「戦略コンサルティングファームのケース面接って、企業の売上向上とか市場規模推定だけじゃないの?」
「公共政策や社会課題に関するお題が出たら、どう考えればいいんだろう…? 企業戦略とは違う視点が必要?」
戦略コンサル、特にMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)を目指す皆さんにとって、ケース面接は避けて通れない関門です。これまでのシリーズでは、企業のビジネス戦略に関するケースを取り上げてきましたが、今回は少し毛色の異なる「公共系・社会課題解決型」のケース面接に挑戦します。
この記事では、実際にMBBの内定を獲得した筆者が、過去に出題された公共系のケース面接問題(今回は「日本のIT産業のグローバルポジションと課題」を題材とします)を取り上げ、その思考プロセスや分析のポイント、そして企業戦略とは異なる公共系ケース特有の注意点を、ステップバイステップで徹底解説します。
単に一企業の利益を追求するのではなく、国全体の産業競争力や、より広い視点での社会全体の厚生(Welfare)までをも視野に入れる必要があるこの種の問題は、あなたの構造的思考力、多角的な視点、そして社会課題に対する深い洞察力を試すものです。
本記事で扱うケース面接問題:
- 日本のIT産業は現在グローバルにおいてどのようなポジションか?
- なぜ日本のIT産業は世界トップに立てないのか?
目次
- 公共系ケース面接とは?ビジネスケースとの違いと特有の難しさ
- 【ケース面接 題材分析】「日本のIT産業」の現状と構造
- 【過去問解説①】日本のIT産業のグローバルポジション分析
- 前提確認と「IT産業」「グローバルポジション」の定義
- 分析の切り口(セグメント別、バリューチェーン別、指標別など)
- 情報収集の代替としての仮説構築と論点整理
- ポジション評価と根拠の明確化
- 【過去問解説②】なぜ日本のIT産業は世界トップに立てないのか?(原因分析)
- 歴史的経緯、産業構造、人材、政策、文化など多角的な要因の洗い出し
- 各要因の因果関係とボトルネックの特定
- 本質的な課題の絞り込み
- ディスカッションのポイント
- 公共系ケース面接特有の注意点とMBB面接官からのアドバイス
- まとめ:巨視的かつ構造的な分析で、社会課題への洞察力を示す
それでは、まず「公共系ケース面接」とは何か、その特徴とビジネスケースとの違いから見ていきましょう。
1. 公共系ケース面接とは?ビジネスケースとの違いと特有の難しさ
ケース面接と聞くと、多くの人が「企業の売上向上策」や「新規事業立案」といったビジネスケースを思い浮かべるかもしれません。しかし、戦略コンサルティングファーム、特にMBBでは、政府や国際機関、非営利団体などをクライアントと想定した、いわゆる「公共系・社会課題解決型」のケースが出題されることも少なくありません。
公共系ケース面接の主な特徴:
- クライアントが企業ではないことが多い:
- 政府(中央省庁、地方自治体)、国際機関、業界団体、NPO/NGOなどがクライアントとして設定されます。
- そのため、追求する目的が「利益最大化」とは限らず、「国民全体の厚生向上」「社会課題の解決」「特定政策目標の達成」など、より公益性の高いものとなります。
- 扱うテーマがマクロで複雑:
- 「日本の少子化対策」「地方創生」「医療制度改革」「環境問題」など、一国の政策や社会システム全体に関わるような、非常に規模が大きく、多様な要因が複雑に絡み合うテーマが扱われます。
- ステークホルダーが多岐にわたる:
- 企業ケース以上に、多様な立場の人々(国民、企業、業界団体、専門家、官僚、政治家など)が関与し、それぞれの利害が対立することもあります。これらのステークホルダー間の調整や合意形成の視点も重要になります。
- 評価指標が金銭的価値だけではない:
- 施策の評価は、経済的効果だけでなく、社会的効果(例:公平性、安全性、環境負荷低減)、持続可能性、国民の受容度など、多面的な指標で行われる必要があります。
- 時間軸が長期にわたることが多い:
- 社会システムや国民意識の変革には時間がかかるため、短期的な成果だけでなく、10年、20年といった長期的な視点での戦略やロードマップが求められることがあります。
- 「べき論」と「実現可能性」のバランス:
- 理想論としての「こうあるべきだ」という提言と、財政的制約、法的規制、政治的実行可能性といった現実的な制約条件を踏まえた上での「実現可能な打ち手」とのバランスが重要になります。
ビジネスケースとの主な違いと特有の難しさ:
観点 | ビジネスケース(企業戦略) | 公共系ケース(公共政策・社会課題) |
---|---|---|
目的 | 利益最大化、企業価値向上など、比較的明確で定量的 | 国民全体の厚生向上、社会課題解決など、多面的で定性的な要素も含む |
クライアント | 民間企業 | 政府、国際機関、NPO/NGOなど |
スコープ | 特定の企業や業界に限定されることが多い | 国全体、社会システム全体など、非常に広範でマクロなことが多い |
ステークホルダー | 株主、従業員、顧客、競合など、比較的限定的 | 国民、多様な業界、省庁、政治家、専門家など、非常に多岐にわたり、利害が複雑 |
評価指標 | 売上、利益、市場シェアなど、主に経済的指標 | 経済的効果に加え、社会的効果、公平性、持続可能性、国民感情なども考慮 |
時間軸 | 数ヶ月~数年の中期的な戦略が多い | 数年~数十年単位の長期的な視点が求められることが多い |
制約条件 | 経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)、市場環境など | 財政、法律、政治的実行可能性、国民感情、国際関係など、より複雑で多岐にわたる |
「正解」の曖昧さ | 比較的論理的に最適解を導きやすい場合がある | 「唯一の正解」が存在せず、多様な価値観の中での合意形成が求められることが多い |
