ケース面接対策

【BCGマトリクスとは】MBB内定者がフレームワークの使い方をわかりやすく解説|具体例で学ぶ①

「ケース面接でフレームワークを使えと言われるけど、どう使えばいいかわからない…」
「BCGマトリクスって聞いたことはあるけど、具体的にどんな場面で役立つの?」

戦略コンサルティングファームの選考、特にケース面接において、「フレームワーク」は思考を整理し、論点を構造化するための強力な武器となります。しかし、その使い方を誤ると、かえって思考停止に陥り、「フレームワークに当てはめただけ」という低評価に繋がってしまう諸刃の剣でもあります。

数あるフレームワークの中でも、特に企業の事業ポートフォリオ戦略を考える上で強力なツールとなるのが、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が提唱したBCGマトリクス(PPM:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)です。

この記事では、実際にMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)の内定を獲得した筆者が、BCGマトリクスの基本的な考え方から、ケース面接での実践的な使い方、そして陥りがちな失敗例までを、具体的なケース問題を交えながら徹底的に解説します。

この記事を読めば、BCGマトリクスを単なる知識としてではなく、ケース面接で評価される「武器」として使いこなせるようになるでしょう。



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1. BCGマトリクスの基本的な考え方と使い方をわかりやすく解説

まず、BCGマトリクスがどのようなフレームワークなのか、その基本的な考え方と使い方を理解しましょう。

BCGマトリクス(PPM)とは?

BCGマトリクスは、企業が展開する複数の事業や製品を「市場成長率」「相対的市場シェア」という2つの軸で評価し、経営資源(ヒト・モノ・カネ)をどのように配分すべきかを判断するためのフレームワークです。

企業全体の視点から、「どの事業に投資し、どの事業を維持し、どの事業から撤退すべきか」といった、事業ポートフォリオに関する戦略的意思決定を視覚的に整理することができます。

4つの象限:花形、金のなる木、問題児、負け犬

BCGマトリクスは、2つの軸によって事業を以下の4つの象限に分類します。

象限の名称市場成長率相対的市場シェア特徴と基本的な戦略方針
花形 (Star)高い高い成長市場で高いシェアを持つ、将来有望な事業。シェア維持・拡大のため、積極的な投資が必要。将来の「金のなる木」候補。
金のなる木 (Cash Cow)低い高い成熟市場で高いシェアを持つ、安定的なキャッシュ創出源。追加投資は最小限に抑え、生み出したキャッシュを他の事業(特に「花形」「問題児」)に投資する。
問題児 (Question Mark)高い低い成長市場だがシェアが低い事業。多額の投資を行って「花形」に育てるか、将来性が見込めなければ撤退・売却するか、戦略的な見極めが必要。
負け犬 (Dog)低い低い成熟市場でシェアも低い事業。生み出すキャッシュも少なく、成長も見込めないため、事業の縮小や撤退・売却を検討する。

他のフレームワークとの違い

  • アンゾフの成長マトリクスとの違い:
    アンゾフの成長マトリクスは、「製品」と「市場」をそれぞれ「既存」と「新規」に分け、企業の成長戦略の方向性(市場浸透、新製品開発、新市場開拓、多角化)を考えるフレームワークです。成長の「方向性」を示すのに対し、BCGマトリクスは既存事業間の「資源配分の優先順位」を示すという点で焦点が異なります。
  • GEビジネススクリーンとの違い:
    GEビジネススクリーンは、BCGマトリクスをより発展させたもので、「市場の魅力度」と「事業の強さ」という、より多面的な評価軸を用います。BCGマトリクスがシンプルで分かりやすい一方、GEビジネススクリーンはより詳細な分析が可能ですが、評価が複雑になるという特徴があります。

ケース面接では、まずシンプルかつ強力なBCGマトリクスを使いこなせることが基本となります。

2. ケース面接でBCGマトリクスが活きるお題の見極め方とポイント

BCGマトリクスは強力なツールですが、万能ではありません。ケース面接でこのフレームワークが有効に機能するお題を見極め、効果的に活用するためのポイントを理解することが重要です。

