内定者も苦戦したBCG過去問(高難易度フェルミ推定)3問をMBB内定者が徹底解説!

「BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のケース面接って、フェルミ推定が難しいって本当?」
「市場規模だけじゃなくて、もっと複雑な数値を推定させられるって聞いたけど、どう対策すればいいの?」

戦略コンサルティングファーム、特にMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)を目指す皆さんにとって、フェルミ推定は避けては通れない関門です。その中でもBCGのフェルミ推定は、時に内定者ですら唸るような、思考の深さと幅広さが求められる「高難易度」な問題が出題されることで知られています。

この記事では、実際にMBBの内定を獲得した筆者が、BCGの選考で過去に出題された、あるいは出題されうるタイプの高難易度フェルミ推定問題3問を厳選し、それぞれの思考プロセス、アプローチの立て方、数値設定のロジック、そして面接官がどこを見ているのかを、ステップバイステップで徹底的に解説します。

単に数値を出すだけでなく、その背景にある構造を理解し、複数の要素を論理的に積み上げていく力、そして時には常識にとらわれない柔軟な発想も求められるこれらの問題は、あなたの地頭の良さ、論理的思考力、ビジネスセンスを総合的に試すものです。

本記事で扱うフェルミ推定問題:

  1. 問題1:熱海温泉の年間観光客数を求めよ。
  2. 問題2:日本で年間に消費される「外食のラーメン」は何杯か。
  3. 問題3:日本に電話は何器あるか。

目次

  1. BCGのフェルミ推定は何が「高難易度」なのか?評価のポイント
  2. 【BCG過去問解説①】熱海温泉の年間観光客数を求めよ
    • 前提確認と「観光客」の定義
    • アプローチの選択(供給ベース vs 需要ベース vs 複合アプローチ)
    • 選択したアプローチに基づく分解と構造化
    • 各要素の数値設定ロジックと計算
    • リアリティチェックと結論のまとめ方
  3. 【BCG過去問解説②】日本で年間に消費される「外食のラーメン」は何杯か
    • 前提確認と「外食のラーメン」の定義
    • アプローチの選択(需要ベース vs 供給ベース)
    • 選択したアプローチに基づく分解と構造化(喫食者セグメント、頻度など)
    • 各要素の数値設定ロジックと計算
    • リアリティチェックと結論のまとめ方
  4. 【BCG過去問解説③】日本に電話は何器あるか
    • 前提確認と「電話」の定義(固定電話、携帯電話、スマートフォン、公衆電話など)
    • アプローチの選択(保有主体別アプローチ:個人 vs 法人 vs 公共)
    • 選択したアプローチに基づく分解と構造化
    • 各要素の数値設定ロジックと計算
    • リアリティチェックと結論のまとめ方
  5. 高難易度フェルミ推定を突破するための共通戦略と対策法
  6. まとめ:BCGの難問を制し、コンサルタントへの扉を開く

それでは、まずBCGのフェルミ推定がなぜ「高難易度」と言われるのか、その特徴と評価ポイントから見ていきましょう。



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1. BCGのフェルミ推定は何が「高難易度」なのか?評価のポイント

BCGのフェルミ推定は、単に計算の速さや正確さを測るものではありません。その根底には、将来コンサルタントとして活躍するために必要な、より本質的な思考力や問題解決能力を見極めようとする意図があります。

BCGフェルミ推定の「高難易度」たる所以:

  1. 定義・スコープ設定の自由度が高い(=曖昧さが大きい):
    • お題がシンプルであるがゆえに、「何をどこまで推定するのか」という初期の定義・スコープ設定を受験者自身に委ねられることが多いです。「電話は何器あるか?」という問い一つとっても、「電話」の種類(固定、携帯、スマホ、公衆、社内線など)や「日本」の範囲(国内で使用されているもの全てか、国内で保有されているものか)など、考慮すべき点が多岐にわたります。この曖昧さの中から、論理的かつ現実的な前提を自ら設定する能力が試されます。
  2. 構造化の深さと多角性が求められる:
    • 単純な一本の計算式で終わることは少なく、複数の要素をMECE(モレなくダブりなく)かつ意味のある形で分解し、それらを構造的に積み上げていく必要があります。例えば「観光客数」であれば、宿泊客と日帰り客、国内客とインバウンド客、交通手段別など、多様な切り口でアプローチし、それらを統合して結論を導き出すような思考が求められます。
  3. 仮定(パラメータ設定)のリアリティと論拠の質:
    • 各分解要素に対して数値を設定する際、単なる「当てずっぽう」ではなく、一般常識、アナロジー、既知のデータからの推論など、何らかの論理的な根拠が求められます。「なぜその数値を置いたのか?」という問いに対して、説得力のある説明ができるかが重要です。特に馴染みの薄いテーマの場合、この仮定の置き方が難易度を上げます。
  4. ビジネス的洞察や示唆への接続意識:
    • BCGのフェルミ推定は、単独で終わることもありますが、しばしばその後のビジネスケースへの導入として機能します。そのため、算出した数値が「ビジネスの文脈でどのような意味を持つのか」「そこからどのような課題や機会が見えてくるのか」といった、次につながる考察を意識しているかどうかも見られています。
  5. ディスカッションにおける思考の柔軟性と深掘り耐性:
    • 面接官は、あなたの思考プロセスや仮定に対して、鋭い質問やツッコミを入れてきます。それに対して冷静かつ論理的に応答し、時には自分の考えを修正・深化させながら、建設的な議論を展開できるかが重要です。プレッシャーの中で思考を止めず、粘り強く本質に迫ろうとする姿勢が評価されます。

BCGがフェルミ推定で評価するポイント(Strategists的解釈):

