【MBB内定者が解説!】高難易度フェルミ推定に挑戦!ケース面接過去問解説シリーズ①

「戦略コンサルティングファーム、特にMBBのケース面接で出題されるフェルミ推定って、市場規模を出すだけじゃないの?」
「日本国内ならまだしも、海外の、しかも特定の製品の生産量なんて、どうやって考えればいいんだろう…」

戦略コンサル、特にMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)を目指す皆さんにとって、フェルミ推定は避けて通れない関門です。基本的な市場規模推定は対策してきたけれど、より複雑で、与えられる情報も多く、ビジネス的な洞察まで求められる「高難易度」なフェルミ推定が出題されたら…と不安に思う方もいるのではないでしょうか。

この記事では、実際にMBBの内定を獲得した筆者が、過去に出題された高難易度フェルミ推定問題(今回は「ナイジェリアのアルミ缶メーカー」を題材とします)を取り上げ、その思考プロセス、アプローチの立て方、数値設定のロジック、そして面接官がどこを見ているのかをステップバイステップで徹底解説します。

単に数値を出すだけでなく、その数値を基に比較分析を行ったり、コスト計算をしたり、さらには将来予測や価格戦略まで踏み込むこの種の問題は、あなたの地頭の良さ、論理的思考力、ビジネスセンス、そしてプレッシャー耐性を総合的に試すものです。

本記事で扱うフェルミ推定問題:

ナイジェリアにあるアルミ缶メーカーについて、以下の問いに答えよ。

  1. 一日のアルミ缶生産量はどの程度か?
  2. 日本と比較して、この生産量は多いか少ないか?
  3. (別途数値を与えられて)アルミ缶1個あたりの原価はいくらか?
  4. (別途仮定を与えられて)今後、ナイジェリアのアルミ缶市場の成長や価格設定はどうなると考えられるか?

目次

  1. 高難易度フェルミ推定とは? 通常のフェルミ推定との違いと評価ポイント
  2. 【過去問解説①】ナイジェリアのアルミ缶メーカーの「一日あたり生産量」推定
    • 前提確認とアプローチ設定の重要性(供給ベースか需要ベースか)
    • 分解と構造化(生産ライン数、稼働率、1ラインあたり生産能力など)
    • 未知の国・製品に関する数値設定のロジック
    • 計算と概算のバランス
  3. 【過去問解説②】日本との「生産量比較」と示唆の導出
    • 比較対象(日本のアルミ缶総生産量 or 一工場あたり生産量)の明確化
    • 比較から見えてくるビジネス上の示唆(生産性、市場規模、技術レベルなど)
  4. 【過去問解説③】「原価計算」と感度分析
    • 与えられた数値に基づく原価構成要素の分解と計算
    • 主要なコストドライバーの特定と、変動要因の考察
  5. 【過去問解説④】「市場成長と価格戦略」の考察
    • 与えられた仮定に基づく市場成長ドライバーの分析
    • 価格弾力性、競合状況、コスト構造を考慮した価格戦略の方向性
  6. MBB面接官からの「一言アドバイス」と「差がつくポイント」
  7. まとめ:高難易度フェルミを制し、思考の深さを示す

ここからは、まず「高難易度フェルミ推定」とは何か、その特徴と評価ポイントから見ていきましょう。



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1. 高難易度フェルミ推定とは? 通常のフェルミ推定との違いと評価ポイント

通常のフェルミ推定が「日本国内の牛丼の年間市場規模は?」といった、比較的馴染みのある対象や、シンプルな構造で数値を推定するものであるのに対し、高難易度フェルミ推定は、その複雑性や求められる思考の範囲が格段に広がります。

高難易度フェルミ推定の主な特徴:

  1. 馴染みの薄い国・地域・製品が対象となる:
    • 今回の「ナイジェリアのアルミ缶」のように、日常生活で接する機会の少ない国や製品がテーマとなることがあります。これにより、前提知識に頼らず、純粋な論理構築力や仮説設定能力が試されます。
  2. 複数の問いが連続する多段階形式:
    • 単一の数値を推定して終わりではなく、その結果を用いて比較分析を行ったり、追加情報に基づいてコスト計算や将来予測を行ったりと、複数の問いが連なって出題されることが多いです。
  3. 与えられる情報(インプット)が多い場合がある:
    • 問題文中に、参考となる数値データや特定の仮定が提示されることがあります。これらの情報を的確に理解し、自分の推定ロジックにどう組み込むかが問われます。
  4. ビジネス的な洞察や示唆が求められる:
    • 単に数値を出すだけでなく、その数値が持つビジネス上の意味合い(例:生産性は高いのか低いのか、市場は魅力的か否か)や、そこから導き出される戦略的な示唆についてまで言及を求められることがあります。
  5. 思考の柔軟性とストレス耐性が試される:
    • 未知のテーマや複雑な問いに対して、パニックにならずに冷静に思考を組み立て、制限時間内に一定の結論を出す能力が重要になります。面接官からの鋭いツッコミやプレッシャーの中で、どれだけ思考を維持・発展させられるかも見られています。

