「売上向上や市場規模推定といった典型的なケース面接には慣れてきたけれど、もっと複雑で、思考の幅と深さが問われる『発展系』のケース面接はどう対策すればいいのだろう…？」

戦略コンサルティングファーム、特にMBB（マッキンゼー、BCG、ベイン）を目指す皆さんの中には、基本的なケースの練習を重ねる中で、このような新たな課題に直面している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「発展系」と呼ばれるケース面接では、単一のフレームワークに当てはめるだけでは太刀打ちできない、より多角的で本質的な思考力が求められます。業界構造の分析、事業ポートフォリオの見直し、社会課題の解決、あるいは抽象的なお題に対する独自の定義づけと論理展開など、そのテーマは多岐にわたります。

この記事では、ケース面接過去問解説シリーズの第3弾として、やや趣の異なる「海運ビジネスが停滞している要因とその改善施策」という発展的なお題を取り上げ、MBB内定者がどのように思考を組み立て、面接官を唸らせるアウトプットを創出するのか、そのプロセスを徹底的に解説します。

目次

1. 発展系ケース面接とは？その特徴と評価ポイント
2. 【ケース面接 例題解説】「海運ビジネスが停滞している要因とその改善施策」
   • お題の理解と前提確認
   • 「停滞要因」の構造的分析
   • 改善施策の方向性立案と具体化
   • ディスカッションで深掘りされうる論点
3. MBB内定者からのアドバイス：発展系ケースで差をつけるポイント
4. 発展系ケース対策のための効果的なトレーニング方法
5. まとめ：思考の「深さ」と「広さ」を武器に、難関を突破しよう

この記事を通じて、発展系ケース面接への取り組み方を具体的に理解し、皆さんの思考力を一段高いレベルへと引き上げる一助となれば幸いです。

1. 発展系ケース面接とは？その特徴と評価ポイント

まず、「発展系ケース面接」とはどのようなものを指すのか、その特徴と、面接官がどこを見ているのか（評価ポイント）を明確にしておきましょう。

発展系ケース面接の主な特徴：

• お題の抽象度・複雑性が高い:
  「〇〇業界の10年後の姿は？」「日本の観光立国としての課題と施策は？」「〇〇という社会課題を解決するには？」など、売上向上といった具体的なビジネス課題よりもスコープが広く、定義が曖昧なお題が多い傾向にあります。
• 複数の論点が絡み合う:
  経済、社会、技術、地政学リスクなど、様々な外部環境要因や、業界構造、バリューチェーン、ステークホルダーの利害関係といった内部要因が複雑に絡み合っている場合が多いです。
• 定型的なフレームワークが通用しにくい:
  3C分析や4P分析といった基本的なフレームワークは思考の整理には役立ちますが、それだけでは本質的な課題特定や創造的な解決策の立案には至らないことが多いです。お題に合わせた独自の構造化や思考の枠組みを構築する能力が求められます。
• 思考の「深さ」と「広さ」が問われる:
  表面的な事象にとらわれず、問題の根本原因や構造を深く掘り下げる力。そして、多様な視点から可能性を検討し、幅広い選択肢の中から最適な解を導き出す力が試されます。
• 「なぜそう考えるのか？」という論理の強度がより重要に:
  明確な「正解」がないお題が多いため、結論そのものよりも、そこに至るまでの思考プロセス、仮説の質、論拠の確かさ、そしてそれを説得力を持って説明する能力が極めて重要になります。