Strategistsの指導経験から、BCGはフェルミ推定を通じて特に以下の能力を評価していると考えられます。

  1. 論理的思考力と構造化能力(地頭の良さの核):
    • 複雑な問題を単純な要素に分解し、それらの関係性を整理して全体像を把握する力。
    • 仮説を立て、それを検証するために必要な情報を論理的に導き出す力。
  2. 仮説構築力と数値設定のセンス:
    • 情報が不完全な中で、妥当性の高い仮説(パラメータ)を設定する力。
    • 桁感やオーダー感といった、数値に対する基本的なセンス。
  3. コミュニケーション能力とディスカッション力:
    • 自分の思考プロセスを分かりやすく説明する力(結論ファースト、構造化された説明)。
    • 面接官の質問の意図を正確に理解し、的確に応答する力。
    • 対話を通じて思考を深め、より良い結論に到達しようとする建設的な姿勢。
  4. 知的好奇心と学習意欲:
    • 未知のテーマに対しても臆することなく取り組み、新しい情報を吸収し、それを自分の思考に取り込もうとする姿勢。
  5. プレッシャー耐性と粘り強さ:
    • 時間的制約や面接官からのプレッシャーの中で、冷静に思考を続け、諦めずに結論を導き出そうとする精神的な強さ。

これらの評価ポイントは、BCGのコンサルタントとしてクライアントの難題に立ち向かい、価値を提供するために不可欠な資質と言えるでしょう。高難易度なフェルミ推定は、まさにこれらの素養を試すための「知的体力測定」なのです。

次の章からは、具体的な過去問の解説に入っていきます。まずは「熱海温泉の年間観光客数」の推定です。

2. 【BCG過去問解説①】熱海温泉の年間観光客数を求めよ

高難易度フェルミ推定の最初の例題として、特定の観光地の観光客数を推定する問題を取り上げます。この種の問題では、「何を観光客と定義するか」「どのようなアプローチでその総数を捉えるか」が初期の重要な論点となります。

お題:熱海温泉の年間観光客数を求めよ。(制限時間:例として7~10分程度を想定)

ステップ1:前提確認と「観光客」の定義(思考時間:~1分)

まず、お題に含まれる言葉の定義と、推定の範囲を明確にします。

  • 「熱海温泉」の範囲:
    • 熱海市全体を指すのか、特定の温泉街エリアを指すのか?
    • ここでは、熱海市全体への来訪者のうち、観光・レジャー目的の人を対象とします。
  • 「観光客」の定義:
    • 宿泊客: 熱海市内の宿泊施設(旅館、ホテル、リゾートマンション、民宿など)に宿泊する、市外からの来訪者。
    • 日帰り客: 宿泊はしないが、熱海市を訪れ、温泉利用、飲食、観光スポット訪問、イベント参加などの観光・レジャー活動を行う、市外からの来訪者。
    • ビジネス目的の出張者や、地元住民の日常的なレジャー利用は、今回は「観光客」の主要な定義からは除外します(ただし、完全に切り分けるのが難しい場合は、その旨を注釈する)。
  • 「年間」の定義: 直近の平常年(コロナ禍などの特殊要因が少ない年)を想定します。
  • 集計単位: 「延べ人数」とします(同一人物が複数回訪れた場合もそれぞれカウント)。

面接官への確認(例):
「熱海温泉の年間観光客数について、熱海市を訪れる市外からの来訪者のうち、宿泊客および日帰り観光・レジャー客の年間延べ人数を推定するという理解でよろしいでしょうか?ビジネス目的の訪問や地元住民の利用は、主要な対象からは除外して考えたいと思います。」

ステップ2:アプローチの選択(思考時間:~1分30秒)

熱海の観光客数を推定するアプローチとして、主に以下のものが考えられます。

  1. 供給ベース(キャパシティ起点):
    • 宿泊施設アプローチ: 熱海市内の総宿泊可能部屋数 × 年間平均稼働率 × 1室あたり平均宿泊人数 × 365日 + 日帰り客数(別途推定)
    • 交通インフラアプローチ: 熱海駅の年間乗降客数 × 観光客の割合、または熱海への主要アクセス道路の年間交通量 × 自動車1台あたり平均乗車人数 × 観光目的の割合
  2. 需要ベース(訪問者の行動起点):
    • 訪問可能圏人口アプローチ: 日帰り圏・宿泊圏の人口 × 各圏からの年間熱海訪問率 × 平均訪問回数
    • 旅行市場シェアアプローチ: 日本国内の年間総温泉旅行者数 × 熱海温泉のシェア

アプローチ選択のポイント:

  • 宿泊施設アプローチは、宿泊客数を捉えるには比較的有効ですが、日帰り客数を別途推定する必要があり、その日帰り客の定義や推定が難しい場合があります。
  • 交通インフラアプローチは、熱海への主要なアクセスポイント(熱海駅など)のデータを基にするため、比較的網羅性が高い可能性がありますが、「観光客の割合」というパラメータの設定が鍵となります。
  • 訪問可能圏人口アプローチは、日帰り客と宿泊客を分けて考える際に有効ですが、「訪問率」の設定が非常に難しく、仮定の置き方で結果が大きく変動しやすいです。
  • 旅行市場シェアアプローチは、マクロな視点ですが、「熱海温泉のシェア」をどう定義し、推定するかが難しいです。

今回は、複数のアプローチを組み合わせることで、推定のロジックを強化し、リアリティチェックもしやすくすることを目指します。具体的には、

  • 宿泊客数: 宿泊施設アプローチで推定。
  • 日帰り客数: 交通インフラアプローチ(特に鉄道利用者)と、宿泊客数との比較(日帰り客は宿泊客の何倍程度か、といった肌感覚)を組み合わせて推定。