通常のフェルミ推定との評価ポイントの違い:

基本的な評価ポイント(論理的思考力、構造化能力、コミュニケーション能力など)は共通していますが、高難易度フェルミ推定では、特に以下の点が追加で、あるいはより重点的に評価される傾向にあります。

  1. 未知の状況への対応能力(Problem Solvingの本質):
    • 情報が少ない、あるいは馴染みのない状況でも、臆することなく問題に取り組み、自分なりに仮説を立てて論理を構築できるか。コンサルタントが日常的に直面する「答えのない問い」への対応力そのものです。
  2. 情報の取捨選択と活用能力:
    • 与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、何が重要で、何が自分の推定ロジックに必要かを取捨選択し、的確に活用できるか。情報過多の状況で本質を見抜く力。
  3. 数値からビジネスへの接続力(So What? Why So?):
    • 算出した数値が「だから何なのか?(So What?)」、「なぜそうなっているのか?(Why So?)」を常に考え、ビジネスの文脈で意味づけられるか。単なる計算力ではなく、ビジネス的な洞察力が問われます。
  4. 段階的な思考の積み重ねと一貫性:
    • 複数の問いが連なる場合、前の問いの答えを次の問いのインプットとして適切に活用し、一貫した論理で思考を積み重ねていけるか。
  5. ディスカッションにおける思考の深まり:
    • 面接官との対話を通じて、初期の推定や考察を修正・深化させ、より質の高い結論へと導けるか。インタラクティブな問題解決能力。

高難易度フェルミ推定は、まさにコンサルタントの思考様式を凝縮したような課題です。単なる「推定ゲーム」ではなく、ビジネス課題解決のミニチュア版と捉え、真摯に取り組む姿勢が重要になります。

続いて、「ナイジェリアのアルミ缶メーカーの一日あたり生産量」の推定に入ります。

2. 【過去問解説①】ナイジェリアのアルミ缶メーカーの「一日あたり生産量」推定

高難易度フェルミ推定の最初の関門、ナイジェリアのアルミ缶メーカーの一日あたり生産量を推定していきましょう。馴染みのない国、馴染みのない具体的なメーカーが対象となるため、前提知識に頼らず、論理的に思考を組み立てる力が試されます。

お題:ナイジェリアにあるアルミ缶メーカーの、一日あたりアルミ缶生産量はどの程度か?(制限時間:例として5~7分程度を想定)

ステップ1:前提確認とアプローチ設定の重要性(思考時間:~1分)

まず、このお題をどう捉え、どのようなアプローチで生産量を推定するかを明確にします。特に「ナイジェリアのアルミ缶メーカー」という記述が曖昧なため、ここを具体化する必要があります。

  • 「ナイジェリアのアルミ缶メーカー」の特定:
    • ナイジェリアにアルミ缶メーカーは1社だけなのか?複数あるのか?
    • もし複数あるなら、特定の1社を指すのか、業界全体の総生産量をナイジェリア国内のメーカー数で割るのか?
    • お題のニュアンスからは「ある特定の1社」を指しているように読めます。仮に、ナイジェリア国内で中規模~大規模の、標準的なアルミ缶メーカー1社を想定することにします。
  • 「アルミ缶」の定義:
    • 飲料用か?食品用か?スプレー缶のようなものも含むか?
    • 一般的に「アルミ缶」と聞いて想起しやすい飲料用アルミ缶(炭酸飲料、ビールなど)を主に対象と仮定します。サイズも標準的な350ml缶や500ml缶を想定。
  • 「一日あたり生産量」の単位:
    • 「本数」で答えるのが最も分かりやすいでしょう。
  • アプローチの選択:
    生産量を推定するアプローチは主に2つ考えられます。
    1. 供給ベース(メーカーの生産能力起点):
      • メーカーの生産ライン数 × 1ラインあたりの生産能力(本/時間)× 1日の稼働時間 × 稼働率
      • このアプローチは、工場の具体的な設備や操業状況を仮定する必要があり、未知の国のメーカーについては難易度が高いですが、「メーカーの生産量」を直接問われているため、本筋のアプローチと言えます。
    2. 需要ベース(ナイジェリア国内のアルミ缶消費量起点):
      • ナイジェリアのアルミ缶年間消費総数 ÷ 年間稼働日数 ÷ 国内メーカー数(または当該メーカーの市場シェアから逆算)
      • このアプローチは、ナイジェリア全体のアルミ缶消費量をまず推定する必要があり、さらにメーカー数やシェアといった不確定要素が増えます。今回は「1メーカーの生産量」なので、やや遠回りになる可能性があります。
    総合的に考え、今回は供給ベース(メーカーの生産能力起点)で推定を進めることにします。ただし、需要ベースの考え方も、後の「日本との比較」や「市場成長」を考える上で参考になるため、頭の片隅には置いておきます。