これらの違いから、公共系ケース面接では、ビジネスケースとは異なるアプローチや思考の重点が求められます。単に企業の成功事例やフレームワークを当てはめるだけでは通用せず、社会全体を俯瞰する視野の広さ、多様な価値観を理解する共感力、そして現実的な制約の中で最善を追求するバランス感覚が試されると言えるでしょう。
次の章では、今回の題材である「日本のIT産業」について、その現状と構造を分析していきます。
2. 【ケース面接 題材分析】「日本のIT産業」の現状と構造
公共系のケース面接、特に特定の産業の国際競争力や課題を問うようなお題では、まずその産業の現状と構造を大まかにでも把握することが不可欠です。今回のテーマは「日本のIT産業」。非常に広範で多岐にわたるため、どこに焦点を当てて分析するかが重要になります。
「IT産業」の定義と範囲の確認:
まず、「IT産業」という言葉が何を指すのか、その範囲を明確にする必要があります。IT産業は非常に裾野が広く、様々なセグメントを含んでいます。
- ハードウェア:
- コンピュータ(PC、サーバーなど)
- 半導体・電子部品
- 通信機器(スマートフォン、ネットワーク機器など)
- その他IT関連機器(プリンター、ストレージなど)
- ソフトウェア:
- OS、ミドルウェア
- 業務アプリケーション(ERP、CRM、SCMなど)
- パッケージソフト(オフィスソフト、セキュリティソフトなど)
- ゲームソフト
- ITサービス・情報通信サービス:
- システムインテグレーション(SI)、受託開発
- ITコンサルティング
- データセンターサービス、クラウドサービス(IaaS, PaaS, SaaS)
- インターネット関連サービス(ポータル、EC、SNS、動画配信など)
- 通信キャリアサービス(固定電話、携帯電話、インターネット接続など)
面接官とのすり合わせの重要性:
これら全てを網羅的に議論するのは現実的ではありません。面接の冒頭で、「本日は特にどの分野のIT産業に焦点を当てて議論しましょうか?」あるいは「IT産業全体を俯瞰しつつも、特に日本の強み・弱みが顕著な分野を重点的に分析するという進め方でよろしいでしょうか?」といった形で、面接官と議論のスコープをすり合わせることが極めて重要です。
もし特定の指示がなければ、「ハードウェア製造」「ソフトウェア開発(特にエンタープライズ向けとコンシューマ向け)」「ITサービス・プラットフォーム」といった大まかな分類で捉え、それぞれにおける日本の特徴を考えるのが一つのアプローチです。
日本のIT産業の現状に関する一般的な認識(仮説ベース):
ここでは、詳細なデータなしに、一般的なイメージやニュース報道などから想定される日本のIT産業の現状について、いくつかの仮説を立ててみます。
- ハードウェア分野の盛衰:
- かつての強み: 半導体、家電、PCなどの分野で世界をリードしていた時代があった(例:ソニー、パナソニック、東芝、NEC、富士通など)。高品質な「メイド・イン・ジャパン」のブランド力。
- 現状の課題: 国際競争の激化(特に韓国、台湾、中国メーカーの台頭)、価格競争、自前主義の限界、意思決定の遅れなどにより、多くの分野でグローバルシェアを失い、苦戦を強いられている。ただし、特定の部品や素材、製造装置など、ニッチな分野で高い技術力を持つ企業は依然として存在する。
- ソフトウェア分野の課題:
- エンタープライズ向け(BtoB): 大企業向けのカスタムメイドのシステム開発(SI)が主流。多重下請け構造やレガシーシステムの維持・保守に多くのリソースが割かれ、イノベーションが生まれにくい構造的課題を抱えている。パッケージソフト市場では海外製品(Microsoft, SAP, Oracleなど)のシェアが高い。
- コンシューマ向け(BtoC): ゲームソフト分野では世界的に高い競争力を持つ企業(任天堂、ソニー・インタラクティブエンタテインメントなど)が存在する。一方で、OSや汎用アプリケーション、SNSなどのプラットフォーム分野では、米国巨大IT企業(GAFAMなど)に大きく水をあけられている。
- ITサービス・プラットフォーム分野の状況:
- SIerの存在感: 大手SIerが企業の情報システム構築・運用を長年支えてきたが、クラウド化の進展や内製化の動きの中で、そのビジネスモデルの変革が求められている。
- クラウドサービス: AWS、Microsoft Azure、Google Cloudといった海外勢の寡占状態。国産クラウドの育成が課題。
- インターネット関連サービス: 国内市場では独自のサービス(例:楽天、Yahoo! JAPAN、LINE、メルカリなど)が一定の成功を収めているが、グローバル展開で苦戦するケースが多い。GAFAMのような世界的なプラットフォーマーは生まれていない。
- 人材面の課題:
- IT人材の不足: 特に先端IT人材(AI、データサイエンティスト、サイバーセキュリティ専門家など)の不足が深刻。
- 人材の流動性の低さ: 大企業中心の雇用慣行や、ITエンジニアのキャリアパスの魅力不足などが指摘される。
- 教育システム: 実践的なITスキルを学べる教育機関やプログラムの不足。
- 産業構造・エコシステムの問題:
- 大企業中心・系列構造: 新興企業やスタートアップが育ちにくい環境。リスクマネーの供給不足。
- オープンイノベーションの遅れ: 産学官連携や企業間連携が欧米に比べて活発でない。
- 「失われた数十年」の影響: 長期的な経済停滞の中で、IT分野への大胆な投資やリスクテイクが難しかった。
これらの仮説は、あくまで一般的な認識であり、面接の場では「なぜそう言えるのか?」「具体的なデータや事例は?」といった深掘りが予想されます。そのため、自分の知識や経験に基づいて、これらの仮説に肉付けをしていく必要があります。
分析の視点(今後の議論に向けて):
- 強みと弱み: 日本のIT産業が持つ競争優位性は何か?逆に、グローバルで戦う上でのボトルネックは何か?