BCGマトリクスが活きるお題の典型パターン

以下のようなキーワードが含まれるお題では、BCGマトリクスを思考の軸として活用することを検討しましょう。

  1. 「事業ポートフォリオ戦略」「全社戦略」に関するお題
    • お題例:
      • 「多角化経営を行う〇〇社の10年後の成長戦略を考えよ」
      • 「大手電機メーカーA社の事業ポートフォリオを見直し、経営資源の再配分について提言せよ」
    • なぜ活きるか: これらのお題は、まさに複数の事業を持つ企業全体の視点から、どの事業に注力し、どの事業を見直すかという経営資源の最適配分を問うています。これはBCGマトリクスの核心的なテーマと完全に一致します。
  2. 「M&A戦略」「事業売却・撤退」に関するお題
    • お題例:
      • 「食品メーカーB社は、ノンコア事業である化粧品事業を売却すべきか?」
      • 「IT企業C社は、成長領域であるAI事業を強化するため、M&Aを検討している。どのような企業を買収すべきか?」
    • なぜ活きるか: 事業の売却・撤退を検討する際、その事業が「負け犬」や将来性の低い「問題児」に位置づけられるかどうかが重要な判断材料になります。逆に、M&Aによる事業強化を考える際は、「問題児」を「花形」に育てる、あるいは新たな「花形」候補を獲得するという視点で分析できます。
  3. 特定の「成熟市場」や「衰退市場」にいる企業の成長戦略
    • お題例:
      • 「国内市場が縮小する中で、ビールメーカーD社の持続的成長戦略を考えよ」
    • なぜ活きるか: 主力事業が「金のなる木」や「負け犬」に位置づけられる可能性が高い状況です。そこから得られるキャッシュを、どの「問題児」や新たな「花形」候補に投資していくか、という次世代の飯のタネを考える上で、ポートフォリオ全体の視点が不可欠になります。

ケース面接でBCGマトリクスを使う際のポイント

  • フレームワークありきで考えない:
    お題が出された瞬間に「BCGマトリクスを使おう」と飛びつくのは危険です。まずはお題の本質を考え、「このクライアントの根本的な課題は何か?」を問いましょう。その上で、課題を構造的に分析するツールとしてBCGマトリクスが有効だと判断した場合にのみ活用します。
  • 2軸の定義を明確にする:
    • 市場成長率: 何をもって「高い」「低い」とするのか?(例:GDP成長率、業界平均成長率を基準とするなど)
    • 相対的市場シェア: 誰(どの競合)と比較するのか?(例:業界No.1企業との比較、上位3社の平均との比較など)
      面接官にこれらの定義を簡潔に説明し、合意形成を図ることが重要です。
  • 各事業のプロットに論理的根拠を持つ:
    「この事業はなんとなく花形です」では評価されません。「〇〇市場は年率10%で成長しており(市場成長率:高)、クライアントはこの市場でシェアNo.1であることから(相対的市場シェア:高)、花形に位置づけられます」といったように、簡潔な根拠と共に各事業をプロットしましょう。
  • 静的な分析で終わらせない: 各事業を4象限に分類して終わり、ではありません。BCGマトリクスの真価は、そこから動的な示唆を引き出すことにあります。
    • 資源配分の方向性: 金のなる木で得たキャッシュを、どの問題児に集中投資して花形に育てるか?
    • 事業間のシナジー: 花形事業で培った技術やブランドを、他の事業に活かせないか?
    • 将来のポートフォリオ: 3年後、5年後にはどのようなポートフォリオバランスを目指すべきか?
    • 理想的なキャッシュフロー: 各象限の事業が生み出すキャッシュフローのバランスは健全か?