面接官への確認(例):
「ナイジェリアにある、飲料用アルミ缶を主に生産している中規模~大規模の標準的なメーカー1社の一日あたり生産量を、本数ベースで推定するという理解でよろしいでしょうか? アプローチとしては、そのメーカーの生産ライン数、1ラインあたりの生産能力、1日の稼働時間、稼働率といった要素から積み上げる供給ベースで考えたいと思います。」

ステップ2:分解と構造化(思考時間:~1分30秒)

供給ベースのアプローチを、具体的な計算要素に分解・構造化します。

一日あたり生産量 = ①生産ライン数 × ②1ラインあたり時間あたり生産能力 × ③1日の平均稼働時間 × ④平均稼働率

ここで、各要素について、ナイジェリアという国やアルミ缶製造という特性を考慮しながら、どのような仮定を置くか、その論点を整理します。

  • ① 生産ライン数:
    • ナイジェリアの工業レベル、当該メーカーの規模感(中~大規模と仮定)を考慮。
    • 日本の中規模~大規模飲料工場のライン数を参考にできるか?(ただし、ナイジェリアは発展途上国である可能性も考慮)
  • ② 1ラインあたり時間あたり生産能力:
    • アルミ缶の製造プロセス(成形、印刷、充填など)の一般的な速度。
    • 技術レベルによって大きく左右される。日本の最新鋭工場と、ナイジェリアの標準的な工場では差がある可能性。
  • ③ 1日の平均稼働時間:
    • 24時間操業か?日中のみか?シフト制の有無。
    • 電力供給の安定性なども影響する可能性(ナイジェリアのインフラ状況)。
  • ④ 平均稼働率:
    • メンテナンス時間、段取り替え、故障などによる停止時間を考慮。
    • 原材料調達の安定性も影響する可能性。

ステップ3:未知の国・製品に関する数値設定のロジックと計算(思考時間:~3分)

ここが最も難しいポイントです。ナイジェリアのアルミ缶工場の具体的な数値は誰も知りません。重要なのは、完全に当てずっぽうではなく、何かしらの「推論の足掛かり」を見つけて、論理的に数値を設定することです。

  • ① 生産ライン数:
    • 推論の足掛かり: 日本の中規模飲料工場が例えば5~10ライン程度持つと仮定。ナイジェリアは発展途上国であり、1社あたりの生産規模は日本より小さいかもしれないし、逆に国内メーカーが少なく1社に集約されている可能性もある。
    • 仮定: 中規模の工場で、汎用性の高い生産ラインを想定し、3ラインと仮定する。(やや少なめに見積もる)
      • 理由: 過度な大規模生産はリスクが高い。汎用ラインで多品種に対応している可能性。
  • ② 1ラインあたり時間あたり生産能力:
    • 推論の足掛かり: アルミ缶の生産スピード。高速なラインでは1分間に数百~千本レベル。
    • 日本の自動化されたラインでは非常に高速だが、ナイジェリアではそこまで最新鋭ではないと仮定。
    • 仮に、1分あたり300本程度、1時間あたり 300本/分 × 60分 = 18,000本/時間 と仮定。
      • 理由: 日本の半分~数分の一程度の生産効率と想定。
  • ③ 1日の平均稼働時間:
    • 推論の足掛かり: 工場はコスト効率を考えると長時間稼働が一般的。3交代制の24時間稼働が理想だが、ナイジェリアの労働環境や電力事情を考慮。
    • 仮に、2シフト制で、実質的な稼働時間は16時間/日と仮定。
      • 理由: 24時間フル稼働はインフラ的に難しい可能性。
  • ④ 平均稼働率:
    • 推論の足掛かり: 先進国の工場でも稼働率は100%にはならず、80~90%程度。ナイジェリアではメンテナンス技術や部品調達の面で、やや低めになると想定。
    • 仮に、75%(3/4)と仮定。
      • 理由: 計画停止や突発的なトラブルを考慮。

計算実行:
一日あたり生産量 = 3ライン × 18,000本/時間・ライン × 16時間/日 × 0.75
一日あたり生産量 = 3 × 18,000 × 16 × 3/4
一日あたり生産量 = 3 × 18,000 × 12
一日あたり生産量 = 3 × 216,000
一日あたり生産量 = 648,000本

概算と丸め:
約65万本。計算途中でもっとキリの良い数字に丸めても良い(例:18,000本→20,000本、稼働時間16時間→15時間など)。その場合は、最終的な数値も概数で「約〇〇万本」と答える。

ステップ4:リアリティチェックと結論(思考時間:~30秒)

