客数):
    1,000万人 × 0.20 (訪問率/年) = 200万人
    (ここは「1回あたり訪問人数」をどう組み込むかで構造が変わる。上記の構造なら、訪問「回数」を出すイメージ。もし「日帰りに行く可能性のある人」を(F)で出すなら、そのあとに平均訪問回数と1回あたり訪問人数を掛けるなど、柔軟に。)
  • 代替構造案:
    日帰り観光圏アクティブ人口 3,000万人
    × 熱海への年間平均日帰り訪問回数/人:例えば、その中の10%の人が年に1回、5%の人が年に2回…とセグメント分けするか、えいやで「平均0.2回/人・年」などと置く。
    1,000万人 × 0.2回/人・年 = 200万人(延べ人数)

ステップ4:合計とリアリティチェック、結論のまとめ方(思考時間:~2分)

  • 年間観光客数の合計:
    年間宿泊客数(約710万人~730万人) + 年間日帰り客数(約200万人)
    約910万人~930万人
  • リアリティチェック:
    • 熱海市の人口は約3.5万人。その約260倍の観光客が年間に訪れている計算。有名観光地としてはあり得る数字か?
    • 静岡県全体の年間観光客数(コロナ前で延べ1.5億人程度)と比較して、熱海がその1割弱を占めるのは妥当か?(県の主要観光地であることを考慮すれば、桁感が大きく外れてはいない可能性)
    • 過去のニュース記事などで報じられた熱海の観光客数(コロナ前で1千万人台前半だった記憶があればベスト)と照らし合わせる。
    • 各パラメータの妥当性を再検討。特に宿泊施設の総客室数や稼働率、日帰り客の訪問率の仮定が結果を大きく左右する。

面接官への報告(例):
「熱海温泉の年間観光客数は、宿泊客と日帰り客を合わせて、約900万人と推定しました。

まず、年間宿泊客数ですが、熱海市内の総客室数を約1万3000室、年間平均稼働率を60%、1室あたり平均宿泊人数を2.5人と仮定し、これらを掛け合わせることで約730万人と算出しました。
次に、年間日帰り客数ですが、日帰り観光圏(主に首都圏および静岡県東・中部)におけるアクティブ人口を約1000万人と推定しました。
このアクティブ人口が、1年間に平均して0.2回熱海を日帰りで訪れると仮定し、年間日帰り客数は1000万人 × 0.2回/人・年で600万人と算出しました。 これらを合計し、約1330万人となります。

静岡県全体の観光客数との比較や、熱海市の人口規模から考えても、国内有数の温泉観光地であることを考慮すれば、桁感として大きくは外れていないのではないかと考えております。ただし、宿泊施設の総客室数や日帰り客の訪問率といった主要なパラメータの精度によって、この数値は変動しうるものと認識しております。」

ディスカッションで深掘りされうるポイント:

  • 各パラメータの根拠の妥当性: 「総客室数13,000室の内訳はどのように考えましたか?」「日帰り客の訪問率10%は、他の観光地と比較してどうですか?」
  • シーズナリティの考慮: 「年間平均稼働率60%とのことですが、繁忙期と閑散期でどの程度の差があり、それをどう平均に反映させましたか?」
  • 「観光客」の定義の再確認: 「ビジネス客や地元住民のレジャー利用を除外したとのことですが、それらを含めるとどの程度変わりますか?」
  • 他のアプローチでの検証: 「交通インフラ(例:熱海駅の乗降客数)を起点とした場合、どのような推定になりますか?」
  • コロナ禍の影響と今後の見通し: (もし現代の状況を問われた場合)コロナ禍で観光客数はどう変化し、今後はどのように回復していくと考えますか?