BCGマトリクスは、あくまで企業の現状を整理し、未来の戦略を考えるための「出発点」です。分類から得られる示唆を基に、より深く具体的な戦略議論へと繋げることが求められます。

3. BCGマトリクス活用の罠:ケース面接でやりがちな失敗例

BCGマトリクスは強力なフレームワークですが、そのシンプルさゆえに、使い方を誤ると思考が浅くなり、面接官にマイナスの印象を与えてしまう危険性があります。ここでは、ケース面接でBCGマトリクスを使う際に陥りがちな失敗例とその回避策を解説します。

失敗例1:「とりあえず当てはめ」思考停止型

  • 症状:
    「事業ポートフォリオ」という言葉を聞いた瞬間に、思考停止でBCGマトリクスの4象限を描き始め、「この事業は花形なので投資しましょう」「これは負け犬なので撤退しましょう」と、短絡的な結論に飛びついてしまう。
  • なぜダメなのか:
    これは、フレームワークを思考のツールではなく、思考の代替物として使っている典型例です。なぜその事業がその象限に位置するのか、その背景にある市場環境や競争要因の分析が欠落しています。また、各象限の定石とされる戦略方針(花形→投資、負け犬→撤退)を鵜呑みにし、クライアントの個別事情を考慮していません。面接官からは「思考が浅い」「準備してきたことを話しているだけ」と見なされます。
  • 回避策:
    • WHYから始める: なぜ今、事業ポートフォリオの見直しが必要なのか?クライアントの根本的な課題は何か?(例:全社的な成長鈍化、主力事業の収益性悪化、新規事業の育成失敗など)という問いから思考を始めましょう。
    • 分析の道具として使う: BCGマトリクスは、あくまで現状を整理し、議論すべき論点を特定するためのツールと位置づけます。「なぜこの事業は『問題児』から抜け出せないのか?」「『金のなる木』のキャッシュ創出能力は将来も維持できるのか?」といった、より深い問いを立てるために活用します。

失敗例2:「定義が曖昧」ふわっと分析型

  • 症状:
    「市場成長率」や「相対的市場シェア」の軸を定義しないまま、「この事業は成長してそうなので成長率『高』」「シェアはたぶん2位なので『低』」といったように、感覚的・主観的に事業をプロットしてしまう。
  • なぜダメなのか:
    分析の土台となる軸の定義が曖昧なため、その後の議論全体が砂上の楼閣となります。面接官から「『高い』とは何と比較して高いのですか?」「なぜシェア2位を『低い』と判断したのですか?」と質問された際に、論理的な回答ができずに行き詰まってしまいます。
  • 回避策:
    • 比較対象を明確にする: 面接の冒頭で、「市場成長率については、日本のGDP成長率(例:1%)を基準とし、それを超えるものを『高』とします」「相対的市場シェアは、業界トップ企業のシェアを1とした場合の比率で考えます」のように、測定可能な定義を簡潔に提示し、面接官と目線を合わせましょう。

失敗例3:「静的な分類」で思考終了型

  • 症状:
    各事業を4象限に完璧に分類し、「花形が1つ、金のなる木が2つ、問題児が3つ、負け犬が1つです」と報告して満足してしまう。分類から得られる戦略的な示唆にまで思考が及んでいない。
  • なぜダメなのか:
    BCGマトリクスの目的は、分類すること自体ではなく、分類結果を用いて経営資源の最適配分という未来の意思決定を行うことです。現状分析だけで終わってしまっては、コンサルタントとしての価値を発揮できません。
  • 回避策:
    • キャッシュフローの視点を持つ: 「『金のなる木』が生み出すキャッシュを、どの『問題児』に、どのくらい投資すれば『花形』に育てられるか?」という事業間の資金の流れを意識しましょう。
    • 時間軸を導入する: 「現在のポートフォリオはこうだが、5年後にはどのようなポートフォリオを目指すべきか?」「そのために、今からどの事業をどう動かすべきか?」という動的な視点で戦略を考えましょう。
    • シナジーを考慮する: 「『負け犬』事業でも、撤退すると『花形』事業のブランド価値に悪影響はないか?」「『問題児』の技術を『金のなる木』の製品に応用できないか?」といった、事業間の相互作用(シナジー)にも目を向けましょう。事業は独立して存在するわけではありません。