- 機会と脅威: 今後、日本のIT産業にとってどのような成長機会があるのか?また、どのような脅威に直面しているのか?
- 国際比較: 米国、中国、韓国、インドなど、他のIT先進国・新興国と比較して、日本の立ち位置はどうなっているのか?
これらの現状分析を踏まえ、次の章では「日本のIT産業のグローバルポジション」を具体的に評価します。
3. 【過去問解説①】日本のIT産業のグローバルポジション分析
前章では、日本のIT産業の現状と構造について、大まかな仮説を立てました。ここからは、ケース面接のお題「日本のIT産業は現在グローバルにおいてどのようなポジションか?」に対する思考プロセスと解答のポイントを解説します。
このお題では、単に「強い」「弱い」といった印象論で語るのではなく、具体的な評価軸を設定し、それに基づいて日本のIT産業の立ち位置を多角的に分析・評価することが求められます。
ステップ1:前提確認と「IT産業」「グローバルポジション」の定義(再確認と深掘り)
- 「IT産業」のスコープ(再確認):
- 前章で触れたように、IT産業は非常に広範です。面接官に「本日はIT産業のどのセグメントに注目して議論しましょうか?」と問いかけ、議論の焦点を絞ることが重要です。
- もし面接官から「全体的に見て」と言われた場合は、「ハードウェア」「ソフトウェア(BtoB/BtoC)」「ITサービス・プラットフォーム」といった主要セグメントごとに分けて評価することを提案します。
- 「グローバルポジション」の定義と評価軸:
- 何をもって「ポジションが高い/低い」と判断するのか、具体的な評価軸を設定する必要があります。
- 評価軸の候補:
- 市場シェア・競争力: 各セグメントにおける日本企業のグローバル市場でのシェア、主要プレイヤーの競争力。
- 技術力・イノベーション力: 特許数、研究開発投資額、先端技術(AI、量子コンピュータなど)における存在感、新しいサービス・ビジネスモデルを生み出す力。
- 収益性・成長性: 日本のIT企業の収益性(利益率など)、産業全体の成長率、グローバル市場での成長ポテンシャル。
- 人材育成・エコシステム: 高度IT人材の輩出状況、スタートアップの活力、産学官連携の状況。
- 国際標準化への影響力: 技術標準やルールメイキングにおける日本の発言力。
面接官への確認(例):
「日本のIT産業のグローバルポジションについてですね。IT産業は非常に広いため、本日は『ハードウェア』『ソフトウェア』『ITサービス・プラットフォーム』の主要3分野に分けて評価し、それぞれのグローバル市場における『市場シェア・競争力』『技術力・イノベーション力』『収益性・成長性』を主な評価軸として考えていきたいと思いますが、この進め方でよろしいでしょうか?」
ステップ2:情報収集の代替としての仮説構築と論点整理(各セグメント別の分析)
ケース面接の場では、詳細な市場データや企業情報が与えられることは稀です。そのため、一般的な知識やニュース、業界の動向などから仮説を立て、論理的にポジションを評価していく必要があります。
(A) ハードウェア分野
- 仮説的ポジション:全体としては「かつての強者、現在は特定の部品・素材で強みを持つが、最終製品では苦戦」
- 市場シェア・競争力:
- PC、スマートフォン、汎用サーバーなどの最終製品市場では、米国、韓国、中国企業に大きくシェアを奪われている。
- 一方で、半導体製造装置、特定分野のセンサー、高品質な電子部品・素材(例:村田製作所、キーエンス、信越化学など)では、依然として高いグローバルシェアと競争力を持つ企業が存在する。
- 技術力・イノベーション力:
- 基礎技術や精密加工技術には強みがあるが、ビジネスモデルの転換や大規模投資を伴うイノベーションでは遅れを取っている分野が多い。
- 「ガラパゴス化」と揶揄されるように、国内市場に最適化された製品開発が、グローバルでの競争力低下を招いた側面も。
- 収益性・成長性:
- 最終製品メーカーは価格競争に巻き込まれ、収益性が低下しているケースが多い。
- 強みを持つ部品・素材メーカーは比較的高い収益性を維持している。産業全体の成長性は鈍化。
- 市場シェア・競争力:
(B) ソフトウェア分野
- 仮説的ポジション:BtoB(特にSI)は国内中心でドメスティック、BtoC(ゲーム除く)は海外プラットフォーマーに依存
- BtoB(エンタープライズ向け):
- 市場シェア・競争力:国内大手SIerが強いが、グローバル市場での存在感は薄い。海外のERP(SAP、Oracle)やCRM(Salesforce)などのパッケージソフトが広く導入されている。
- 技術力・イノベーション力:レガシーシステムの維持・改修に追われ、SaaSのような新しいビジネスモデルへの転換や、グローバルスタンダードなソフトウェア開発で遅れ。
- 収益性・成長性:安定はしているが、成長性は限定的。多重下請け構造による利益率の低さも課題。
- BtoC(コンシューマ向け):
- 市場シェア・競争力:ゲームソフト(任天堂、ソニーなど)は世界的に高い競争力を持つ。しかし、OS、オフィスソフト、SNS、検索エンジン、ECプラットフォームなどの基盤となる分野では、ほぼ全て海外企業(GAFAMなど)が市場を席巻。
- 技術力・イノベーション力:ゲーム開発におけるクリエイティビティや技術力は高い。しかし、プラットフォーム構築力やグローバルなエコシステム形成力では劣る。