このフェルミ推定では、複雑な要素を構造化し、複数のアプローチを適切に組み合わせ、それぞれの仮定に対して論理的な説明を試みることが重要になります。


次の章では、MBB面接官からの一言アドバイスや、この種の問題で差がつくポイントについて解説します。

3. MBB面接官からの「一言アドバイス」と「差がつくポイント」

「熱海温泉の年間観光客数」のような、特定の地域や事象に関するフェルミ推定は、あなたの情報整理能力、仮説構築力、そして何よりも「現実に対する解像度の高さ」が問われます。MBBの面接官は、単に計算が合うかどうかだけでなく、あなたの思考の質とビジネスパーソンとしてのポテンシャルを見ています。

MBB面接官からの「一言アドバイス」

  • 「その数字、肌感覚ありますか?(リアリティの追求)」
    • フェルミ推定で導き出された数値に対して、「本当にそんなものだろうか?」という問いを常に持つことが重要です。例えば、熱海の人口、他の有名観光地の観光客数、自分の旅行経験など、何かしらの比較対象や感覚的なベンチマークと照らし合わせ、あまりにも非現実的な数値になっていないかを確認する癖をつけましょう。「計算は合ったけど、何かおかしい」と感じる直感を大切にしてください。
  • 「なぜその『分解の仕方』を選んだのですか?他に切り口は?」
    • 観光客数を推定するアプローチは一つではありません(宿泊施設ベース、交通量ベース、訪問者属性ベースなど)。なぜその構造化・分解アプローチを選んだのか、その選択の論理的な理由を説明できることが重要です。また、他のアプローチも検討し、それぞれのアプローチのメリット・デメリットを理解していることを示せると、思考の幅と深さを示すことができます。
  • 「その仮定、一番クリティカルなのはどこですか?(感度分析の意識)」
    • あなたの推定結果は、いくつかの重要な仮定(パラメータ)の上に成り立っています。その中で、どの仮定が最終的な数値に最も大きな影響を与えるのか(感度が高いのか)を把握しておくことが重要です。面接官から「もし〇〇の数値が半分だったら?」と問われた際に、即座に影響度合いを答えられるようにしておくと、数字に対する強さを示せます。
  • 「『熱海ならでは』の要素、考慮できていますか?」
    • 単なる「観光地A」として一般論で推定するのではなく、「熱海」という地域が持つ固有の特性(例:首都圏からのアクセスの良さ、温泉という強力な集客コンテンツ、歴史、他の観光スポットとの位置関係、ターゲット顧客層の特徴など)をどれだけ考慮できているかが問われます。「熱海だからこそ、このパラメータはこうなるはずだ」という、地に足のついた考察が求められます。
  • 「その数字の『先』に何が見えますか?(ビジネスへの接続意識)」
    • フェルミ推定は、多くの場合、その後のビジネスケースへの導入となります。算出した観光客数という数値から、熱海温泉が抱える課題や機会、あるいは打つべき施策の方向性について、何か示唆が得られないかを常に考える癖をつけましょう。「年間〇〇人来ているから、客単価を△△円上げれば□□億円の売上増が見込めるのでは?」といった、次の議論に繋がる視点です。

「観光客数」推定で「差がつく」ポイント

上記の「一言アドバイス」を踏まえ、特に今回の「熱海温泉の年間観光客数」というお題で、他の受験者と差をつけるための具体的なポイントを挙げます。

  1. 「観光客」のセグメンテーションの巧みさ:
    • 単に「宿泊客」と「日帰り客」に分けるだけでなく、より解像度の高いセグメント(例:個人旅行 vs 団体旅行、若年層 vs シニア層、国内客 vs インバウンド客(コロナ前なら)、平日客 vs 週末客)を意識し、それぞれの行動特性や消費単価の違いを考慮できると、推定の精度と議論の深さが増します。全てを計算に盛り込む必要はありませんが、「本来はこういった違いも考慮すべき」と言及するだけでも思考の幅を示せます。
  2. 複数のアプローチによる「クロスチェック」の試み:
    • 例えば、宿泊施設ベースで算出した宿泊客数を、今度は交通量データ(熱海駅の乗降客数など)から「熱海に宿泊目的で来る人の割合」を推定して検証してみるなど、異なる角度からのアプローチで数値の妥当性を確認しようとする姿勢は高く評価されます。完全に計算しきれなくても、「時間があれば、〇〇というアプローチでも検証してみたいです」と述べるだけでも有効です。
  3. 「シーズナリティ」への具体的な言及と処理:
    • 「年間平均稼働率」といった形で丸めるだけでなく、「熱海は夏と冬(温泉シーズン)が特に繁忙期で、例えば8月と1月の稼働率は80%を超える一方、オフシーズンの6月や11月は40%程度となり、これを年間で平準化すると…」といったように、具体的な季節変動のイメージと、それをどう平均値に落とし込んだかのロジックを説明できると、リアリティが増します。
  4. 「熱海」に関する事前知識の(さりげない)活用:
    • もし熱海に関する何らかの知識(例:「最近、若者向けの新しい観光スポットができたらしい」「昔ながらの旅館が多いが、リノベーションも進んでいる」など)があれば、それを仮定の根拠やリアリティチェックの際にさりげなく盛り込むと、テーマに対する関心の高さや情報感度の良さをアピールできます。ただし、知識ひけらかしにならないよう注意が必要です。
  5. ディスカッションにおける「数字の遊び方」:
    • 面接官から「その稼働率、もう少し低いんじゃない?」と指摘された際に、単に「はい、そうかもしれません」と終わるのではなく、「もし稼働率が10%下がると、宿泊客数は約〇〇万人減少し、全体の観光客数への影響は△△%程度となります。稼働率の変動はインパクトが大きいですね」というように、数値を動的に捉え、その影響を即座に考察できると、地頭の良さを示せます。