これらの失敗例を避けるためには、BCGマトリクスを「思考の出発点であり、議論を深めるためのコミュニケーションツール」と正しく位置づけることが不可欠です。

4. 【ケース面接 過去問解説】大手飲料メーカーの事業ポートフォリオ戦略

ここからは、これまでの解説を踏まえ、BCGマトリクスが有効に機能する具体的なケース問題の思考プロセスを、ステップバイステップで解説します。

1. 前提設定、問題の背景の言語化

お題:クライアントは、サントリーホールディングスです。国内市場が成熟する中、今後5年間での持続的な成長を実現するための事業ポートフォリオ戦略を提言してください。

  • 面接官への確認事項(デモ):
    • 「持続的な成長」の定義: 「売上・営業利益ともに年平均成長率で現状以上の成長を目指すことを目標として設定してよろしいでしょうか?」
    • スコープ: 「議論の対象は、サントリーホールディングス全体の事業とし、地域は特に国内市場を主軸に考えます。よろしいでしょうか?」
    • サントリーの現状認識: 「私の認識では、サントリーは酒類(ビール、ウイスキー等)、飲料(清涼飲料水)、食品、その他(健康食品、外食等)の多角的な事業を展開する大手飲料メーカーです。特にウイスキーなどの高価格帯ブランド力に強みがある一方、ビール類では競争が激しく、清涼飲料水市場もコモディティ化が進んでいる、という理解で相違ないでしょうか?」

上記の確認を通じて、議論のゴールとスコープ、そしてクライアントに関する基本的な共通認識を面接官とすり合わせます。これにより、その後の思考が具体的かつ的を射たものになります。

2. 仮説創出のための業界・商材の特徴分析

  • 飲料業界の特性:
    • 市場の成熟: 国内の人口減少・高齢化により、市場全体としては大きな成長が見込みにくい成熟市場。
    • 競争激化: 大手メーカー間の競争に加え、PB商品や異業種からの参入もあり、価格競争が激しい。
    • 消費トレンドの変化: 健康志向(無糖、低カロリー、機能性)、少量・高付加価値志向、アルコール離れ(特に若年層)といったトレンドが顕著。
    • チャネルの重要性: スーパー、コンビニ、自販機、飲食店といった販売チャネルの確保・維持が売上を大きく左右する。
  • サントリーの強み・弱み(推定):
    • 強み:
      • 強力なブランド力(プレミアムモルツ、山崎・白州、BOSS、伊右衛門など)
      • ウイスキー等の高付加価値・高価格帯製品での高い収益性
      • 幅広い製品ポートフォリオ(酒類、飲料、食品)
      • 強固な販売網・マーケティング力
    • 弱み:
      • ビール類市場でのシェア(トップではない)
      • 国内飲料市場全体の成熟による成長の頭打ち懸念
      • 健康志向トレンドへの対応(一部では進んでいるが、主力は既存製品)

これらの分析から、「成熟市場において、どの事業でキャッシュを稼ぎ、どの成長領域に再投資して未来の収益の柱を育てるか」という、まさに事業ポートフォリオの最適化が核心的な課題であると仮説を立てられます。この課題を分析する上で、BCGマトリクスが有効なツールであると判断できます。