  • ナイジェリアの人口との関連(簡易的な需要側からの検証):
    • ナイジェリアの人口は約2億人。仮に全国民が1年に1本アルミ缶飲料を飲むとすると2億本。1日あたり約55万本。もし1メーカーが国内シェアの数割を占めるとすれば、数十万本というオーダーはありえなくはないか?(ただし、これは非常にラフな検証)
  • 仮定の妥当性再確認:
    • 特に生産ライン数や1ラインあたりの生産能力は、仮定の置き方で大きく数値が変わる。なぜその仮定を置いたのか、代替の仮定(もっと楽観的/悲観的なシナリオ)も頭の中で用意しておく。

面接官への報告(例):
「ナイジェリアのアルミ缶メーカー1社の一日あたり生産量は、約65万本と推定しました。
算出の根拠としましては、まず当該メーカーが保有する生産ライン数を3ラインと仮定しました。
次に、1ラインあたりの1時間あたりの生産能力を、日本の自動化ラインよりは低いと想定し、18,000本と置きました。
1日の平均稼働時間は2シフト制の16時間、平均稼働率をメンテナンス等を考慮し75%と仮定しました。
これらを掛け合わせ、3ライン × 18,000本/時間 × 16時間 × 0.75 で、約65万本と算出いたしました。
ナイジェリアの人口(約2億人)から大まかに国内需要を考えると、1メーカーで数十万本というオーダーは、国内に複数のメーカーが存在し、一定のシェアを持つと仮定すれば、大きくは外れていない可能性もあるかと考えております。ただし、生産ラインの技術レベルやメーカーの規模感によって、この数値は変動しうると認識しております。」

ディスカッションのポイント:

  • 仮定の根拠の深掘り: 「なぜ3ラインなのですか?」「1時間18,000本の根拠は?」といった質問に対し、推論のプロセスを説明する。
  • 感度分析の意識: 「もしライン数が倍だったら?」「稼働率がもっと低かったら?」といった、どのパラメータが結果に大きく影響するか(感度が高いか)を理解しているか。
  • 思考の幅: 「他にどのようなアプローチでこの数値を検証できますか?」といった問いに備える。

この最初の問いで重要なのは、完璧な数値ではなく、未知の状況に対して論理的に思考を組み立て、説明責任を果たせるかどうかです。


続いて、この結果を用いて「日本との生産量比較」に進みます。

3. 【過去問解説②】日本との「生産量比較」と示唆の導出

ナイジェリアのアルミ缶メーカーの一日あたり生産量を約65万本と推定しました。次の問いは、この生産量が日本と比較して多いのか少ないのか、そしてそこから何が言えるのか、というビジネス的な洞察を求めるものです。

お題:その生産量(ナイジェリアのアルミ缶メーカーの一日あたり約65万本)は、日本と比較して多いと考えますか、少ないと考えますか?また、そこからどのようなことが示唆されますか?(制限時間:例として3~5分程度を想定)

ステップ1:比較対象の明確化(思考時間:~30秒)

「日本と比較して」という問いは曖昧です。何と比較するのかを具体的に設定する必要があります。

  • 比較対象の候補:
    1. 日本のアルミ缶総生産量(一日あたり): これと比較すると、ナイジェリアの1メーカーの生産量は当然少ないでしょう。あまり意味のある比較とは言えません。
    2. 日本の主要アルミ缶メーカー1社の一日あたり平均生産量: これが最も妥当な比較対象と考えられます。
    3. 日本の1工場あたりの一日あたり平均生産量: メーカー規模ではなく、工場単位での比較も考えられますが、今回は「メーカー」と比較するのが自然です。

ここでは、「日本の主要アルミ缶メーカー1社(またはそれに準ずる規模の工場)の一日あたり平均生産量」を比較対象と設定します。

面接官への確認(例):
「日本との比較とのことですが、日本のアルミ缶総生産量ではなく、日本の代表的なアルミ缶メーカー1社(あるいは1工場)の一日あたり平均生産量と比較するという理解でよろしいでしょうか?」

ステップ2:日本のメーカー(工場)の生産量推定(思考時間:~2分)

ナイジェリアのケースと同様に、供給ベースで日本のメーカー(工場)の生産量を推定します。日本の工業レベルや市場規模を考慮して数値を設定します。

一日あたり生産量(日本) = ①生産ライン数 × ②1ラインあたり時間あたり生産能力 × ③1日の平均稼働時間 × ④平均稼働率

  • ① 生産ライン数(日本の大規模工場を想定):
    • 仮定: 日本の効率的な大規模工場であれば、10ライン程度は保有していると仮定。(ナイジェリアの3ラインより多い)
      • 理由: 国内需要の大きさと、集約された生産体制を考慮。
  • ② 1ラインあたり時間あたり生産能力:
    • 仮定: 日本の技術レベルは高く、自動化も進んでいるため、ナイジェリアのラインより効率的。仮に、1分あたり1,000本、1時間あたり 1,000本/分 × 60分 = 60,000本/時間 と仮定。(ナイジェリアの18,000本よりかなり多い)
      • 理由: 最新鋭の設備と高い技術力を想定。
  • ③ 1日の平均稼働時間:
    • 仮定: 日本の工場も3交代制の24時間稼働に近いが、効率化や労働環境配慮から、実質20時間/日と仮定。(ナイジェリアの16時間よりやや長い)
  • ④ 平均稼働率:
    • 仮定: メンテナンス技術も高く、計画的な生産が行われているため、90%と仮定。(ナイジェリアの75%より高い)