「観光客数」の推定は、多くの要素が絡み合うため、完璧な数値を出すことは困難です。重要なのは、複雑な状況をいかにシンプルに構造化し、論理的な仮定を積み重ね、そしてそこから何が言えるのかを考察する力です。

次の最終章では、本記事のまとめとして、高難易度フェルミ推定を制し、思考の深さを示すための総括を行います。

4. まとめ:複数の視点を組み合わせ、説得力のある推定を

これまでの章で、高難易度フェルミ推定の代表例として「熱海温泉の年間観光客数」を取り上げ、その推定アプローチ、思考プロセス、そしてMBB面接官が注目するポイントについて詳しく解説してきました。

特定の地域や事象に関する「数」を推定するフェルミ推定は、単に計算力を見るものではありません。それは、あなたが現実の世界の事象をどのように捉え、どのような論理でその規模感を把握しようと試みるのか、その「知的な体力」と「ビジネスセンス」を測るものです。

高難易度フェルミ推定(観光客数編)突破のための総括ポイント:

  1. 「定義」でスコープを明確に:
    • 何を「観光客」とし、どの期間・範囲を対象とするのか。この初期設定が曖昧だと、その後の推定全体が揺らぎます。面接官との合意形成を怠らないことが重要です。
  2. 「アプローチ」は複数持ち、最適なものを選択:
    • 供給ベース(宿泊施設、交通インフラ)、需要ベース(人口、訪問率)など、複数の推定アプローチを想起し、それぞれのメリット・デメリットを比較検討した上で、最も論理的かつ現実的に数値を積み上げられる方法を選択する戦略性が求められます。時には、複数のアプローチを組み合わせる柔軟性も必要です。
  3. 「分解」と「構造化」で複雑性を整理:
    • 選択したアプローチを、MECEかつ具体的な計算要素にまで分解・構造化することで、思考の抜け漏れを防ぎ、各要素に対する仮定を置きやすくなります。その構造を面接官に分かりやすく提示するコミュニケーション能力も重要です。
  4. 「仮定」には必ず「論拠」を添える:
    • 各パラメータに数値を設定する際には、アナロジー、一般常識、既知のデータからの推論など、何らかの「論理的な足掛かり」を示します。「なぜそう考えたのか?」という問いに常に答えられるように準備しておくことが、説得力を高める鍵です。
  5. 「地域特性」を捉え、リアリティを追求:
    • 「熱海」という具体的な地名が出てきた以上、その地域が持つ固有の魅力、課題、地理的条件、観光客層の特徴などを考慮に入れることで、推定のリアリティと深みが増します。一般論に終始しない、地に足のついた考察が求められます。
  6. 「検証」と「感度分析」で結論の確度を高める:
    • 算出した数値が常識的な範囲から大きく逸脱していないか、他のデータや自分の肌感覚と照らし合わせて検証します。また、どの仮定が最終結果に最も大きな影響を与えるのか(感度分析)を意識することで、議論の焦点を絞り、より本質的なディスカッションに繋げることができます。
  7. 「ディスカッション」を通じて思考を進化させる:
    • フェルミ推定は、面接官とのインタラクションの中で完成度を高めていくものです。質問や指摘を前向きに捉え、それをヒントに思考を深め、柔軟に仮説を修正していく姿勢が評価されます。