ステップ3:選択したアプローチに基づく分解と構造化(思考時間:~2分)

年間観光客数 = ①年間宿泊客数 + ②年間日帰り客数

① 年間宿泊客数 = (A)熱海市内の総客室数 × (B)年間平均稼働率 × (C)1室あたり平均宿泊人数 × 365日

② 年間日帰り客数
* アプローチ候補1(交通インフラ):熱海駅年間乗降客数 × うち観光客割合 × うち日帰り客割合
* アプローチ候補2(宿泊客との比率):年間宿泊客数 × (日帰り客/宿泊客 比率)

ここでは、日帰り客の推定の難易度を考慮し、まずは宿泊客数をしっかり推定し、その上で日帰り客数を「宿泊客数の〇倍」といった形で仮定を置くアプローチを初期案とします。ディスカッションの中で、より詳細な日帰り客推定(例:交通手段別)に踏み込むことも視野に入れます。

ステップ4:各要素の数値設定ロジックと計算(思考時間:~4分)

  • ① 年間宿泊客数の推定:
    • (A) 熱海市内の総客室数:
      • 熱海は大規模な旅館・ホテルが多いイメージ。仮に、客室数100室以上の大規模施設が50軒、平均150室。中規模施設(30~99室)が100軒、平均50室。小規模施設(30室未満)が150軒、平均10室と仮定。
      • (50軒 × 150室) + (100軒 × 50室) + (150軒 × 10室) = 7,500 + 5,000 + 1,500 = 14,000室
        • 根拠の補強:「熱海市の観光統計などで、宿泊施設数が約300軒、総客室数が1万数千室というデータを見た記憶があります」など、具体的な数値のイメージを(もしあれば)示す。なければ、「有名温泉地であり、多様な規模の施設が存在すると想定し…」と説明。
    • (B) 年間平均稼働率:
      • 週末や繁忙期は80-90%、平日は40-50%と想定。インバウンド回復も考慮。年間平均で65%と仮定。
    • (C) 1室あたり平均宿泊人数:
      • 旅館の和室は家族連れも多く、ホテルのツイン利用も考慮。平均2.3人/室と仮定。
    • 計算(年間宿泊客数):
      14,000室 × 0.65 × 2.3人/室 × 365日
      = 14,000 × 約1.5人/室(0.65×2.3≒1.495) × 365日
      = 21,000人/日 × 365日
      = 21,000 × (360 + 5) = 7,560,000 + 105,000 = 7,665,000人
      約770万人
  • ② 年間日帰り客数の推定:
    • 宿泊客との比率で仮定: 一般的に、アクセスの良い温泉地では、日帰り客が宿泊客と同数~数倍程度いるイメージ。熱海は首都圏からのアクセスが非常に良いため、日帰り需要も大きいと想定。
    • 仮に、日帰り客数は宿泊客数の1.0倍と仮定。(よりアグレッシブに1.5倍などと置くことも可能だが、その場合は根拠をより明確にする必要あり)
    • 計算(年間日帰り客数):約770万人 × 1.0 = 約770万人
      • この仮定の補強・代替案: 「もし時間があれば、熱海駅の乗降客数から、日帰り観光目的の旅客数を推定することで、この仮定の妥当性を検証したいです。例えば、熱海駅の1日の乗降客数が〇万人、そのうち観光客が△割、さらにそのうち日帰りが□割、といった形で計算できます。」と補足する。

ステップ5:合計とリアリティチェック、結論のまとめ方(思考時間:~1分30秒)

  • 年間観光客数の合計:
    年間宿泊客数(約770万人) + 年間日帰り客数(約770万人)
    約1,540万人
  • リアリティチェック:
    • 熱海市の人口(約3.5万人)と比較すると、その約440倍。非常に大きな数字だが、日本有数の観光地であり、首都圏からのアクセスが良いことを考えると、桁感が大きく外れているとは言えないか。
    • 静岡県全体の年間観光客数(コロナ前延べ約1.5億人)の約10%を占める計算。県の代表的な観光地としてはあり得る範囲か。
    • 過去のニュースや観光統計で、熱海市の年間観光客数が「1千万人台」という数字を見た記憶があれば、その数値と照らし合わせる。

面接官への報告(例):
「熱海温泉の年間観光客数は、約1,540万人と推定いたしました。

この数値は、年間宿泊客数と年間日帰り客数の合計として算出しました。
まず、年間宿泊客数ですが、熱海市内の総客室数を約1万4000室、年間平均稼働率を65%、1室あたり平均宿泊人数を2.3人と仮定し、これらを掛け合わせることで約770万人と算出しました。
次に、年間日帰り客数ですが、熱海は首都圏からのアクセスが非常に良く日帰り需要も大きいと考えられるため、宿泊客数と同程度の約770万人が日帰りで訪れると仮定しました。
これらを合計し、約1540万人となります。

この数値は、熱海市の人口規模や、静岡県全体の観光客数に占める割合から考えても、国内有数の温泉観光地であることを考慮すれば、大きくは外れていない桁感だと考えております。
より精度を高めるためには、日帰り客数の推定において、主要交通機関(特に鉄道)の利用者データや、近隣観光圏からの訪問率などを詳細に分析する必要があるかと存じます。」

この後、面接官からは各パラメータの妥当性や、他のアプローチについて深掘りされる可能性があります。重要なのは、完璧な数値よりも、論理的な思考プロセスと、建設的なディスカッションを通じて推定の精度を高めようとする姿勢です。


次は、2つ目の例題「日本で年間に消費される『外食のラーメン』は何杯か」の解説に進みます。

3. 【BCG過去問解説②】日本で年間に消費される「外食のラーメン」は何杯か

続いての例題は、特定の飲食物の「外食」における年間消費量を推定する問題です。この種の問題では、「外食」の定義と、誰が・どれくらいの頻度で食べるのかという消費行動の分析が鍵となります。