- 収益性・成長性:ゲーム市場はヒット作に左右されるが、グローバルに展開できれば大きな収益を生む。プラットフォーム分野では、海外企業に収益が集中。
- BtoB(エンタープライズ向け):
(C) ITサービス・プラットフォーム分野
- 仮説的ポジション:国内市場では一定のプレイヤーが存在するが、グローバルなプラットフォーマーは不在。クラウドは海外勢が圧倒的。
- 市場シェア・競争力:
- 国内EC(楽天、Yahoo! JAPAN)、SNS(LINE)、フリマアプリ(メルカリ)など、国内で成功しているサービスは存在するが、グローバルでの展開は限定的。
- クラウドサービス(IaaS, PaaS, SaaS)市場は、AWS、Azure、GCPといった米国勢が圧倒的なシェアを握り、日本企業は追随する形。
- データセンター事業は国内需要が中心。
- 技術力・イノベーション力:
- 一部の国内向けサービスでは独自の技術やビジネスモデルが見られるが、GAFAMのような世界を変える規模のイノベーションは生まれていない。
- AI、ビッグデータ活用などの先端分野では、米国・中国に比べて研究開発投資や人材プールで劣る。
- 収益性・成長性:
- 国内で成功しているプラットフォーマーは高い収益を上げているが、グローバル展開の壁に直面。
- クラウド市場は高成長を続けているが、利益の多くは海外企業に流れている。
- 市場シェア・競争力:
ステップ3:ポジション評価と根拠の明確化、結論の提示
上記のセグメント別分析を踏まえ、日本のIT産業全体のグローバルポジションを総合的に評価し、その根拠を明確に述べます。
総合的なポジション評価(結論の候補):
「日本のIT産業のグローバルにおけるポジションは、『かつての輝きを失い、現在は一部の特定分野(例:高品質な部品・素材、ゲームソフト)では強みを持つものの、ソフトウェアやプラットフォームといった成長分野では大きく遅れを取り、全体としてはキャッチアップを迫られている挑戦者の立場』にあると考えます。」
根拠の要約:
- ハードウェア: 最終製品では国際競争力を失ったが、特定の部品・素材、製造装置では依然世界トップレベルの技術力とシェアを誇る。
- ソフトウェア: エンタープライズ向けは国内SI中心でグローバル展開が弱く、コンシューマ向けはゲームを除き海外プラットフォーマーへの依存度が高い。
- ITサービス・プラットフォーム: 国内市場では成功事例もあるが、世界を席巻するようなプラットフォーマーは不在。クラウドインフラも海外勢が支配的。
- 共通の課題: 先端IT人材の不足、イノベーションを生み出すエコシステムの未成熟、グローバル市場でのビジネス展開力・マーケティング力の弱さ。
面接官への報告(例):
「日本のIT産業のグローバルポジションについてですが、分野によって濃淡はあるものの、全体としては『特定分野で強みを維持しつつも、成長著しいソフトウェア・プラットフォーム分野では大きく後れを取り、挑戦者の立場にある』と評価します。
具体的には、
ハードウェア分野では、かつてPCや家電で世界をリードしましたが、現在は最終製品での競争力は低下しています。しかし、半導体製造装置や特定の電子部品・素材といった川上分野では、依然として高い技術力とグローバルシェアを持つ企業が存在します。
ソフトウェア分野では、エンタープライズ向けは国内のシステムインテグレーションが中心で、グローバルなパッケージソフト市場では海外勢が優位です。コンシューマ向けでは、ゲームソフトは世界的に高い評価を得ていますが、OSや主要なアプリケーション、SNSプラットフォームといった基盤部分は海外企業の独壇場となっています。
ITサービス・プラットフォーム分野でも、国内で成功しているECやメッセージングアプリはありますが、GAFAMのようなグローバルプラットフォーマーは生まれていません。クラウドインフラもAWS、Azure、GCPといった海外勢の寡占状態です。
このように、日本のIT産業は、強みを持つニッチな領域は存在するものの、プラットフォームやエコシステムといった、現代のIT産業の価値創造の中核となる部分でグローバルなリーダーシップを発揮できていないのが現状だと考えます。」
この後、面接官からは「なぜそのようなポジションになってしまったのか?」という、次の問いに繋がる深掘りが予想されます。
次の章では、このポジション分析を踏まえ、「なぜ日本のIT産業は世界トップに立てないのか?」という原因分析に進みます。
4. 【過去問解説②】なぜ日本のIT産業は世界トップに立てないのか?(原因分析)
前章では、日本のIT産業のグローバルにおけるポジションを「特定分野で強みを維持しつつも、成長著しいソフトウェア・プラットフォーム分野では大きく後れを取り、挑戦者の立場にある」と評価しました。この分析を踏まえ、次のお題「なぜ日本のIT産業は世界トップに立てないのか?」に対する原因分析を行います。
このお題では、単一の原因ではなく、歴史的経緯、産業構造、人材、政策、文化といった多角的な視点から、複合的な要因を構造的に明らかにすることが求められます。
ステップ1:原因分析のフレームワーク(構造化の切り口)
「なぜ世界トップに立てないのか?」という問いに対する原因を、MECE(モレなくダブりなく)かつ多角的に洗い出すために、適切な分析の切り口を設定します。
分析の切り口候補:
- PESTLE分析(政治、経済、社会、技術、法律、環境): マクロ環境要因を網羅的に捉えるのに有効。
- バリューチェーン分析(研究開発→設計→製造→マーケティング→販売→サービス): 産業のどの段階に課題があるのかを特定。