3. 論点の構造化:BCGマトリクスによる現状分析

サントリーの主要事業をBCGマトリクスにプロットし、現状のポートフォリオを可視化します。

  • 軸の定義:
    • 市場成長率: 国内市場の今後5年間の年平均成長率を想定。日本のGDP成長率(約1%)を基準とし、3%以上を「高」、1%未満を「低」と設定。
    • 相対的市場シェア: 各市場におけるNo.1企業のシェアを1とした場合の、サントリーのシェア。0.8倍以上を「高」、それ未満を「低」と設定。
事業セグメント市場成長率の根拠
(なぜ高/低か)
相対的シェアの根拠
(なぜ高/低か)
プロット
ウイスキー事業健康志向やハイボール文化で若者需要も取り込み、高価格帯市場は堅調に成長(高)「山崎」「白州」「角瓶」など圧倒的なブランド力でNo.1シェア(高)花形
ビール事業アルコール離れで市場全体は微減〜横ばい。クラフトビール等は伸びるも限定的(低)トップシェアはアサヒ。サントリーは2位以下で、トップ比では低い(低)負け犬
清涼飲料水事業市場全体は横ばい。無糖茶や水は伸びるが、競争激化で市場全体の成長は限定的(低)「伊右衛門」「天然水」「BOSS」など有力ブランドを多数持ち、コカ・コーラと並ぶトップクラスのシェア(高)金のなる木
健康食品事業高齢化と健康志向の高まりを背景に、セサミンEXなどに代表されるウェルネス市場は今後も成長が見込める(高)市場には多数の競合が存在し、サントリーのシェアはまだ限定的(低)問題児

(注: ビール事業を単純に「負け犬」と断定するのは大胆な仮説ですが、ディスカッションのたたき台として、あえてシャープな分類を試みることも有効です。面接官からは「プレモルは好調だが?」といった深掘りが想定されます。)

分析から得られる示唆・論点:

  1. キャッシュ創出エンジン: 「清涼飲料水事業」が安定的なキャッシュを生み出す「金のなる木」である。
  2. 成長ドライバー: 「ウイスキー事業」が現在の成長を牽引する「花形」である。
  3. 将来への投資先: 「健康食品事業」が将来の「花形」候補である「問題児」として存在する。
  4. 課題事業: 「ビール事業」は市場が停滞し、シェアもトップではないため、現状のままでは収益貢献が難しい「負け犬」に位置づけられる。

ここから、「『金のなる木』である清涼飲料水事業で稼いだキャッシュを、『問題児』である健康食品事業に重点的に投資し、次世代の『花形』に育て上げるべきではないか?」 そして 「課題である『ビール事業』は、どう扱うべきか?」 という2つが、議論すべき主要な論点として浮かび上がります。

4. 打ち手

上記で設定した論点に基づき、具体的な施策を提言します。ここでは「ビール事業の扱い」と「健康食品事業の育成」をセットで考えます。

  • 評価軸: 5年後の持続的成長に貢献するか?(①収益性、②成長性、③サントリーの強みとのシナジー)
  • 施策オプション:
    1. ビール事業からの撤退/縮小、健康食品への資源集中: ビール事業への投資を大幅に削減し、その経営資源(人材・資金)を健康食品事業に振り向ける。
    2. ビール事業の再定義と健康食品とのシナジー創出: ビール事業を単なる規模追求から転換し、「健康志向」という軸で健康食品事業とのシナジーを創出する。
    3. 現状維持: 各事業がそれぞれで努力する。
  • スタンスと施策の絞り込み:
    オプション1は、ブランドイメージの毀損や既存チャネルとの関係悪化リスクが大きい。オプション3は、成熟市場でのジリ貧を招くだけで成長戦略とは言えない。よって、オプション2「ビール事業の再定義と健康食品とのシナジー創出」を最も有望な戦略として推奨する。
  • 具体的な施策(How to win):
    • ビール事業の再定義:
      • ターゲット転換: 売上の大きいマス市場ではなく、利益率の高いクラフトビール市場ノンアルコール/微アルコール市場に注力する。
      • 提供価値の転換: 「酔うため」のビールから、「食事を楽しむ」「リラックスする」といった体験価値を提供する高付加価値製品へシフト。「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」のような高価格帯ブランドで培った醸造技術を活かす。
      • 健康志向への接続: プリン体ゼロ・糖質ゼロといった機能性ビールや、健康成分(例:GABA)を配合した「ウェルネスビール」のような新カテゴリーを開発し、「健康食品事業」との技術・マーケティングシナジーを追求する。
    • 健康食品事業の育成:
      • 清涼飲料水事業で稼いだキャッシュを、健康食品事業の研究開発(R&D)とマーケティングに重点投資。
      • サントリーが持つ飲料・食品の販路(スーパー、コンビニ)を活用し、健康食品の顧客接点を拡大。
      • 「ビール(ウェルネスビール)」と「健康食品」を組み合わせたサブスクリプションモデルなどを検討し、クロスセルを促進。
  • リスクと次の一歩:
    • リスク: 新カテゴリー(ウェルネスビール等)が消費者に受け入れられない可能性。既存のビール事業とのカニバリゼーション。
    • 次の一歩(CTA): まずは、ウェルネスビール市場の受容性に関する詳細な消費者調査と、小規模なテストマーケティングを実施し、仮説の精度を検証する。