「観光客数」のフェルミ推定は、あなたの「世界をモデル化する力」を試す

特定の地域の観光客数を推定するというお題は、ある意味で、現実の複雑な社会現象を、いくつかの主要な変数とそれらの関係性によって「モデル化」する作業と言えます。どの変数を重要とみなし、それらにどのような数値を当てはめ、それらをどう組み合わせれば、現実をうまく説明できるのか。

このプロセスを通じて、面接官はあなたの

  • 物事の構造を見抜く力
  • 仮説を立てて検証する力
  • 定量的な感覚と論理的な思考力
  • 現実社会に対する関心と理解度

といった、コンサルタントとして不可欠な素養を見極めようとしています。

Strategistsでは、このような一見捉えどころのない高難易度なフェルミ推定に対しても、論理的なアプローチの立て方から、説得力のある数値設定の技術、そして面接官との建設的なディスカッションの進め方まで、徹底的にサポートしています。

この記事が、皆さんの戦略コンサルタントへの挑戦、特に複雑なフェルミ推定に対する自信と具体的な対策の一助となることを心より願っています。


戦略コンサルへの入社/転職を成功させるケース面接対策法

ここまで読んでくれたあなたは、

「ケース面接でライバルに差をつけたい!」
「絶対に戦略コンサルに内定・転職したい」

という強い意欲がある方でしょう。

その意欲があるあなたは、
確実に戦コン内定・転職のポテンシャルを持っています。

そんなあなただからこそ、
対策不十分で本番のケース面接に臨んで爆死してしまったり、
間違った方向に努力をして時間を無駄にしたりは
してほしくないと我々は考えています。

何事も、自己流には限界があります。

最短距離で内定レベルのケース力を習得し
ボーダーラインギリギリではなく面接官を唸らせるレベルのアウトプットを出し
入社後も活躍したいのであれば、
プロからケース面接の正しい考え方や知識
さらに、対策の仕方や選考の戦略を教わりましょう。

独学でもある程度のレベルには達するかもしれませんが
あなたの目標は
「一次面接を通過すれば良い」
「ケース面接っぽいことができるようになれば良い」

ではなく

「トップ戦略ファームの合格ラインを堂々と超える
アウトプットが再現性高く出せるようになり
自信を持って面接に臨むことができること。
そして、内定を獲得することでしょう。」

プロからのアドバイスが不可欠です。

プロの指導は、やり方を教えるだけではなく
何が間違っていてどう改善すべきかを
的確に指摘し、あなたが気づいていない問題点を
明らかにしてくれます。

また我々のプログラムはマンツーマンのケース指導に加えて
フェルミ推定やケース面接の正しい思考法や
知っておかなければならない経営理論やビジネス知識を
網羅体系的にまとめた教科書を用意しており
受講生には必ずそれをみていただきます。

今なら、期間限定で無料で弊社の講師と1on1で話すことができるキャンペーンを行っております。

✅転職活動の悩みを相談したい
✅自分の今の実力を把握したい
✅ケース面接対策のプロに指導してもらいたい

といった方は以下のフォームから
初回メンタリング(60分/無料)
にぜひお越しくださいませ!

我々のマンツーマン指導プログラムについて

サービス開始の2022年以来、少数精鋭ではありながら、
累計で受講生の戦コン内定率が約43% (新卒約45%/既卒約40%)
(通常、戦コン志望者のうち内定を取れるのは数%程度とされます)
という驚異的な内定者輩出実績を誇る我々Strategistsが
多数の受講生の指導や教材制作を経て蓄積・言語化してきたオリジナルのノウハウを基に、本番での評価ポイントを熟知したMBB面接官経験者の視点も組み込みながら、最強のケース対策プログラムを制作しました。