発展系ケース面接における主な評価ポイント：

1. 課題設定能力・定義力:
   • 曖昧なお題に対して、何を問題とし、何をゴールとするのかを明確に定義し、議論のスコープを設定できるか。
   • 複雑な事象の中から、本質的な論点を見抜き出すことができるか。
2. 構造化能力・全体観:
   • 多岐にわたる情報を整理し、問題の全体像をMECE（モレなくダブりなく）かつ意味のある切り口で構造化できるか。
   • マクロ（外部環境）とミクロ（個別企業・事象）の視点を行き来しながら、大局的な観点から問題を捉えられるか。
3. 仮説構築力と分析力:
   • 限られた情報の中でも、「筋の良い仮説」を立て、それを検証するための分析の方向性を示せるか。
   • 業界構造分析（例：ファイブフォース）、バリューチェーン分析、SWOT分析などのツールを適切に活用し、深い洞察を引き出せるか。
4. 創造性と発想力:
   • 既存の枠組みにとらわれず、新しい視点や斬新なアイデアを生み出せるか。
   • 複数の選択肢を幅広く検討し、その中から実現可能性とインパクトを考慮した最適な打ち手を提案できるか。
5. 論理的思考力とコミュニケーション能力:
   • 自分の思考プロセスを、相手に分かりやすく、論理的に一貫性を持って説明できるか。
   • 面接官とのディスカッションを通じて、自分の考えを深めたり、建設的な議論を展開したりできるか。
   • プレッシャーの中でも冷静さを保ち、思考を整理しながら応答できるか。
6. 知的好奇心とビジネスへの関心:
   • 社会や経済の動向、新しい技術やビジネスモデルに対する幅広い関心と理解があるか。
   • 与えられた情報だけでなく、自ら積極的に知識を吸収し、思考に活かそうとする姿勢があるか。

発展系ケース面接は、まさにコンサルタントに求められる総合的な「地頭の良さ」と「思考体力」を試す場と言えるでしょう。続いて、具体的な例題を通じて、これらのポイントをどのように実践していくのかを見ていきます。

2. 【ケース面接 例題解説】「海運ビジネスが停滞している要因とその改善施策」

それでは、発展系ケースの具体的な例題として、「海運ビジネスが停滞している要因とその改善施策」について、思考プロセスと解答のポイントを解説していきます。

お題：世界の海運ビジネスは、近年停滞していると言われています。その主な要因を構造的に分析し、日本の大手海運会社が取るべき改善施策を提案してください。（思考時間：15分程度、ディスカッション形式を想定）

ステップ1：お題の理解と前提確認（思考時間：〜2分）

まず、お題に含まれるキーワードの定義とスコープを明確にします。発展系ケースでは、ここでの認識合わせが特に重要です。

• 「海運ビジネス」の範囲:
  • 何を運ぶのか？: コンテナ船（完成品、部品など）、バルク船（鉄鉱石、石炭、穀物など）、タンカー（原油、LNGなど）、自動車専用船、不定期船など、対象とする貨物の種類は多岐にわたる。どのセグメントに焦点を当てるか、あるいは全体を俯瞰するか？
    • 今回は「日本の大手海運会社」が対象であり、彼らは多角的なポートフォリオを持っている可能性が高い。まずは全体を俯瞰しつつ、特に影響の大きそうなセグメントがあれば深掘りするスタンスで臨む。
  • 誰がプレイヤーか？: 日本の大手3社（日本郵船、商船三井、川崎汽船など）、海外の大手（マースク、MSC、CMA CGMなど）、その他の中小プレイヤー。
• 「停滞している」の定義:
  • 何を指して停滞か？: 売上成長率の鈍化か、利益率の低下か、あるいはその両方か？ 輸送量の伸び悩みか？
    • 今回は「売上成長率の鈍化と利益率の不安定さ」を主な停滞の指標と仮定する。
  • いつから？: 「近年」とは具体的にどの程度の期間を指すか？ （例：リーマンショック後、コロナ禍前後など、大きな経済変動期を意識）
    • 今回は特に指定がないため、過去5〜10年程度のトレンドを念頭に置く。
• 「日本の大手海運会社」の特定:
  • 特定の企業名（例：日本郵船）を想定するか、業界全体として捉えるか。
    • お題は「日本の大手海運会社が取るべき」なので、共通して取りうる戦略を考える。ただし、具体的な施策レベルでは、各社の強み・弱み（例：コンテナ事業への依存度、非海運事業の比率など）を考慮する必要が出てくる可能性を示唆。
• 「改善施策」のゴール:
  • 停滞からの脱却、すなわち持続的な成長軌道への回帰と収益性の向上をゴールとする。

面接官への確認・宣言（例）：
「本日は、世界の海運ビジネスが近年、売上成長率の鈍化や利益率の不安定さといった形で停滞している要因を分析し、日本の大手海運会社（例：日本郵船、商船三井、川崎汽船など）が取るべき、持続的成長と収益性向上に繋がる改善施策を提案するという理解でよろしいでしょうか？要因分析では、まずマクロ環境から構造的な要因を探り、その後、具体的な改善施策について検討したいと思います。」