計算実行(日本):
一日あたり生産量(日本) = 10ライン × 60,000本/時間・ライン × 20時間/日 × 0.9
一日あたり生産量(日本) = 10 × 60,000 × 18
一日あたり生産量(日本) = 10 × 1,080,000
一日あたり生産量(日本) = 1,080万本

ステップ3:比較と結論(思考時間:~30秒)

  • ナイジェリアのメーカー(推定):約65万本/日
  • 日本のメーカー(推定):約1,080万本/日

結論:
ナイジェリアのアルミ缶メーカーの一日あたり生産量は、日本の主要メーカー(または大規模工場)と比較すると、大幅に少ない(約1/16程度)と考えられます。

ステップ4:示唆の導出(思考時間:~1分30秒)

この生産量の大きな差から、どのようなビジネス上の示唆が導き出せるかを考察します。複数の観点から構造的に考えると深まります。

  1. 生産性の違い:
    • 示唆: 日本のメーカーは、ライン数も多く、1ラインあたりの生産能力も格段に高いため、全体として生産性が非常に高い。これは、技術レベルの差(設備、自動化)、労働者のスキル、生産管理ノウハウの違いに起因する可能性。
    • 発展的考察: ナイジェリアのメーカーには、生産効率改善の余地が大きいかもしれない。技術導入やオペレーション改善により、生産量を向上できるポテンシャルがある。
  2. 国内市場規模の違い:
    • 示唆: アルミ缶の国内需要(特に飲料)が、日本と比較してナイジェリアはまだ小さい可能性。一人当たりのアルミ缶飲料消費量や、そもそも飲料市場におけるアルミ缶のシェアが低いのかもしれない。
    • 発展的考察: ナイジェリアの経済成長やライフスタイルの変化に伴い、今後アルミ缶市場が拡大する余地があるか?(これは次の問いにも繋がる)
  3. メーカーの事業規模・競争環境の違い:
    • 示唆: ナイジェリアでは、アルミ缶製造業がまだ発展途上であり、1社あたりの事業規模が比較的小さいのかもしれない。あるいは、国内に多数の小規模メーカーが乱立している可能性も考えられる。
    • 発展的考察: ナイジェリア国内のアルミ缶供給体制は、輸入に頼っている部分もあるのか?国内メーカーの集約や大規模化の可能性は?
  4. 投資・技術レベルの違い:
    • 示唆: アルミ缶製造には一定の設備投資が必要だが、その規模や最新性において、日本とナイジェリアでは大きな差がある可能性。資金調達環境や技術移転の状況が影響しているかもしれない。

面接官への報告(例):
「ナイジェリアのアルミ缶メーカーの一日あたり生産量(約65万本)は、日本の主要メーカーの平均的な生産量(推定約1,080万本)と比較すると、大幅に少ないと考えられます。
この差から、いくつかのことが示唆されると考えます。
第一に、生産性の大きな違いです。日本のメーカーはライン数、1ラインあたりの生産能力、稼働率のいずれにおいても高い水準にあると推測され、技術レベルや生産管理ノウハウの差が大きい可能性があります。
第二に、国内市場規模の違いです。ナイジェリアにおけるアルミ缶飲料の一人当たり消費量が、日本に比べてまだ少ない可能性があります。
第三に、これは仮説ですが、ナイジェリアのアルミ缶製造業の発展段階や競争環境が、日本とは異なり、比較的小規模なメーカーが中心である可能性も考えられます。
これらの点から、ナイジェリアのメーカーには生産性向上のポテンシャルがあり、またナイジェリアの市場自体も今後の成長余地があるのではないか、という点が示唆されるかと存じます。」

ディスカッションのポイント:

  • 示唆の深掘り:「生産性の違い」とは具体的に何が要因か?「市場規模の違い」はなぜ生じていると考えるか?
  • 定量的な裏付けの意識:可能であれば、推定した生産量から、例えば年間生産量に換算し、それをナイジェリアの人口で割るなどして、一人当たり供給量のような指標で比較する視点も有効(時間があれば)。
  • 次の問いへの繋がり:ここでの考察が、後の「原価計算」や「市場成長と価格戦略」の問いにどう繋がるかを意識する。

この問いでは、単に多いか少ないかを答えるだけでなく、その差の背景にある構造的な要因を考察し、ビジネス的な示唆を引き出す能力が評価されます。


続いて、与えられた数値情報に基づいて「アルミ缶1個あたりの原価」を計算する問題に進みます。

4. 【過去問解説③】「原価計算」と感度分析

生産量の推定と比較が終わると、次は具体的な数値情報が与えられ、それに基づいてアルミ缶1個あたりの原価を計算する問題に進みます。ここでは、与えられた情報を正確に読み解き、論理的にコストを積み上げていく能力が試されます。

お題:以下の情報を基に、このナイジェリアのアルミ缶メーカーにおけるアルミ缶1個あたりの原価を計算してください。また、主要なコストドライバーは何だと考えられますか?