お題:日本で年間に消費される「外食のラーメン」は何杯か。(制限時間:例として5~7分程度を想定)

ステップ1:前提確認と「外食のラーメン」の定義(思考時間:~1分)

まず、何を「外食のラーメン」とし、どの範囲で推定するのかを明確にします。

  • 「外食」の定義:
    • ラーメン専門店、中華料理店、フードコート、社員食堂、学食などで提供されるラーメンを指す。
    • 家庭で作るインスタントラーメンやチルドラーメン、冷凍ラーメンは除く。
    • コンビニエンスストアで購入してその場で食べるイートインのカップラーメンやレンジアップ麺は含むか? → 微妙なラインだが、今回は「店舗で調理・提供されるラーメン」に絞り、コンビニのイートイン等は除外すると仮定(ただし、含める場合はその旨を明記)。
  • 「ラーメン」の定義:
    • スープ(醤油、味噌、豚骨、塩など)、麺、具材から構成される一般的なラーメン。つけ麺、まぜそばなども「広義のラーメン」として含むか、除くか?
    • 今回は、スープに入った一般的な「ラーメン」を対象とし、つけ麺やまぜそばは除外すると仮定(これもスコープを狭めるための判断。含める場合はその旨を明記)。
  • 「年間」の定義: 直近の平常年。
  • 集計単位: 「杯数」。

面接官への確認(例):
「日本で年間に消費される『外食のラーメン』の杯数についてですね。ここでいう『外食のラーメン』とは、ラーメン専門店や中華料理店などで調理・提供される、スープに入った一般的なラーメンを指し、家庭での調理やコンビニのイートイン等は除外するという理解でよろしいでしょうか?また、集計単位は年間の延べ杯数といたします。」

ステップ2:アプローチの選択(思考時間:~1分)

「外食のラーメン」の年間消費杯数を推定するアプローチとして、主に以下のものが考えられます。

  1. 需要ベース(食べる人起点):
    • 日本の人口 × 外食でラーメンを食べる人の割合 × 1人あたり年間平均外食ラーメン喫食杯数
    • これが最も直接的で、仮定を置きやすいアプローチと考えられます。
  2. 供給ベース(提供する店起点):
    • 日本国内のラーメン提供店舗数 × 1店舗あたり平均年間ラーメン提供杯数
    • 「ラーメン提供店舗数」の推定が難しく、また店舗ごとの提供杯数のばらつきも大きいため、難易度が高い。

今回は、需要ベース(食べる人起点)のアプローチを選択します。

ステップ3:選択したアプローチに基づく分解と構造化(思考時間:~2分)

年間外食ラーメン消費杯数 = ①対象人口 × ②外食ラーメン喫食率 × ③年間平均喫食杯数(喫食者1人あたり)

ここで、特に②喫食率と③年間平均喫食杯数は、年齢や性別、ライフスタイルによって大きく異なると考えられるため、意味のあるセグメンテーションを行うことが精度向上に繋がります。

セグメンテーションの切り口候補:

  • 年齢層別: 若年層(学生、20代社会人)は喫食頻度が高い。中高年層は健康志向などから頻度が下がる傾向。高齢者はさらに低い。
  • 性別: 男性の方が女性よりも喫食頻度が高い傾向。
  • ライフスタイル別: 単身者、外回りの多いビジネスパーソンは頻度が高い。ファミリー層は他の選択肢も多い。

今回は、年齢層と性別を組み合わせたセグメントで、喫食率と年間平均喫食杯数を設定する方針とします。

構造案:
年間外食ラーメン消費杯数 = Σ(各セグメントの人口 × 各セグメントの外食ラーメン喫食率 × 各セグメントの年間平均喫食杯数)

主要セグメント(例):

  • 男性:20~30代、40~50代、60代以上
  • 女性:20~30代、40~50代、60代以上
  • (10代も考慮するが、外食頻度は低いと仮定し、20代に含めるか、別途小さく見積もる)

ステップ4:各要素の数値設定ロジックと計算(思考時間:~3分)

簡略化のため、主要なターゲット層に絞って計算を進めることも可能です。ここでは、「ラーメンを日常的に外食で食べる可能性のある主要な年齢層」として、20歳~69歳の男女を対象とし、その中で頻度が高い層と低い層をイメージして平均値を設定するアプローチを取ります。

  • ① 対象人口(20歳~69歳と仮定):
    • 日本の総人口約1.2億人のうち、この年齢層が約6割程度を占めると仮定。
    • 1.2億人 × 0.6 = 約7,200万人
  • ② 外食ラーメン喫食率(この対象人口のうち、年に1回以上外食でラーメンを食べる人の割合):
    • ラーメンは国民食であり、外食の選択肢としても非常に一般的。
    • 仮に、この対象人口の80%が年に1回以上は外食でラーメンを食べると仮定。
      • → 喫食者数 = 7,200万人 × 0.8 = 約5,760万人(約5,800万人と丸める)
  • ③ 年間平均喫食杯数(喫食者1人あたり):
    • セグメントごとのイメージ:
      • ヘビーユーザー(週1回以上):主に男性若年層~中年層。年間50杯以上。
      • ミドルユーザー(月1~2回):男女問わず幅広い層。年間12~24杯。
      • ライトユーザー(数ヶ月に1回~年1回):女性や健康志向の層。年間1~6杯。
    • 全体の平均値の仮定: 上記のバランスを考慮し、喫食者全体の平均として、月に1杯程度、年間で12杯と仮定。
      • BCG的深掘りポイント: 「本当に平均12杯で妥当か?男性のヘビー層が平均を押し上げているのでは?逆に女性のライト層が押し下げているのでは?」といった議論の余地がある。時間があれば、男女・年齢層別のセグメントで加重平均を取るとより説得力が増す。
      • 簡易的な加重平均の試み(思考の過程として):
        • 男性(対象人口の半分=2,900万人):平均月1.5杯(年18杯)
        • 女性(対象人口の半分=2,900万人):平均月0.5杯(年6杯)
        • 加重平均 = (18杯 × 0.5) + (6杯 × 0.5) = 9杯 + 3杯 = 12杯。この仮定なら妥当か。