ステップ2：「停滞要因」の構造的分析（思考時間：〜6分）

海運ビジネスの停滞要因を、外部環境要因（マクロ環境、需要サイド）と内部環境要因（業界構造、供給サイド）に大きく分けて構造化し、分析を進めます。以下ではさまざまな要因を構造化して出しています。本番ではまとまった思考時間が取れない場合もあるので、その場合は面接官とディスカッションベースでいかに出すような幅広い要因分析ができればokです。

• A. 外部環境要因（コントロールしにくい要因）
  1. 世界経済の成長鈍化・不安定化:
     • 貿易量の伸び悩み: 世界GDP成長率と貿易量の相関は高い。近年の地政学リスク（米中対立、ウクライナ情勢など）、保護主義の台頭、パンデミックの影響などで、世界経済全体の成長が不安定化し、貿易量の伸びが鈍化している。
     • 需要変動の増大: 特定地域での紛争や自然災害、経済制裁などが、特定の航路や品目の需要を急激に変動させるリスク。
  2. 荷主（顧客）の構造変化と交渉力増大:
     • 製造業のグローバルサプライチェーン再編: 中国一極集中からの分散（ニアショアリング、フレンドショアリング）の動きは、航路や輸送量に影響。
     • 荷主企業の集約化・巨大化: 大口荷主（例：大手小売、自動車メーカー）の交渉力が増し、運賃価格へのプレッシャーが強まっている。
     • Eコマースの拡大: 小口・多頻度輸送のニーズが増える一方、物流の最適化・効率化要求も高まる。
  3. 環境規制の強化:
     • IMO（国際海事機関）による温室効果ガス（GHG）排出規制強化（例：EEXI、CIIレーティング）は、既存船の運航効率改善や新燃料船への投資を不可避にし、コスト増要因となる。
     • 寄港地ごとの環境規制（例：硫黄酸化物排出規制）も厳格化。
  4. 地政学リスクとサプライチェーンの分断:
     • 特定航路の通航リスク（例：紅海、台湾海峡）。
     • 経済安全保障の観点からの特定国・地域への依存度見直し。
• B. 内部環境要因（業界構造・競争要因）
  1. 供給過剰と運賃市況のボラティリティ:
     • 過去の好況期における大量発注による船腹量の供給過剰が、需給バランスを崩し、運賃低迷の構造的要因となっている（特にコンテナ船）。
     • 運賃市況は需要と供給のわずかな変動で大きく上下し、収益の予測が困難。コロナ禍でのコンテナ運賃高騰とその後の急落はその典型。
  2. 高い固定費構造と価格競争:
     • 船舶建造・購入費、燃料費、人件費など固定費の割合が高く、損益分岐点が高い。
     • 船腹が余ると、固定費回収のために安値でも受注せざるを得ず、価格競争に陥りやすい（コモディティ化しやすい）。
  3. アライアンス（海運同盟）の功罪:
     • コンテナ船業界では、大手船会社によるアライアンス（例：2M、オーシャンアライアンス、ザ・アライアンス）が形成され、航路の共同運航や船腹共有により効率化を図っている。
     • 一方で、アライアンス内の調整や競争当局からの監視も存在し、自由な経営判断を制約する側面もある。過度な寡占による弊害も指摘される。
  4. DX（デジタルトランスフォーメーション）の遅れ（他業界比）:
     • 伝統的な業界であり、予約、運航管理、書類手続きなど、デジタル化による効率化の余地が大きい部分が依然として残っている。
     • リアルタイムな貨物追跡、サプライチェーン全体の可視化、AIによる最適配船など、技術革新のポテンシャルは高いが、業界全体の標準化や投資負担が課題。
  5. 人材確保・育成の困難さ:
     • 船員の高齢化と若手船員の不足。
     • 陸上でも、DX推進や新規事業開発を担える専門人材の獲得競争。

分析のポイントと深掘り:

• 各要因の相互関連性: 例えば、環境規制強化（外部）は新燃料船への投資を促し、それが供給過剰（内部）を助長する可能性もあれば、旧式船の早期退役を促して供給を絞る可能性もある、といった繋がりを意識する。
• 「停滞」へのインパクトの大きさ: 上記要因の中で、特に海運ビジネス全体の成長を阻害し、収益性を不安定にしているのは何か？ BCGのケースでは、この「本質的な課題は何か？」という論点の優先順位付けが重要になる。 今回の場合、「世界経済の変動と連動する需要の不安定さ」と「供給過剰体質とそれによる市況のボラティリティ」が構造的な根深さから特に重要だと考えられる。環境規制やDXの遅れは、それに拍車をかける要因と位置づけられる。

ステップ3：改善施策の方向性立案と具体化

ステップ2で分析した「停滞要因」を踏まえ、日本の大手海運会社が取るべき改善施策の方向性を考案し、具体化します。施策は、「短期的に着手可能で効果が見込めるもの」と「中長期的な視点で構造改革を目指すもの」に大別して考えると整理しやすいです。

また、施策の方向性としては、①コスト競争力強化・効率化、②収益安定化・高付加価値化、③新規成長領域の開拓、などが考えられます。

A. コスト競争力強化・効率化

1. 運航効率の最大化:
   • DX活用: AIによる最適航路選定、燃料消費量最適化、寄港地での荷役時間短縮のためのデータ分析と予測。
   • 船隊最適化: 老朽船の早期退役と燃費効率の良いエコシップへの代替。船型・船種のポートフォリオ見直しによる需要変動への柔軟な対応。
   • 共同運航・アライアンスの深化: 既存アライアンス内での更なる効率化（例：空きスペースの相互融通最適化）、あるいは特定航路における他社との戦略的提携。
2. 陸上オペレーションの効率化:
   • 業務プロセスの標準化・自動化: 予約、書類作成、顧客対応など、定型業務のRPA等による自動化。基幹システムの刷新とクラウド化。
   • グローバル拠点網の最適化: 機能集約やアウトソーシングによる固定費削減。

B. 収益安定化・高付加価値化

1. 運賃安定化への取り組み:
   • 長期契約の推進: 大口荷主との間で、複数年契約や数量コミットメント契約を推進し、市況変動の影響を受けにくい収益基盤を構築。
   • フレートフォワーダー機能の強化: 単なるスペース販売だけでなく、ドア・ツー・ドアの一貫輸送や、通関、倉庫保管、保険などの付加価値サービスを組み合わせることで、価格競争から脱却。
2. 高付加価値貨物へのシフト・専門特化:
   • リーファー（冷蔵・冷凍）コンテナ輸送の強化: 医薬品、生鮮食料品など、高度な温度管理が求められ、運賃も比較的高く安定している分野への注力。
   • 特殊貨物輸送のノウハウ蓄積: 重量物、危険物、プロジェクトカーゴなど、専門的な技術や設備が必要なニッチ市場での競争力強化。
   • 環境対応輸送ソリューションの提供: グリーン燃料船による低排出輸送サービスをプレミアム価格で提供。荷主企業のESG経営への貢献を訴求。
3. 顧客エンゲージメント強化:
   • サプライチェーン可視化プラットフォームの提供: 荷主に対し、貨物のリアルタイム追跡情報、到着予測精度向上、輸送中の環境負荷データなどを提供し、顧客体験価値を向上させる。
   • コンサルティングサービスの展開: 荷主のサプライチェーン全体の最適化を支援するコンサルティングを提供し、単なる輸送業者からの脱却を目指す。

C. 新規成長領域の開拓

1. 非海運事業の強化・多角化:
   • 物流周辺事業の拡大: 倉庫、陸上輸送、港湾ターミナル運営など、海運とシナジーのある陸上物流事業を強化。M&Aも視野。
   • エネルギー関連事業: LNG輸送で培った知見を活かし、洋上風力発電の設置・保守支援船事業、水素・アンモニア等の次世代エネルギー輸送への早期参入。
   • 不動産・客船事業など: 既存アセットの有効活用や、ブランド力を活かした新たな収益源の模索。
2. DXを活用した新規サービス開発:
   • 海事データプラットフォーム事業: 収集・分析した運航データ、市況データ、環境データを外部に販売・提供する。
   • 船舶向けIoTソリューション開発: 船舶の遠隔監視、予知保全サービスなどを開発し、他の船会社にも提供。

施策選定のポイント:

• 「日本の大手海運会社」の強みを活かせるか？ (例: 技術力、資金力、グローバルネットワーク、既存顧客基盤)
• 「停滞要因」の根本解決に繋がるか？ (例: 運賃ボラティリティへの対応、供給過剰体質からの脱却)
• 実現可能性とインパクトのバランス
• 競合との差別化

ステップ4：ディスカッションで深掘りされうる論点

• 各施策の優先順位付けとその理由: どの施策から着手し、どのような時間軸で進めるべきか。
• 施策実行の具体的なハードルと、その乗り越え方: (例: DX推進における組織文化の壁、新燃料導入のコストとインフラ整備)
• アライアンス戦略の是非: 既存アライアンスを強化すべきか、あるいは独自路線を模索すべきか。
• 環境規制への具体的な対応策: どの新燃料に投資すべきか（LNG、メタノール、アンモニア、水素など）、その判断基準は？
• 非海運事業への多角化のリスクとリターン: コア事業とのシナジー、必要なケイパビリティ、投資規模など。
• 日本の海運会社がグローバルで勝つための独自の強みとは何か？

BCGのケース面接では、これらの論点について、面接官と活発なディスカッションを交わしながら、思考を深めていくことが求められます。では、発展系ケースで差をつけるためには、どのようなポイントを意識すれば良いのでしょうか。次の章でMBB面接官からのアドバイスをご紹介します。

3. MBB面接官からの一言アドバイス：発展系ケースで差をつけるポイント

発展系ケース面接は、思考の自由度が高い分、候補者の「地力」が試されます。典型的な売上向上ケースとは異なる視点や深掘りが求められる中で、他の候補者と差をつけるためのポイントをいくつかご紹介します。

• 1. 「なぜ今、このお題なのか？」という背景を洞察する
  面接官がこのお題を選んだのには、何かしらの意図があるはずです。例えば、「海運ビジネス」であれば、近年のサプライチェーン混乱、地政学リスクの高まり、脱炭素化の潮流といった社会経済的な背景を念頭に置いている可能性があります。お題の背景にある「時代の要請」や「業界の大きな転換点」を意識することで、より本質的で示唆に富む議論が展開できます。
• 2. 構造化の「切り口」に独自性と意味を持たせる
  MECEであることは基本ですが、発展系ケースでは「なぜその切り口で構造化したのか」という意図がより重要になります。例えば、海運ビジネスの停滞要因を分析する際に、単に「需要と供給」で分けるだけでなく、「短期要因と長期要因」「コントロール可能要因と不可能要因」「ハード要因とソフト要因」など、問題の本質を捉えるための独自の切り口を提示できると、思考の深さを示すことができます。
• 3. 「時間軸」と「ダイナミズム」を意識する
  特に業界構造の変化や長期的な戦略を問うお題では、現状分析だけでなく、過去から現在に至る変化のトレンドを捉え、将来どのように変化していくのか（ダイナミズム）を予測する視点が重要です。施策を提案する際も、短期的な応急処置と、中長期的な構造改革を区別し、それぞれの時間軸で効果を発揮する打ち手を組み合わせることが求められます。
• 4. 複数の「シナリオ」を想定する柔軟性を持つ
  未来予測を含むお題や、外部環境の不確実性が高いお題では、単一の結論に固執するのではなく、複数の起こりうるシナリオを想定し、それぞれのシナリオに応じた打ち手を準備しておく柔軟性が評価されます。例えば、「もし〇〇という技術革新が起きたら」「もし△△という規制が導入されたら」といった条件分岐を考慮できると、思考の幅広さを示せます。
• 5. 「トレードオフ」を明確にし、意思決定の軸を示す
  多くの場合、施策にはメリットとデメリット（トレードオフ）が存在します。例えば、「コスト削減」と「サービス品質向上」は両立が難しい場合があります。複数の選択肢がある中で、何を優先し、何を犠牲にするのか、その判断軸（クライアントの経営理念、事業目標など）を明確に示すことで、戦略的な思考力をアピールできます。
• 6. ディスカッションを「壁打ち」の機会と捉え、思考を進化させる
  発展系ケースでは、面接官も明確な「正解」を持っているわけではありません。むしろ、候補者とのディスカッションを通じて、新たな視点や気づきを得たいと考えている場合があります。面接官からの質問や指摘を、単なる「評価」と捉えるのではなく、自分の思考を深め、より良い結論にたどり着くための「壁打ち」の機会と捉え、積極的に対話し、思考を進化させていく姿勢が重要です。