5. 学びの抽象化、今回の問題を通じて伝えたいこと

  • フレームワークは思考の出発点: BCGマトリクスは、企業の現状を俯瞰し、論点を構造化するためのツールであり、答えそのものではない。分類から得られる示唆を基に、いかに深く具体的な戦略を考えられるかが重要。
  • 静的から動的へ: 各事業を独立した点として捉えるのではなく、事業間のキャッシュフローやシナジー、将来の成長性といった時間軸を考慮した動的なポートフォリオマネジメントの視点が不可欠。
  • 強みを活かした再定義: 「負け犬」と分類された事業でも、安易に撤退を結論づけるのではなく、自社の強みを活かして市場での戦い方や提供価値を「再定義」することで、新たな活路を見出せる可能性がある。

6. 差がつくポイント、元面接官からのコメント

  • 前提設定の質: お題に対して、クライアントの現状や業界トレンドに関する解像度の高い前提を置けているか。特に、サントリーの強み(ウイスキーブランド等)を具体的に認識しているか。
  • プロットの論理: 各事業を4象限にプロットする際に、「なんとなく」ではなく、市場成長率やシェアに関する簡潔かつ説得力のある論拠を示せているか。
  • 示唆の深さ: 分類結果から、単に「花形に投資」という定石に留まらず、「なぜビール事業は負け犬なのか?」「金のなる木のキャッシュ創出力は持続可能か?」といった、クライアントの核心に迫る問いを立てられているか。
  • 打ち手の創造性と具体性: 「ビール事業の再定義」のような、既存の枠組みを超える創造的な提案ができるか。また、その提案が「ウェルネスビール」の開発といった具体的なアクションプランにまで落とし込まれているか。
  • ディスカッションでの柔軟性: 例えば面接官から「ビール事業を負け犬と置いたが、プレミアムビール市場は伸びているのでは?」といった反論をされた際に、固執せずに「おっしゃる通りです。では、ビール事業を『マス市場』と『プレミアム市場』に分けて考えると…」といった形で、議論を通じて思考を柔軟に進化させられるかが、BCGの面接では特に重要になる。

5. まとめ:BCGマトリクスを使いこなし、ケース面接を突破する

本記事では、戦略コンサルティングの古典的かつ強力なフレームワークであるBCGマトリクス(PPM)について、その基本的な考え方から、ケース面接での実践的な活用法、陥りがちな罠、そして具体的な過去問(例題)を用いた思考プロセスまでを徹底的に解説しました。

BCGマトリクス攻略の要点まとめ

  • BCGマトリクスとは?
    • 企業の事業ポートフォリオを「市場成長率」「相対的市場シェア」の2軸で評価し、経営資源の最適配分を考えるためのフレームワーク。
    • 事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4象限に分類する。
  • ケース面接での活かし方:
    • 「事業ポートフォリオ戦略」「全社戦略」「M&A戦略」といった、複数の事業を持つ企業の資源配分を問うお題で特に有効。
    • 思考の出発点として活用し、現状分析から本質的な論点を抽出する。
  • 成功の鍵と失敗の罠:
    • 成功の鍵: ①WHYから思考を始める、②軸の定義を明確にする、③分類に論理的根拠を持つ、④分類後の動的な示唆(キャッシュフロー、シナジー、時間軸)を引き出す。
    • 失敗の罠: ①思考停止での当てはめ、②曖昧な定義での分析、③静的な分類で思考を終えること。