我々のプログラムの最大の特長は、
ケース面接初心者苦手意識のある方であっても
再現性高く最短距離で最高峰(内定レベル)のケース力
を習得することができる点です。

実は我々のお客様の63%は入会時点で
「一才対策はやってない」or「市販の書籍を読んだ程度」
「初心者」ないし「初級」のお客様です。

再現性高く、最短距離で、内定を取れる理由

最高のケース面接対策プログラムの設計を始めたとき、
我々のチームが最初に考えたのが
「理想的な上達プロセス」についてでした。

スポーツでも勉強でも、何か新しいことを始めるとき
「最短距離で最高峰を目指そう!」と思ったら
どういうやり方をするのが正解なのだろうか?
それについて考えるところから始まりました。

結論、我々が辿り着いた答えは
①学習する:プロから正しく学ぶ
②練習する:繰り返し練習し学んだことを自分の体に染み付かせる
③実践する:実践で到達度や課題を明確化する
→①②に戻る
というサイクルを回すことが
「理想的な上達プロセス」
なのではないか?ということでした。

そこで、この「理想的な上達プロセス」に沿う形で
さまざまな教材・トレーニングメニューを綿密に設計・用意し
「内定レベルのケース面接」を最短距離で習得できるカリキュラムが完成しました。

プログラムの全体像はこちらです。

①正しく学ぶ

Strategistsのオリジナル教材、教科書・動画講座を使って
必要な思考法や知識を体系的にインプットしていただきます。

画像

②反復練習で定着:課題ケース演習

厳選した良問を、自主課題としてメンターが指定。
時間制限を設けず熟考する形式で自主演習し、
さらに専用フォームに筆記ケース形式でアウトプットしていただきます。
教科書や動画講座で学んだ思考法や知識を思い返しながら
実際の過去問を題材に試行してみる。
あなたの思考力が”変わる・鍛えられる”のが
このトレーニングの役割です。

画像

③実践&現状把握:模擬ケース面接

専属メンターと模擬面接を実施。
詳細なフィードバックをもらうことで
現状を把握し、弱点・課題を発見できるのはもちろん
内定レベルの解答例や思考のポイントなど
1問を題材に「次に活かせる」学びを詳しく解説します。

画像

メンタリングの質へのこだわり

皆さんは『メンタリングの質』というものについて考えたことはありますか?我々は『問題を解き→フィードバックをもらい→模範解答を見る』というプロセスを経ての成長幅こそが『メンタリングの質』だと考えています。

『メンタリングの質』はメンターの質はもちろん、扱う問題と模範解答の質によって決まると考えており、我々のサービスでは厳選された問題からしか出題を行いません。メンタリングでの使用を構想してから実際にお客様にお出しする「デビュー」までに数ヶ月かかることも多いです。

我々はケース対策における「良問」を
・得られる学びが深くて多い
・抽象化して次に活かせる普遍性がある
・これまでのお題とも次回以降のお題とも被らない新たな学びがある

と定義しています。各問題が単に「マッキンゼー対策」「公共系」のような表面的なジャンル分けにとどまらず、「BSとPLの構造理解」「”実現可能性とインパクト”の落とし穴」「サブスク事業のキードライバー」など裏テーマが設定してあります。

ケース対策は量よりも圧倒的に質です。
質の高いメンター×体系的な基礎インプット×良問での演習確実に内定をGETするなら我々にお任せください。

画像
扱った問題のポイントや解答例をまとめた資料をご共有。
復習にご活用いただけます
※現時点では、扱う問題によって資料が無い場合もございます。

初回体験を申し込む

ここまで読んでいただき、マンツーマン指導に興味を持っていただいた方は、まず初回メンタリングをお受けください無理な勧誘等は一切ございません。お気軽に申し込みください。

模擬面接+FBはもちろん、参加特典としてMBB過去問を題材に
『再現性高くライバルに差をつけるアウトプットを出す方法』
を徹底解説したPDF資料
をプレゼント!

単なる”模範解答例”ではなく、問題のポイントや次に活かせる学びをまとめています。

我々の初回メンタリングはありがちなサービス勧誘・営業の場ではなく
本プログラムの 『0講目』の扱いですから、
「これがStrategistsのクオリティか」とご実感いただける機会になることをお約束します。

画像
参加特典

タイトルとURLをコピーしました