これらのポイントを意識することで、面接官に良い印象を与えることができるでしょう。では、具体的にどのようなトレーニング方法が効果的なのでしょうか。次の章で見ていきましょう。

4. 発展系ケース対策のための効果的なトレーニング方法

発展系ケース面接に対応できる思考力を養うためには、一朝一夕の対策では不十分です。日々の意識と、質の高いトレーニングが不可欠です。

• 1. ニュースや業界レポートに対する「なぜ？」「だから何？」「他にないか？」の習慣化:
  日頃から、新聞、経済ニュース、業界レポートなどに目を通し、単に情報をインプットするだけでなく、「なぜこの事象が起きているのか？（背景・要因分析）」「この事象から何が言えるのか？（示唆の抽出）」「では、どうすべきか？/他にどんな可能性があるか？（打ち手・展開の考察）」といった問いを自分に投げかけ、思考する癖をつけましょう。
• 2. 抽象的なテーマに関するディスカッション:
  友人や勉強仲間と、「日本の生産性を上げるには？」「地方創生を成功させるには？」といった抽象的なテーマについて、時間を区切ってディスカッションする練習は非常に有効です。多様な意見に触れ、自分の思考の偏りに気づき、論理的に反論したり、合意形成を図ったりする訓練になります。
• 3. 多様な業界・テーマのケース演習:
  特定の業界や問題タイプに偏らず、幅広いテーマの発展系ケース問題に取り組むことが重要です。過去問だけでなく、コンサルティングファームが公開しているレポートや書籍などから、現代的な課題をケースとして設定し、自分で解いてみるのも良いでしょう。
• 4. 「構造化」と「言語化」の反復練習:
  複雑な情報を整理し、自分の思考を分かりやすく相手に伝えるためには、構造化とそれを的確に言語化する能力が不可欠です。考えたことを図やマインドマップに落とし込んだり、声に出して説明したりする練習を繰り返しましょう。
• 5. 模擬面接と質の高いフィードバック:
  これが最も効果的なトレーニング方法です。経験豊富な面接官役（できればコンサル経験者）に、本番さながらの環境で評価してもらい、具体的なフィードバック（思考の深さ、構造化の適切さ、コミュニケーションの課題など）を受けることで、自分の強みと弱みを客観的に把握し、改善に繋げることができます。Strategistsのような専門の対策塾を活用するのも有効です。
• 6. 読書を通じた思考の引き出しの拡充:
  経営戦略、経済学、歴史、社会学、テクノロジーなど、幅広い分野の書籍を読むことで、思考の引き出しが増え、多角的な視点や発想力が養われます。特に、物事の構造や本質を捉えるのに役立つ古典や名著に触れることは重要です。

地道な努力の積み重ねが、発展系ケース面接を突破するための確かな力となります。最後に、本記事のまとめとして、難関を突破するための要点をお伝えします。

5. まとめ：思考の「深さ」と「広さ」を武器に、難関を突破しよう

発展系ケース面接は、戦略コンサルタントに求められる高度な思考力、分析力、創造性、そしてコミュニケーション能力を総合的に試す、まさに選考の集大成とも言える関門です。

今回取り上げた「海運ビジネス」の例題のように、一見すると捉えどころのない複雑なお題に対しても、

1. お題を正確に理解し、前提を固める
2. 多角的な視点から要因を構造的に分析する
3. 本質的な課題を見抜き、創造的かつ実現可能な改善施策を立案する
4. 面接官とのディスカッションを通じて、思考を深め、進化させる

というプロセスを、論理的かつ柔軟に実行できるかが問われます。

そのためには、日頃から社会やビジネスに対する知的好奇心を持ち続け、物事の本質を深く考える習慣を身につけることが不可欠です。そして、質の高いケース演習と模擬面接を通じて、その思考力を実践的なスキルへと昇華させていく必要があります。

Strategistsでは、まさにこのような発展系ケースにも対応できる、本質的な思考力と応用力を鍛えるためのノウハウとサポート体制を提供しています。MBB内定という目標に向けて、ぜひ私たちと一緒に、思考の「深さ」と「広さ」を磨き上げていきましょう。