- ビジネス・エコシステム視点: 企業単体だけでなく、大学、研究機関、政府、投資家、人材市場といった、イノベーションを生み出すための生態系全体に着目。
- 歴史的経緯 vs 現在の構造的問題: 過去の成功体験や意思決定が、現在の状況にどう影響しているか。
今回は、これらの視点を参考にしつつ、日本のIT産業の課題をより具体的に深掘りできるような、以下の構造で原因を分析します。
構造案:
- 歴史的・構造的要因(過去からの積み重ね)
- 人材・組織的要因(ヒトと仕組みの問題)
- 産業エコシステム・政策的要因(環境と支援の問題)
- 文化的・マインドセット要因(価値観と行動様式)
ステップ2:各要因の具体的な分析と因果関係の考察
設定した構造に基づき、具体的な原因を分析し、それらがどのように相互に関連し、「世界トップに立てない」という現状に繋がっているのかを考察します。
(1) 歴史的・構造的要因
- ハードウェア偏重の成功体験と自前主義:
- かつての「モノづくり大国」としての成功体験が、ソフトウェアやサービスを軽視する風潮を生んだ可能性。ハードウェアとソフトウェアを一体で開発する「垂直統合モデル」に固執し、オープンな協業や水平分業のトレンドに乗り遅れた。
- 結果:ソフトウェアの標準化競争で敗北し、プラットフォームビジネスへの転換が遅れた。
- 系列・下請け構造の弊害(特にSI業界):
- 大手メーカーやユーザー企業を頂点としたピラミッド型の多重下請け構造が、IT業界の生産性向上を阻害。末端のエンジニアの待遇悪化や、イノベーティブな提案が生まれにくい環境。
- 結果:労働集約的なビジネスモデルからの脱却困難、先端技術への投資不足。
- 「失われた数十年」と国内市場志向:
- 長期的な経済停滞の中で、企業がリスクを取ったIT投資やグローバル展開に及び腰になった。安定した国内市場の既存顧客向けビジネスに安住し、グローバルな競争環境への対応が遅れた。
- 結果:グローバル市場でのプレゼンス低下、海外の先進事例キャッチアップの遅れ。
(2) 人材・組織的要因
- 先端IT人材の不足と偏在:
- AI、データサイエンス、サイバーセキュリティなどの先端分野で、質・量ともに人材が不足。優秀な人材はGAFAMなどの海外企業や一部の国内大手、スタートアップに集中し、産業全体に行き渡っていない。
- 結果:イノベーションの担い手不足、国際競争力の源泉となる技術開発の遅れ。
- ITエンジニアのキャリアパスと待遇の問題:
- SIerなどでは、技術力よりもマネジメント能力が重視されるキャリアパスが多く、高度な専門性を追求するエンジニアが報われにくい。海外と比較して給与水準も低い傾向。
- 結果:優秀な理系学生のIT業界離れ、海外への人材流出。
- 大企業の硬直的な組織文化と意思決定の遅さ:
- 年功序列、終身雇用といった伝統的な雇用慣行が、新しい技術やアイデアを持つ若手人材の活躍を阻害。ボトムアップのイノベーションが生まれにくい。
- リスク回避的な意思決定プロセスが、変化の速いIT業界のスピード感に対応できていない。
- 結果:新規事業や破壊的イノベーションへの挑戦不足。
(3) 産業エコシステム・政策的要因
- スタートアップ育成環境の未成熟:
- リスクマネーの供給量が米国や中国に比べて圧倒的に少ない。エンジェル投資家やベンチャーキャピタルの層が薄い。
- 失敗を許容しない社会的な風潮や、再チャレンジの難しさ。
- 大企業とスタートアップの連携(オープンイノベーション)がまだ限定的。
- 結果:GAFAMのような巨大プラットフォーマーを生み出す土壌が育たない。
- 産学官連携の課題:
- 大学の研究成果がビジネスに結びつきにくい。企業と大学の共同研究や人材交流が活発でない。
- 政府のIT戦略や規制が、時にイノベーションを阻害したり、グローバルスタンダードから乖離したりするケースがある。
- 結果:基礎研究から応用、事業化へのスムーズな連携不足。
- 政府調達や標準化における国内偏重:
- 政府関連のITシステム調達が国内ベンダーに偏り、グローバルな競争に晒される機会が少ない。
- 国内独自の規格や仕様に固執し、国際標準化の流れから取り残される。
- 結果:国内企業のガラパゴス化、国際競争力の低下。
(4) 文化的・マインドセット要因
- リスク回避志向と完璧主義:
- 失敗を極度に恐れ、新しいことへの挑戦をためらう文化。製品やサービスに完璧を求めすぎるあまり、市場投入のスピードが遅れる。
- 結果:「まず小さく始めて改善していく」アジャイルな開発手法への適応遅れ。
- 内向き志向と協調性の過度な重視:
- 国内市場や既存の枠組みの中での最適化を優先し、グローバルな視点や破壊的な変革への意識が低い。
- 「和を以て貴しと為す」文化が、時に建設的な批判や大胆な意思決定を妨げる。
- 結果:グローバルスタンダードへのキャッチアップの遅れ、破壊的イノベーションの欠如。
- ソフトウェアや無形資産への価値認識の低さ:
- 「モノづくり」の成功体験から、ハードウェアに比べてソフトウェアやデータ、知的財産といった無形資産の価値を低く見積もる傾向。
- 結果:ソフトウェアエンジニアの地位向上遅れ、データ駆動型ビジネスへの転換の遅れ。
ステップ3:本質的な課題の絞り込みと結論の提示
上記の要因は相互に関連し合っていますが、その中でも特に「なぜトップに立てないのか」という問いに対する本質的なボトルネックを特定し、結論として提示します。
本質的な課題(結論の候補):