重要なのは、BCGマトリクスを暗記して当てはめることではなく、その背景にある「事業の選択と集中」「資源の最適配分」という経営の原理原則を理解し、お題に応じて柔軟に使いこなすことです。

ケース面接は、あなたが将来コンサルタントとして、クライアントの複雑な経営課題を解決できるポテンシャルを持っているかを見極める場です。BCGマトリクスのようなフレームワークを正しく理解し、思考の武器として使いこなすことで、あなたの論理的思考力、構造化能力、そしてビジネスセンスを面接官に力強く示すことができるでしょう。

この記事が、戦略コンサルへの挑戦に役立つヒントとなれば幸いです。

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最高のケース面接対策プログラムの設計を始めたとき、
我々のチームが最初に考えたのが
「理想的な上達プロセス」についてでした。

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「最短距離で最高峰を目指そう!」と思ったら
どういうやり方をするのが正解なのだろうか?
それについて考えるところから始まりました。

結論、我々が辿り着いた答えは
①学習する:プロから正しく学ぶ
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→①②に戻る
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「理想的な上達プロセス」
なのではないか?ということでした。

そこで、この「理想的な上達プロセス」に沿う形で
さまざまな教材・トレーニングメニューを綿密に設計・用意し
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プログラムの全体像はこちらです。

①正しく学ぶ

Strategistsのオリジナル教材、教科書・動画講座を使って
必要な思考法や知識を体系的にインプットしていただきます。

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②反復練習で定着:課題ケース演習

厳選した良問を、自主課題としてメンターが指定。
時間制限を設けず熟考する形式で自主演習し、
さらに専用フォームに筆記ケース形式でアウトプットしていただきます。
教科書や動画講座で学んだ思考法や知識を思い返しながら
実際の過去問を題材に試行してみる。
あなたの思考力が”変わる・鍛えられる”のが
このトレーニングの役割です。

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③実践&現状把握:模擬ケース面接

専属メンターと模擬面接を実施。
詳細なフィードバックをもらうことで
現状を把握し、弱点・課題を発見できるのはもちろん
内定レベルの解答例や思考のポイントなど
1問を題材に「次に活かせる」学びを詳しく解説します。

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メンタリングの質へのこだわり

皆さんは『メンタリングの質』というものについて考えたことはありますか?我々は『問題を解き→フィードバックをもらい→模範解答を見る』というプロセスを経ての成長幅こそが『メンタリングの質』だと考えています。

『メンタリングの質』はメンターの質はもちろん、扱う問題と模範解答の質によって決まると考えており、我々のサービスでは厳選された問題からしか出題を行いません。メンタリングでの使用を構想してから実際にお客様にお出しする「デビュー」までに数ヶ月かかることも多いです。

我々はケース対策における「良問」を
・得られる学びが深くて多い
・抽象化して次に活かせる普遍性がある
・これまでのお題とも次回以降のお題とも被らない新たな学びがある

と定義しています。各問題が単に「マッキンゼー対策」「公共系」のような表面的なジャンル分けにとどまらず、「BSとPLの構造理解」「”実現可能性とインパクト”の落とし穴」「サブスク事業のキードライバー」など裏テーマが設定してあります。

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大谷

新卒でMBB2社に内定。Strategists卒業生。通常半年から1年ほど対策期間を要する新卒の戦略コンサル就活において、たった3ヶ月で内定を獲得。「内定獲得の秘訣は対策の量ではなく、質である」という考えから、現在は質の高いコンテンツ作成や指導を行っている。

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