与えられる情報(例):

  • 工場の一日あたり総固定費:100,000ナイラ (NGN)
  • アルミ原材料費:1缶あたり 2ナイラ
  • その他変動費(電力、副資材など):1缶あたり 1ナイラ
  • 一日あたり生産量:65万本(前問の推定値を使用、または面接官から指定される場合もある)
  • 為替レート:1ナイラ = 0.3円 (これは日本円換算する場合に使うが、まずは現地通貨ベースで計算)

(思考時間:例として3~5分程度を想定)

ステップ1:原価計算の構造理解(思考時間:~30秒)

まず、アルミ缶1個あたりの原価を構成する要素を明確にします。一般的に、原価は「変動費」と「固定費」に大別されます。

アルミ缶1個あたり原価 = 1個あたり変動費 + 1個あたり固定費

  • 1個あたり変動費: 生産量に応じて比例的に発生する費用。原材料費、電力費(一部)、副資材費など。
  • 1個あたり固定費: 生産量に関わらず一定額発生する費用を、生産量で割ったもの。工場の減価償却費、人件費(固定給部分)、賃料など。

ステップ2:与えられた情報の整理と計算(思考時間:~2分30秒)

与えられた情報を上記の構造に当てはめ、計算を実行します。

  • 1個あたり変動費の計算:
    • アルミ原材料費:2 NGN/缶
    • その他変動費:1 NGN/缶
    • 合計1個あたり変動費 = 2 NGN + 1 NGN = 3 NGN/缶
  • 1個あたり固定費の計算:
    • 工場の一日あたり総固定費:100,000 NGN
    • 一日あたり生産量:650,000本
    • 1個あたり固定費 = 総固定費 ÷ 生産量
      • = 100,000 NGN ÷ 650,000本
      • = 10 / 65 NGN/缶
      • = 2 / 13 NGN/缶
      • 概算: 約 0.154 NGN/缶 (計算しやすいように分数で保持するか、小数で概算する)
        • ディスカッションでの注意点: ここで無理に割り算して複雑な小数にするより、面接官に「2/13ナイラ、約0.15ナイラです」と伝える方が賢明な場合もある。
  • アルミ缶1個あたり総原価の計算:
    • 総原価 = 1個あたり変動費 + 1個あたり固定費
      • = 3 NGN + (2/13) NGN
      • = (39/13) NGN + (2/13) NGN
      • = 41/13 NGN/缶
      • 概算: 約 3.154 NGN/缶

(日本円換算する場合)

  • 1ナイラ = 0.3円 とすると、
  • 総原価(円) = (41/13) NGN × 0.3 円/NGN
    • = 12.3 / 13 円/缶
    • 概算: 約 0.946 円/缶

ステップ3:主要なコストドライバーの特定(思考時間:~1分)

計算結果と原価構造から、アルミ缶1個あたりの原価に最も影響を与える要素(コストドライバー)を特定します。

  • コスト構成の確認:
    • 変動費:3 NGN/缶
    • 固定費:約0.154 NGN/缶
    • 明らかに変動費の割合が圧倒的に大きい(約95%)
  • 変動費の内訳:
    • アルミ原材料費:2 NGN/缶
    • その他変動費:1 NGN/缶
    • 変動費の中でも、アルミ原材料費が2/3を占めている

主要なコストドライバーの結論:

  1. アルミ原材料費: 原価全体に占める割合が最も高く、その価格変動が直接的に原価に影響する。
  2. その他変動費: 次いで影響が大きい。電力価格や副資材の価格動向が重要。
  3. 生産量(稼働率): 固定費を按分するため、生産量(稼働率)が低下すると、1個あたりの固定費が上昇し、総原価を押し上げる要因となる。ただし、現状のコスト構成では変動費の影響が支配的。

面接官への報告(例):
「はい、与えられた情報を基に計算しますと、このナイジェリアのアルミ缶メーカーにおけるアルミ缶1個あたりの原価は、約3.15ナイラとなります。日本円に換算しますと、1ナイラ0.3円と仮定して約0.95円です。

内訳としましては、
まず、1個あたりの変動費は、アルミ原材料費2ナイラとその他変動費1ナイラを合計し、3ナイラです。
次に、1個あたりの固定費は、一日あたり総固定費10万ナイラを、一日あたり生産量65万本で割り、約0.15ナイラとなります。
これらを合計し、約3.15ナイラと算出いたしました。

この結果から、主要なコストドライバーは、まず原価の約3分の2を占めるアルミ原材料費、次いでその他変動費であると考えられます。固定費の割合は比較的小さいですが、生産量が大きく変動した場合には、1個あたり固定費も原価に影響を与える要因となり得ます。」