- 結論候補1:ソフトウェアとプラットフォームを核とした「エコシステム構築力」の欠如
- 現代のIT産業の競争力の源泉は、個別のハードウェアやソフトウェアの性能だけでなく、それらを繋ぎ、多くのプレイヤーを巻き込み、継続的に価値を生み出す「プラットフォーム」と「エコシステム」を構築・運営する能力にある。日本は、個々の技術力は高くても、このエコシステム全体をデザインし、グローバルに展開する戦略性と実行力で劣後した。
- 結論候補2:過去の成功体験(ハードウェア中心の垂直統合モデル)からの転換の失敗と、それに伴う人材・組織・文化の硬直化
- かつての「モノづくり」での成功体験が、ソフトウェアやサービス、オープンイノベーションといった新しい価値創造モデルへの大胆な転換を遅らせた。その結果、人材育成、組織構造、企業文化も旧来のモデルに最適化されたままとなり、グローバルなIT競争に必要なスピードと柔軟性を失った。
- 結論候補3:リスクを取ってグローバル市場で戦うという「戦略的野心」と「実行体制」の不足
- 国内市場に安住し、グローバルスタンダードを見据えた大胆な投資や、失敗を恐れないチャレンジ精神が産業全体として希薄だった。また、グローバルに通用するビジネスモデルを構築し、それを支える人材、資金、政策的支援といった「エコシステム」全体が未成熟だった。
面接官への報告(例 – 結論候補2を軸に):
「日本のIT産業がグローバルでトップに立てない本質的な理由は、『過去のハードウェア中心の成功体験から脱却し、ソフトウェアとサービスを核とした新しい競争モデルへ転換することに失敗し、その結果として人材・組織・文化がグローバルなIT競争に対応できない形で硬直化してしまったこと』だと考えます。
具体的には、
- 歴史的要因として、 モノづくりでの成功体験が、ソフトウェアやオープンイノベーションの価値を相対的に軽視する傾向を生み、プラットフォームビジネスへの戦略的転換を遅らせました。
- 人材・組織的要因として、 このビジネスモデルの転換遅れが、先端IT人材の不足や、ITエンジニアの魅力的なキャリアパスの欠如、大企業の硬直的な組織文化といった問題に繋がり、イノベーションを生み出す活力が削がれました。
- 産業エコシステム・政策的要因として、 リスクマネーの供給不足や産学官連携の弱さなど、新しい挑戦を支える環境が未成熟であったことも、グローバルな競争からの後退を加速させました。
- 文化的要因として、 リスク回避志向や完璧主義、内向き志向が、変化の速いIT業界での大胆な意思決定や迅速な市場対応を難しくした側面があると考えられます。
これらの要因が複合的に絡み合い、日本のIT産業は一部の強みを除き、グローバル市場におけるリーダーシップを確立するに至っていないと考えます。」
ディスカッションのポイント:
- 各要因の重要度や因果関係の深掘り。
- 「では、どうすれば良かったのか?」「今からでもトップを目指せる分野はあるか?」といった、未来志向の問いへの展開。
- 特定の企業や成功/失敗事例を挙げて、議論を具体化できるか。
- 日本の強み(例:品質へのこだわり、アニメ・ゲームなどのコンテンツ力)を活かせる可能性についての考察。
このお題では、歴史的視点、構造的視点、そして文化的な視点まで含めた多角的な分析力と、それらを説得力のあるストーリーとして語る能力が評価されます。
次の章では、公共系ケース面接に取り組む上での特有の注意点と、MBB面接官からの一般的なアドバイスについて解説します。
5. 公共系ケース面接特有の注意点とMBB面接官からのアドバイス
公共系のケース面接は、ビジネスケースとは異なる視点や配慮が求められるため、特有の注意点を押さえておくことが重要です。ここでは、公共系ケースに取り組む上での心構えと、MBB面接官がどのような点を評価しているのか、一般的なアドバイスをまとめます。
公共系ケース面接特有の注意点:
- 「誰にとっての価値か」を常に意識する(多角的なステークホルダー視点):
- ビジネスケースでは「企業価値最大化」が主な目的となりますが、公共系では「国民全体の厚生」「社会全体の効率性」「特定の社会的弱者の救済」など、誰のために何を目指すのかがより複雑になります。
- 政策や施策の影響を受けるステークホルダー(国民、企業、NPO、政府機関、地方自治体など)を洗い出し、それぞれの立場や利害を考慮する必要があります。ある施策が一部のグループに利益をもたらす一方で、他のグループに不利益をもたらす可能性(トレードオフ)も念頭に置きましょう。
- 「公平性」「公正性」といった観点も、ビジネスケース以上に重要になります。
- 「べき論」と「実現可能性」のバランスを保つ:
- 社会課題に対して「こうあるべきだ」という理想論を語ることは重要ですが、それだけではコンサルタントの提言としては不十分です。
- 財政的制約、法的枠組み、政治的実行可能性、国民感情、既存の利権構造など、現実的な制約条件を考慮し、その中で「実際に何ができるのか」「どうすれば実現に近づけるのか」という具体的な道筋を示す必要があります。
- 理想と現実のギャップを認識し、そのギャップを埋めるための段階的なアプローチや、関係者との合意形成のプロセスまで思考が及んでいると評価が高まります。
- 「時間軸」のスケール感を使い分ける:
- 公共政策や社会システムの変革は、一朝一夕には成し遂げられません。短期的な対症療法と、中期的な制度改革、そして長期的な国民意識の変革といった、異なる時間軸での施策を組み合わせて考える視点が重要です.