計算実行:
年間外食ラーメン消費杯数 = 5,800万人 × 12杯/人・年
年間外食ラーメン消費杯数 = 69,600万杯
年間外食ラーメン消費杯数 = 約7億杯 (6.96億杯)

ステップ5:リアリティチェックと結論のまとめ方(思考時間:~1分)

  • 国民一人当たりに換算:
    • 約7億杯 ÷ 日本の総人口1.2億人 ≒ 約5.8杯/人・年。
    • つまり、赤ちゃんから高齢者まで含めた全国民が、年に約6杯(2ヶ月に1杯)外食でラーメンを食べている計算。これは感覚的に大きく外れてはいないか?(やや少ないと感じる人もいるかもしれないし、妥当と感じる人もいるだろう。重要なのは、自分の感覚と照らし合わせること)
  • 供給側からの簡易検証(超概算):
    • 仮にラーメン提供店が全国に5万軒あり、1店舗あたり1日平均50杯提供すると仮定。
    • 5万軒 × 50杯/日 × 300日/年(営業日数)= 7.5億杯。オーダーとしては近い。
      • (この検証は、面接官に「他のアプローチは?」と聞かれた際の引き出しとして有効)

面接官への報告(例):
「日本で年間に消費される外食のラーメンは、約7億杯と推定いたしました。

算出の根拠としましては、まず日常的に外食でラーメンを食べる可能性のある20歳から69歳の人口を約7,200万人と設定しました。
そのうち、年に1回以上外食でラーメンを召し上がる方の割合を80%とし、約5,800万人と仮定しました。
そして、これらの喫食者の方々が、1人あたり年間平均で12杯(月に1杯ペース)の外食ラーメンを消費すると仮定いたしました。
これらを掛け合わせ、5,800万人 × 12杯で、約6.96億杯、およそ7億杯と算出いたしました。

国民一人当たりに換算すると年間約6杯となり、外食の頻度としては妥当な範囲ではないかと考えております。より精度を高めるには、年齢層や性別、地域(都市部 vs 地方)などでセグメントを分け、それぞれの喫食頻度や喫食率をより詳細に設定する必要があるかと存じます。」

ディスカッションのポイント:

  • セグメンテーションの深掘り: 「なぜその年齢層で区切ったのですか?」「学生や70代以上の影響は?」
  • 「外食」の定義の再確認: 「フードコートや社員食堂での消費はどの程度見込んでいますか?」
  • 地域差の考慮: 「都市部と地方で、ラーメン店の数や利用頻度に差はあると考えますか?」
  • トレンドの影響: 「最近の健康志向の高まりは、ラーメン消費にどう影響していると考えますか?」

このお題では、日常的な消費行動に対する洞察力と、それを数値に落とし込む際の仮定設定の巧みさが評価されます。また、ディスカッションを通じて、より解像度の高い分析へと進められる柔軟性も重要です。


次は、3つ目の例題「日本に電話は何器あるか」の解説に進みます。これは「モノの数」を推定する典型的な問題ですが、「電話」の定義が鍵となります。

4. 【BCG過去問解説③】日本に電話は何器あるか

最後の例題は、日本国内に存在する「電話」の総数を推定する問題です。このお題の最大のポイントは、「電話」という言葉が指す範囲をどのように定義し、それをMECE(モレなくダブりなく)に分解・構造化できるかという点にあります。

お題:日本に電話は何器あるか。(制限時間:例として5~7分程度を想定)

ステップ1:前提確認と「電話」の定義(思考時間:~1分30秒)

まず、「電話」という言葉が指す対象を具体的に定義し、推定のスコープを明確にします。

  • 「電話」の種類:
    1. 固定電話(アナログ回線、ISDN、光IP電話など): 家庭用、事業所用。
    2. 携帯電話(フィーチャーフォン、ガラケー): 個人用、法人契約。
    3. スマートフォン(スマホ): 個人用、法人契約。これも「電話」機能を持つため含める。
    4. 公衆電話: 現在は数が激減しているが、存在するものはカウント対象か。
    5. その他特殊な電話機: 衛星電話、船舶電話、インターホン(これは通話機能があっても「電話網」に接続されていないものは除くか)など。
  • スコープの決定:
    • 今回は、一般的に広く利用されている①固定電話、②携帯電話、③スマートフォンを主要な対象とし、④公衆電話は数が非常に少なく影響が軽微であると判断し除外(または最後に少数加算)、⑤その他特殊な電話機も除外すると仮定します。
    • 「日本に」とは、日本国内で現在利用されている(または利用可能な状態にある)電話機を指すとします。個人の所有物だけでなく、法人が所有し従業員に貸与しているものも含む。

面接官への確認(例):
「『日本に電話は何器あるか』というご質問ですが、ここでいう『電話』とは、主に固定電話、携帯電話(フィーチャーフォン)、そしてスマートフォンを指し、現在日本国内で利用されている総数を推定するという理解でよろしいでしょうか? 公衆電話やその他特殊な電話機は、数が非常に少ないと想定されるため、今回は主要な3種類に絞って考えたいと思います。」

ステップ2:アプローチの選択(思考時間:~1分)