ディスカッションのポイントと感度分析の意識:

  • 計算プロセスの確認: 面接官は、あなたがどのように数値を処理し、論理的に計算を進めたかを見ています。必要であれば、計算過程をホワイトボードや紙に書き出しながら説明することも有効です。
  • 仮定の確認: 「一日あたり生産量」など、前問の推定値を使用する場合、その数値の妥当性について改めて触れられる可能性があります。
  • コスト削減の視点: 主要なコストドライバーを特定した後、「では、原価を下げるためにはどうすれば良いか?」という問いに繋がる可能性があります。原材料調達の見直し、生産効率改善による電力費削減、稼働率向上による固定費低減などが考えられます。
  • 感度分析の重要性:
    • 面接官から「もしアルミ原材料費が10%上昇したら、原価はどうなりますか?」といった質問が来るかもしれません。これは、どのコスト要素が原価全体にどれだけの影響を与えるか(感度が高いか)を理解しているかを見るためのものです。
    • 今回のケースでは、変動費(特にアルミ原材料費)の感度が非常に高いため、その価格変動リスクへの対応が経営上の重要課題となり得ることが示唆されます。
    • 事前に「アルミ価格が〇%変動すると、原価は約△%変動します」といったレベルで頭の中でシミュレーションしておくと、より深い議論ができます。

この原価計算の問いは、与えられた情報を正確に処理する能力だけでなく、その結果からビジネス上の課題や本質を読み取る分析力を試すものです。


続いて、これらの考察を踏まえ、「今後の市場成長と価格戦略」について考える問題に進みます。

5. 【過去問解説④】「市場成長と価格戦略」の考察

これまでの生産量推定、日本との比較、原価計算を踏まえ、いよいよ将来の市場動向と価格戦略について考察する問題に進みます。ここでは、与えられた仮定を基に、論理的かつビジネス的な視点から未来を予測し、戦略的な提言を行う能力が問われます。

お題:以下の仮定を考慮し、今後ナイジェリアのアルミ缶市場の成長性および、このメーカーが取るべき価格戦略について、あなたの考えを述べてください。

与えられる仮定(例):

  • 市場成長ドライバー:
    • ナイジェリアの人口は今後も増加傾向。若年層が多い。
    • 経済成長に伴い、中間所得層が増加し、飲料消費量が増える見込み。
    • 都市化の進展により、缶入り飲料のような利便性の高い商品への需要が高まる。
    • 一方で、プラスチックごみ問題への意識の高まりから、アルミ缶のようなリサイクル性に優れた容器への関心が高まる可能性がある。
  • 競争環境:
    • 現在、ナイジェリア国内のアルミ缶メーカーは数社に限られ、寡占的な市場構造。
    • 輸入品(飲料そのもの、または空のアルミ缶)との競争も存在する。
    • 今後、海外の大手アルミ缶メーカーや飲料メーカーがナイジェリア市場に本格参入してくる可能性がある。
  • コスト構造(前問より):
    • 変動費(特にアルミ原材料費)の割合が高い。
    • 生産量を増やすことによる1個あたり固定費の削減効果は限定的。

(思考時間:例として5~7分程度を想定)

ステップ1:市場成長性の分析(思考時間:~2分)

与えられた仮定を基に、ナイジェリアのアルミ缶市場が今後どのように成長していくか、そのドライバーと阻害要因を整理し、全体としての成長性を評価します。

  • 成長ドライバーの評価:
    • 人口増加・若年層: 市場全体のパイ拡大に直結する最も基本的なドライバー。特に若年層は缶飲料への親和性が高い。
    • 中間所得層の増加・飲料消費増: 所得向上は、嗜好性の高い缶入り飲料の消費を後押しする。
    • 都市化と利便性追求: 都市部では、手軽に購入・消費できる缶入り飲料の需要が高まる。
    • 環境意識の高まり(アルミ缶の追い風): プラスチック容器と比較してリサイクル性に優れるアルミ缶は、環境意識の高い層や規制当局から好意的に受け止められる可能性。
  • 阻害要因(またはリスク)の考察:
    • 原材料価格の変動: アルミ地金の国際価格や為替レートの変動が、アルミ缶の価格やメーカーの収益性に影響を与える。
    • 代替容器との競争: ペットボトル、瓶、紙パックなど、他の飲料容器との競争は依然として存在する。
    • インフラ未整備: 電力供給の不安定さや物流網の未整備が、安定的な生産・供給の足かせとなる可能性。
    • 海外からの新規参入による競争激化: 市場の成長性が見込まれれば、より資本力や技術力のある海外企業が参入し、競争が激化するリスク。

市場成長性の結論(例):
「ナイジェリアのアルミ缶市場は、人口増加、経済成長、都市化、そして環境意識の高まりといった複数の強力な成長ドライバーに支えられ、今後も高い成長性が見込まれると考えます。ただし、原材料価格の変動リスクや、将来的な競争激化の可能性には留意が必要です。」