- 「まずは〇〇に着手し、その効果を見ながら△△へと進める」といった、ロードマップ的な思考が求められることもあります。
- 「定量化」の難しさと「定性的な価値」の重要性:
- ビジネスケースでは売上や利益といった定量的なKPIで成果を測りやすいですが、公共系では「国民の幸福度」「社会の安全性」「文化の多様性」など、定量化しにくい、あるいはすべきでない定性的な価値も重要な評価軸となります。
- 可能な範囲で定量的な根拠(例:〇〇問題による経済損失、施策によるCO2削減効果など)を示す努力は必要ですが、それと同時に定性的な目標や効果についても、その重要性を論理的に説明できることが求められます。
- 「前例踏襲」と「抜本的改革」の使い分け:
- 公共分野では、既存の制度や慣行を大きく変えることに対する抵抗が強い場合があります。一方で、根本的な課題解決のためには、前例にとらわれない大胆な発想や抜本的な改革が必要となることもあります。
- 現状の枠組みの中でできる改善と、枠組み自体を変えるような変革の、両方の視点を持つことが重要です。どちらのアプローチを取るべきか、その判断の根拠を明確にしましょう。
- 「情報収集」の限界と「仮説思考」の活用:
- 公共系のテーマは非常に広範で、全ての関連情報を面接中に網羅することは不可能です。面接官も完璧な知識を求めているわけではありません。
- 重要なのは、限られた情報の中で「おそらくこうではないか」という仮説を立て、その仮説に基づいて論点を整理し、建設的な議論を進めることです。自分の知識の限界を認めつつ、論理的に推論する力が試されます。
MBB面接官からの一般的なアドバイス(公共系ケース含む):
- 「常にクライアント視点で考えてください」:
- たとえお題が「日本の〇〇をどうするか」であっても、面接官はあなたを「クライアント(例:政府)にアドバイスするコンサルタント」として見ています。誰の課題を解決しようとしているのか、そのクライアントが何を求めているのかを常に意識しましょう。
- 「構造化は『目的』ではなく『手段』です」:
- MECEな分解やフレームワークの適用は重要ですが、それ自体が目的ではありません。構造化を通じて、問題の本質を見抜き、議論を深め、より良い解決策にたどり着くための「手段」として活用してください。「なぜその構造なのか」「その構造から何が言えるのか」が重要です。
- 「コミュニケーションは双方向です。対話を楽しみましょう」:
- ケース面接は一方的なプレゼンテーションではありません。面接官との対話を通じて思考を深めていくプロセスが重視されます。質問を恐れず、自分の考えを積極的にぶつけ、相手の意見に耳を傾け、共に結論を創り上げていく姿勢を見せてください。
- 「結論だけでなく、『なぜそう考えたのか』というプロセスを重視します」:
- 最終的な結論の当否よりも、そこに至るまでの思考プロセス、論理の組み立て方、仮説の質、分析の深さが評価の対象となります。行き詰まっても、諦めずに粘り強く考え続ける姿勢が重要です。
- 「知的好奇心と学ぶ姿勢を見せてください」:
- 未知のテーマや複雑な問題に対しても、面白がって取り組み、新しいことを学ぼうとする知的好奇心は、コンサルタントにとって非常に重要な資質です。分からないことがあれば、それを素直に認め、学ぼうとする姿勢を示すことはマイナスにはなりません。
公共系のケース面接は、ビジネスケースとは異なる難しさがありますが、同時に、あなたの社会に対する問題意識や、より大きな視点での思考力をアピールできる絶好の機会でもあります。日頃から社会の動きに関心を持ち、多様な視点から物事を捉える訓練を積むことが、対策の鍵となるでしょう。
次の最終章では、本記事のまとめとして、公共系ケースで思考力を示し、内定を掴むための総括を行います。
6. まとめ:巨視的かつ構造的な分析で、社会課題への洞察力を示す
これまでの章で、公共系ケース面接の代表例として「日本のIT産業のグローバルポジションと課題」を取り上げ、その分析アプローチ、思考プロセス、そしてMBB面接官が注目するポイントについて詳しく解説してきました。
公共系のケース面接は、単にビジネスの知識やフレームワークを問うものではありません。それは、あなたが複雑な社会課題に対してどれだけ深い洞察力を持ち、構造的に問題を捉え、多様なステークホルダーを考慮しながら、現実的かつ創造的な解決策を構想できるかという、より巨視的で本質的な思考力を試すものです。
公共系ケース面接突破のための総括ポイント:
- 「目的」と「スコープ」の明確化が全ての出発点:
- 誰の(例:政府、国民、特定産業)、どのような課題を(例:国際競争力向上、格差是正、環境負荷低減)、どのような目標水準で(例:〇年後までに△△を実現)解決しようとしているのか。この初期設定の明確化が、その後の議論の方向性と質を決定づけます。
- 「多角的視点」での構造化と分析:
- 社会課題は、経済、社会、技術、政治、法律、文化といった多様な要因が複雑に絡み合って発生しています。これらの要因をMECEかつ意味のある切り口で構造化し、それぞれの因果関係や影響度合いを分析する能力が求められます。
- ステークホルダー分析も不可欠です。誰がどのような利害を持ち、どのような行動を取る可能性があるのかを理解することで、施策の実効性や合意形成の難易度が見えてきます。
- 「べき論」と「できる論」の戦略的バランス:
- 社会の理想像や「こうあるべき」という理念を掲げることは重要ですが、それと同時に、財政的制約、法的枠組み、技術的限界、政治的実行可能性といった現実的な制約条件を踏まえた上で、「今、何をすべきか」「どうすれば理想に近づけるか」という具体的な道筋を示す必要があります。
- 「定性的価値」と「定量的根拠」の巧みな組み合わせ:
- 公共系のテーマでは、経済的効率性だけでなく、公平性、安全性、持続可能性、文化的多様性といった、数値化しにくい定性的な価値も重要な評価軸となります。これらの価値の重要性を論理的に説明しつつ、可能な範囲で定量的なデータや分析(例:現状の課題による経済損失、施策の費用対効果の概算など)を補強材料として用いることで、提案の説得力が増します。
- 「歴史的視点」と「未来志向」の往復:
- 現在の課題がどのような歴史的経緯で生まれてきたのかを理解することは、本質的な解決策を見出す上で重要です。同時に、過去の成功体験や失敗事例から学びつつも、未来の社会像や技術動向を見据えた、前向きで創造的な解決策を構想する力が求められます。
- 「共感力」と「客観性」を併せ持つコミュニケーション:
- 社会課題に取り組む上での当事者意識や共感力を示しつつも、分析や提言はあくまで客観的な事実と論理に基づいて行うというバランスが重要です。感情論に流されず、しかし冷徹すぎない、建設的な議論を心がけましょう。
公共系ケース面接は、あなたの「社会を変革するポテンシャル」を示す場
公共系のケース面接は、単に知的なパズルを解くこと以上の意味を持ちます。それは、あなたが将来、社会全体の課題解決に貢献できる人材であるかどうか、そのポテンシャルを示す機会です。
日頃から、
- 国内外の社会課題や政策動向に関心を持ち、その背景や構造について自分なりに考えてみること。
- 様々な立場の人々の意見や価値観に触れ、多角的な視点を養うこと。
- 理想と現実のギャップを認識し、その中で最善の解決策を模索する訓練を積むこと。
こうした意識と努力が、公共系ケース面接で深い洞察力と説得力のある提言を生み出すための力となります。
Strategistsでは、このような複雑で多角的な思考が求められる公共系ケースに対しても、問題の本質を見抜くための構造化手法から、多様なステークホルダーを考慮した戦略立案、そして社会的な意義と実現可能性を両立させる提案の組み立て方まで、徹底的にサポートしています。
この記事が、皆さんの戦略コンサルタントへの挑戦、そして未来の社会をより良い方向へ導くための知的な探求の一助となることを心より願っています。
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我々のマンツーマン指導プログラムについて
サービス開始の2022年以来、少数精鋭ではありながら、
累計で受講生の戦コン内定率が約43% (新卒約45%/既卒約40%)
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多数の受講生の指導や教材制作を経て蓄積・言語化してきたオリジナルのノウハウを基に、本番での評価ポイントを熟知したMBB面接官経験者の視点も組み込みながら、最強のケース対策プログラムを制作しました。
我々のプログラムの最大の特長は、
・ケース面接初心者や苦手意識のある方であっても
・再現性高く、最短距離で、最高峰(内定レベル)のケース力
を習得することができる点です。
実は我々のお客様の63%は入会時点で
「一才対策はやってない」or「市販の書籍を読んだ程度」
の「初心者」ないし「初級」のお客様です。
再現性高く、最短距離で、内定を取れる理由
最高のケース面接対策プログラムの設計を始めたとき、
我々のチームが最初に考えたのが
「理想的な上達プロセス」についてでした。
スポーツでも勉強でも、何か新しいことを始めるとき
「最短距離で最高峰を目指そう!」と思ったら
どういうやり方をするのが正解なのだろうか?
それについて考えるところから始まりました。
結論、我々が辿り着いた答えは
①学習する:プロから正しく学ぶ
②練習する:繰り返し練習し学んだことを自分の体に染み付かせる
③実践する:実践で到達度や課題を明確化する
→①②に戻る
というサイクルを回すことが
「理想的な上達プロセス」なのではないか?ということでした。
そこで、この「理想的な上達プロセス」に沿う形で
さまざまな教材・トレーニングメニューを綿密に設計・用意し
「内定レベルのケース面接」を最短距離で習得できるカリキュラムが完成しました。
プログラムの全体像はこちらです。
①正しく学ぶ
Strategistsのオリジナル教材、教科書・動画講座を使って
必要な思考法や知識を体系的にインプットしていただきます。
②反復練習で定着:課題ケース演習
厳選した良問を、自主課題としてメンターが指定。
時間制限を設けず熟考する形式で自主演習し、
さらに専用フォームに筆記ケース形式でアウトプットしていただきます。
教科書や動画講座で学んだ思考法や知識を思い返しながら
実際の過去問を題材に試行してみる。
あなたの思考力が”変わる・鍛えられる”のが
このトレーニングの役割です。

③実践&現状把握:模擬ケース面接
専属メンターと模擬面接を実施。
詳細なフィードバックをもらうことで
現状を把握し、弱点・課題を発見できるのはもちろん
内定レベルの解答例や思考のポイントなど
1問を題材に「次に活かせる」学びを詳しく解説します。

メンタリングの質へのこだわり
皆さんは『メンタリングの質』というものについて考えたことはありますか?我々は『問題を解き→フィードバックをもらい→模範解答を見る』というプロセスを経ての成長幅こそが『メンタリングの質』だと考えています。
『メンタリングの質』はメンターの質はもちろん、扱う問題と模範解答の質によって決まると考えており、我々のサービスでは厳選された問題からしか出題を行いません。メンタリングでの使用を構想してから実際にお客様にお出しする「デビュー」までに数ヶ月かかることも多いです。
我々はケース対策における「良問」を
・得られる学びが深くて多い
・抽象化して次に活かせる普遍性がある
・これまでのお題とも次回以降のお題とも被らない新たな学びがある
と定義しています。各問題が単に「マッキンゼー対策」「公共系」のような表面的なジャンル分けにとどまらず、「BSとPLの構造理解」「”実現可能性とインパクト”の落とし穴」「サブスク事業のキードライバー」など裏テーマが設定してあります。
ケース対策は量よりも圧倒的に質です。
質の高いメンター×体系的な基礎インプット×良問での演習で確実に内定をGETするなら我々にお任せください。

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単なる”模範解答例”ではなく、問題のポイントや次に活かせる学びをまとめています。
我々の初回メンタリングはありがちなサービス勧誘・営業の場ではなく
本プログラムの 『0講目』の扱いですから、
「これがStrategistsのクオリティか」とご実感いただける機会になることをお約束します。