電話の総数を推定するアプローチとして、主に以下のものが考えられます。

  1. 保有主体別アプローチ:
    • 電話を保有する主体(個人、法人、公共など)ごとに分けて推定し、合算する。
    • これが最も構造的に捉えやすく、モレも発生しにくいアプローチと考えられます。
  2. 電話回線数アプローチ:
    • 日本国内の総電話回線数(固定、携帯)から推定する。ただし、1回線で複数端末(例:家庭内コードレス子機)が存在する場合や、1人で複数回線(スマホ2台持ちなど)を持つ場合があり、端末数との紐づけが複雑。
  3. メーカー出荷台数アプローチ:
    • 過去からの累計出荷台数から、廃棄分を差し引いて推定する。非常に難易度が高い。

今回は、保有主体別アプローチを選択し、特に大きな割合を占める「個人保有」と「法人保有」に分けて考えます。

ステップ3:選択したアプローチに基づく分解と構造化(思考時間:~2分)

日本の電話総数 = ①個人保有の電話数 + ②法人保有の電話数

① 個人保有の電話数 = (A)固定電話数 + (B)携帯電話数 + (C)スマートフォン数

  • (A) 個人保有の固定電話数:
    • 日本の総世帯数 × 固定電話保有率 × 1世帯あたり平均台数(子機含む)
  • (B) 個人保有の携帯電話数(フィーチャーフォン):
    • 日本の人口 × 携帯電話保有率(スマホ除く)× 1人あたり平均保有台数
  • (C) 個人保有のスマートフォン数:
    • 日本の人口 × スマートフォン普及率 × 1人あたり平均保有台数

② 法人保有の電話数 = (D)固定電話数 + (E)携帯電話・スマートフォン数

  • (D) 法人保有の固定電話数:
    • 日本国内の事業所数 × 1事業所あたり平均固定電話設置台数
  • (E) 法人保有の携帯電話・スマートフォン数(社用携帯・スマホ):
    • 日本国内の就業者数 × 社用携帯・スマホ支給率 × 1人あたり平均支給台数

思考のポイント:

  • 個人と法人で、電話の種類ごとの保有目的や保有形態が異なるため、分けて考えるのが自然。
  • スマートフォンの普及により、個人の固定電話やフィーチャーフォンの保有率は低下していることを考慮する。
  • 法人の固定電話は依然としてオフィスに必須だが、携帯・スマホへのシフトも進んでいる。

ステップ4:各要素の数値設定ロジックと計算(思考時間:~3分)

  • ① 個人保有の電話数:
    • 日本の総人口:約1.2億人
    • 日本の総世帯数:約5,500万世帯 (1世帯あたり平均約2.2人)
    • (A) 個人保有の固定電話数:
      • 固定電話保有率:減少傾向。仮に40%(約2,200万世帯)と仮定。
      • 1世帯あたり平均台数:親機+子機1台程度で、平均1.5台と仮定。
      • 計算:2,200万世帯 × 1.5台/世帯 = 3,300万台
    • (B) 個人保有の携帯電話数(フィーチャーフォン):
      • 保有者は高齢者中心。仮に人口の10%(1,200万人)が保有、1人1台と仮定。
      • 計算:1,200万人 × 1台/人 = 1,200万台
    • (C) 個人保有のスマートフォン数:
      • スマートフォン普及率:非常に高い。仮に人口の80%(9,600万人)と仮定。
      • 1人あたり平均保有台数:複数台持ちもいるが、平均ではほぼ1台。1.1台と仮定(仕事用とプライベート用など)。
      • 計算:9,600万人 × 1.1台/人 ≒ 1億560万台 (約1億600万台)
    • 個人保有合計 ≈ 3,300万 + 1,200万 + 1億600万 = 1億5,100万台
  • ② 法人保有の電話数:
    • 日本国内の事業所数:約500万~600万事業所。仮に550万事業所と仮定。
    • 日本国内の就業者数:約6,500万人。
    • (D) 法人保有の固定電話数:
      • 1事業所あたり平均固定電話設置台数:オフィスの規模によるが、代表電話、各部署、FAX兼用など。平均5台と仮定。
      • 計算:550万事業所 × 5台/事業所 = 2,750万台
    • (E) 法人保有の携帯電話・スマートフォン数:
      • 社用携帯・スマホ支給率:営業職など外勤が多い職種では高いが、内勤では低い。就業者全体の平均で20%と仮定。
      • 1人あたり平均支給台数:基本的に1台。1台と仮定。
      • 計算:6,500万人 × 0.20 × 1台/人 = 1,300万台
    • 法人保有合計 = 2,750万 + 1,300万 = 4,050万台

ステップ5:合計とリアリティチェック、結論のまとめ方(思考時間:~1分30秒)

  • 日本の電話総数の合計:
    個人保有(約1億5,100万台) + 法人保有(約4,050万台)
    約1億9,150万台 (約1.9億台と丸める)
  • リアリティチェック:
    • 国民一人当たりに換算:約1.9億台 ÷ 1.2億人 ≒ 約1.6台/人。
      • スマホ1台+家の固定電話or社用携帯の一部、と考えると、あり得ない数字ではなさそう。
    • スマートフォンの契約回線数(MNO+MVNOで1.9億回線超というデータがある)と比較して、個人保有スマホ数1億600万台はやや少ないかもしれないが、1人で複数回線契約しているケースや法人契約も含まれるため、大きくは矛盾しないか。
    • 固定電話の総回線数(約5千万回線弱というデータがある)と比較して、個人3,300万+法人2,750万=6,050万台は、1回線に複数端末があることを考えれば、オーダーとしては近い可能性。

面接官への報告(例):
「日本に存在する電話の総数は、約1.9億器と推定いたしました。

この数値は、個人が保有する電話と法人が保有する電話の合計として算出しました。
まず、個人保有の電話については、固定電話が約3,300万台、携帯電話(フィーチャーフォン)が約1,200万台、スマートフォンが約1億600万台と推定し、合計で約1億5,100万台となりました。固定電話は1世帯あたり保有率40%・平均1.5台、携帯電話は人口の10%が1台保有、スマートフォンは人口の80%が平均1.1台保有と仮定しました。
次に、法人保有の電話については、固定電話が約2,750万台、社用の携帯電話・スマートフォンが約1,300万台と推定し、合計で約4,050万台となりました。固定電話は1事業所あたり平均5台、社用携帯・スマホは就業者の20%が1台支給と仮定しました。
これらを合計し、約1.9億器と算出いたしました。

国民一人当たりに換算すると約1.6器となり、スマートフォンの普及状況や固定電話の残存状況を考慮すると、大きくは外れていない桁感だと考えております。より精度を高めるためには、スマートフォンの2台持ちの割合や、法人における電話利用の実態について詳細なデータが必要になると考えます。」

ディスカッションのポイント:

  • 「電話」の定義の妥当性: なぜ公衆電話を除外したのか?インターホンはなぜ電話ではないと判断したのか?
  • 各パラメータの深掘り: スマートフォン普及率80%の根拠は? 法人の固定電話設置台数5台のイメージは?
  • ダブルカウントの可能性: 個人が仕事用のスマホを私用でも使っている場合、法人と個人でダブルカウントされていないか?(今回の計算方法では、あくまで「保有主体」で分けているため、端末ベースではダブルカウントは発生しにくいが、論点としてはあり得る)
  • 今後のトレンド: 今後、この電話の総数は増えるか減るか?固定電話は減少、スマホは飽和、IoTデバイスとしての「通話機能付き端末」は増える?

このお題では、曖昧な言葉をいかに具体的に定義し、MECEな構造に落とし込み、それぞれの要素に対して納得感のある仮定を置けるかが重要です。また、ディスカッションの中で、より詳細な論点や将来の展望にまで思考を広げられると高評価に繋がります。


次の章では、これら3つの高難易度フェルミ推定を通じて見えてくる、共通の戦略と対策法についてまとめます。

5. 高難易度フェルミ推定を突破するための共通戦略と対策法

ここまで3つの高難易度フェルミ推定問題(熱海温泉の観光客数、外食ラーメンの消費杯数、日本の電話総数)の解説を通じて、BCGが求める思考力やアプローチの一端が見えてきたかと思います。これらの問題にはそれぞれ固有の難しさがありますが、共通して有効な戦略と対策法が存在します。

1. 「前提確認」と「定義づけ」を極めて重視する

  • 曖昧さの排除: 高難易度な問題ほど、お題に含まれる言葉の定義が曖昧で、解釈の幅が広くなりがちです。「観光客とは誰か?」「外食とはどこまでか?」「電話とは何を含むのか?」――これらの初期設定を面接官と徹底的にすり合わせ、議論の土台を固めることが、その後の思考のブレを防ぎ、質の高いアウトプットに繋がる最初の、そして最も重要なステップです。
  • スコープの明確化: 推定する範囲(時間、地域、対象物など)を明確にすることで、思考の拡散を防ぎ、限られた時間内で効率的に結論に到達することができます。「今回は〇〇に絞って考えます、なぜなら~」というように、スコープ設定の理由を論理的に説明できるようにしましょう。

2. アプローチの「引き出し」を複数持ち、戦略的に選択する

  • 多様な視点からのアプローチ想起: 一つの問題に対しても、需要ベース、供給ベース、保有主体別、交通手段別など、複数のアプローチが考えられます。日頃から様々なフェルミ推定のお題に触れ、多様な「切り口」や「構造化の型」の引き出しを増やしておくことが重要です。
  • お題の特性に合わせた最適アプローチの選択: どの情報を入手しやすく、どの仮定が置きやすいか、お題の特性や自分の知識ベースを考慮して、最も論理的かつ効率的に結論に到達できるアプローチを戦略的に選択します。なぜそのアプローチを選んだのか、他のアプローチの課題は何かを説明できると、思考の深さを示せます。

3. 「構造化」で思考を見える化し、論点を整理する

  • MECEかつ意味のある分解: 複雑な問題を、モレなくダブりなく、かつ本質的な要素に分解する能力は、フェルミ推定の核となるスキルです。単純な足し算や掛け算の構造だけでなく、セグメンテーションや構成比といった考え方も活用し、問題の全体像を分かりやすく提示します。
  • 思考の地図としての構造: 構造化は、単に計算のためだけでなく、自分自身の思考を整理し、面接官に思考プロセスを伝えるための「地図」としての役割も果たします。

4. 「仮定(パラメータ)」に魂を込める(論拠の明確化)

  • 肌感覚と論理の融合: 各パラメータに数値を設定する際には、自分の持つ肌感覚や一般常識を活かしつつも、「なぜその数値を置いたのか」という論理的な根拠を必ず持つようにします。アナロジー(類似事例からの推論)、既知のデータ(人口、世帯数など)からの演繹、簡単な逆算などが有効です。
  • 数値のレンジと感度: 設定した数値が絶対的な正解である必要はありません。むしろ、「この数値は〇〇~△△の範囲で変動しうるが、今回は□□と置く」といったように、数値の幅や、その数値が結果に与える影響度(感度)を意識していることを示す方が重要です。

5. 「リアリティチェック」で結論の妥当性を検証する

  • 多角的な検証: 算出した数値が、常識的な範囲から大きく逸脱していないか、他の指標(人口、GDP、類似市場規模など)と比較したり、異なるアプローチで簡易的に再計算したりすることで、結論の妥当性を検証します。
  • 「何かおかしい」という直感を大切に: 計算プロセスは論理的でも、結果として出てきた数値に違和感を覚える場合は、前提や仮定に誤りがないか、見落としている要素がないかを再検討する勇気も必要です。

6. 「ディスカッション」を思考進化の機会と捉える

  • 結論ファーストとプロセス説明: まず推定結果を明確に提示し、その後でその算出に至った論理構造、主要な仮定とその根拠を簡潔に説明します。
  • 質問への的確な応答と柔軟な修正: 面接官からの質問や指摘は、あなたの思考を深めるための絶好の機会です。意図を正確に汲み取り、論理的に応答するとともに、必要であれば自分の仮説や構造を柔軟に修正・進化させる姿勢が求められます。
  • 「なぜ?」への準備: 特にBCGでは、「なぜそのように考えたのですか?」という深掘りが繰り返されます。自分の思考の各ステップに対して、常に「なぜ?」という問いを自問自答し、その答えを準備しておくことが重要です。

7. 「時間管理」を徹底し、必ず結論を出す

  • 時間配分の意識: 各ステップ(前提確認、アプローチ選択、構造化、数値設定・計算、検証、まとめ)に、あらかじめ大まかな時間配分を意識しておくことが重要です。
  • 完璧よりも完成: 時間内に完璧な推定をすることは不可能です。ある程度のところで割り切り、論理的なプロセスを示しながら、必ず何らかの結論(数値)を提示することが最優先です。

これらの共通戦略と対策法は、日々の地道なトレーニングによって磨かれます。多様なお題に触れ、実際に手を動かして計算し、そして自分の思考プロセスを他者に説明する練習を繰り返すことが、BCGの高難易度フェルミ推定を突破するための王道と言えるでしょう。

次の最終章では、本記事のまとめとして、BCGの難問を制し、コンサルタントへの扉を開くための総括を行います。

6. まとめ:BCGの難問を制し、コンサルタントへの扉を開く

本記事では、MBB内定者がBCGの過去問(高難易度フェルミ推定)3問を題材に、その思考プロセス、アプローチの選択、数値設定のロジック、そして面接官が評価するポイントについて徹底的に解説してきました。

「熱海温泉の年間観光客数」「外食ラーメンの年間消費杯数」「日本の電話総数」――これら一見すると捉えどころのないお題に対して、

  1. 曖昧さを排し、議論の土台を固める「前提確認と定義づけ」
  2. 多様な視点から最適な道筋を選ぶ「アプローチ選択」
  3. 複雑な情報を整理し、思考を見える化する「構造化」
  4. リアリティと論拠を持って数値を置く「仮定設定」
  5. 多角的な視点で結論の妥当性を吟味する「リアリティチェック」
  6. 対話を通じて思考を進化させる「ディスカッション力」
  7. 限られた時間で必ず結論を出す「時間管理と完遂力」

といった、戦略コンサルタントに不可欠な思考の「型」と「スタンス」を駆使して立ち向かうことの重要性をご理解いただけたかと思います。

BCGの高難易度フェルミ推定が問いかけるもの

BCGがこれらの難易度の高いフェルミ推定を通じて見極めようとしているのは、単なる計算能力や知識量ではありません。それは、

  • 未知の課題に対する「知的タフネス」と「問題解決への執着心」
  • 複雑な現実を構造的に捉え、本質を見抜く「洞察力」
  • 情報が不完全な中でも、論理と仮説を武器に前進する「思考力」
  • プレッシャーの中で冷静さを保ち、建設的な対話ができる「コミュニケーション能力」
  • そして何よりも、知的な挑戦を「楽しむことができる」マインドセット

です。これらはまさに、BCGのコンサルタントが日々クライアントの難題に立ち向かい、価値を創造していく上で不可欠な資質と言えるでしょう。

明日から実践できる対策法

高難易度フェルミ推定への対応力を高めるためには、特別な才能は必要ありません。日々の意識と地道なトレーニングが鍵となります。

  • 日常の「なぜ?」を深掘りする: 身の回りの数字や事象に対して、「なぜそうなるのか?」「どれくらいの規模なのか?」と問いを立て、自分なりに推定してみる習慣をつけましょう。
  • 多様な「切り口」をストックする: 様々なフェルミ推定のお題に触れ、多様なアプローチや構造化のパターンを学び、自分の「引き出し」を増やしましょう。
  • 「仮定の根拠」を言語化する: 数値を置く際には、必ず「なぜその数値を置いたのか」を説明する練習をします。アナロジーや比較対象を見つける訓練にもなります。
  • 「説明する」「議論する」機会を作る: 自分の思考プロセスを他者に説明し、フィードバックをもらうことで、論理の穴や説明の分かりにくさに気づくことができます。模擬面接は最も効果的なトレーニングの一つです。

Strategistsでは、これらの高難易度フェルミ推定にも対応できる本質的な思考力を養成するため、BCGを含むMBB各社の選考傾向を熟知した講師陣が、実践的な問題演習と、個々の思考プロセスにまで踏み込んだ徹底的なフィードバックを提供しています。

最後に:挑戦を楽しむ心を持って

BCGのケース面接、特に高難易度なフェルミ推定は、確かに一筋縄ではいきません。しかし、それは同時に、あなたの知的なポテンシャルを最大限に発揮し、面接官に強い印象を残す絶好の機会でもあります。

完璧な答えを出すこと以上に、粘り強く考え抜き、面接官との対話を楽しみ、その中で思考を進化させていくプロセスそのものが評価されます。

この記事が、皆さんのBCGへの挑戦、そして戦略コンサルタントとしての輝かしいキャリアへの扉を開くための一助となることを心より願っています。


戦略コンサルへの入社/転職を成功させるケース面接対策法

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