ステップ2:価格戦略の方向性検討(思考時間:~3分)

市場の成長性を踏まえ、当該メーカーが取るべき価格戦略の方向性を検討します。コスト構造、競争環境、目指すべき市場ポジションなどを考慮します。

  • 考慮すべき要素:
    • コスト構造(再確認): 変動費比率が高く、生産量によるコスト削減効果は限定的。つまり、大幅な値下げによる価格競争は仕掛けにくい。
    • 競争環境(現状): メーカー数社による寡占市場。価格競争はそれほど激しくない可能性があるが、輸入品や代替容器との競争はある。
    • 競争環境(将来): 海外からの新規参入があれば、価格競争が激化するリスク。
    • 市場の成長段階: 成長初期~成長期と考えられるため、シェア獲得も重要な目標となる。
    • ブランド力・製品差別化: 当該メーカーのブランド力や、製品(アルミ缶そのもの)の品質・機能面での差別化要素は限定的と推測される。
    • ナイジェリアの消費者の価格感応度: 中間所得層が増加しつつも、まだ価格に敏感な層が多い可能性。
  • 価格戦略のオプション:
    1. 浸透価格戦略(ペネトレーション・プライシング):
      • 市場シェア拡大を狙い、初期は比較的低価格で提供し、広く市場に浸透させる。
      • メリット:早期の顧客獲得、市場シェア確立、新規参入障壁の構築。
      • デメリット:利益率が低い、コスト構造的にどこまで下げられるか。ブランドイメージの低下リスク。
    2. スキミング価格戦略(上澄み吸収価格戦略):
      • 高品質・高付加価値を訴求し、高価格で提供。価格よりも品質やブランドを重視する層をターゲットとする。
      • メリット:高い利益率、ブランドイメージの構築。
      • デメリット:ターゲット層が限定される、製品の差別化が不可欠。アルミ缶というコモディティ製品では難しいか。
    3. 市場価格追随戦略(ゴーイングレート・プライシング):
      • 競合他社の価格設定を参考に、同程度の価格で提供。
      • メリット:価格競争を避けられる、安定的な収益確保。
      • デメリット:差別化が難しく、価格以外の競争要因(品質、サービスなど)が重要になる。
  • 価格戦略の方向性の結論(例):
    • 市場の成長初期であり、かつ当該メーカーが既存プレイヤーであること、製品の差別化が難しいことを考慮すると、基本的には市場価格に追随しつつ、安定的な供給と品質を維持することで信頼を獲得するのが現実的。
    • ただし、将来的な競争激化を見据え、コスト競争力を維持・強化し、必要に応じて価格競争に対応できる体力をつけておく必要がある。
    • また、高付加価値なアルミ缶(例:特殊な形状、高品質な印刷、環境配慮型素材)を開発できれば、一部製品でスキミング的な価格設定も可能かもしれないが、それは中長期的な課題。

ステップ3:結論と提言の整理(思考時間:~1分30秒)

市場成長性と価格戦略の方向性をまとめ、面接官に報告します。

面接官への報告(例):
「今後のナイジェリアのアルミ缶市場は、人口増加や経済成長を背景に高い成長性が見込まれます。特に、環境意識の高まりはアルミ缶にとって追い風になると考えます。

このような成長市場において、当該メーカーが取るべき価格戦略としては、以下の方向性が考えられます。

まず短期的には、既存メーカーが数社に限られる現状では、市場価格に追随し、安定供給と品質を強みとすることで、着実にシェアを維持・拡大していくべきだと考えます。現在のコスト構造(変動費比率が高い)を考えると、積極的な値下げによるシェア獲得は利益を圧迫するリスクがあります。

中長期的には、海外からの新規参入による競争激化が予想されます。これに備え、継続的な生産効率の改善によるコスト競争力の強化が不可欠です。また、もし技術開発によって高付加価値なアルミ缶(例:デザイン性、機能性に優れた缶)を市場に投入できるようであれば、一部製品群でプレミアム価格戦略を取り、収益性を高めることも検討すべきです。

総じて、成長市場の機会を捉えつつも、コスト意識と将来の競争環境の変化を見据えた、柔軟な価格戦略が求められると考えます。」

ディスカッションのポイント:

  • 仮定の妥当性: 「なぜその成長ドライバーが最も重要だと考えるのか?」「海外メーカーの参入リスクをどう評価するか?」
  • 戦略の実行可能性: 「コスト競争力を強化するために、具体的に何をすべきか?」「高付加価値なアルミ缶とは、例えばどのようなものか?」
  • リスクシナリオ: 「もしアルミ原材料価格が急騰したら、価格戦略はどう変わるべきか?」
  • 長期的視点: 3年後、5年後、10年後で、市場環境や取るべき戦略はどう変わっていくと考えるか。

この問いでは、与えられた情報を基に未来を予測し、それに対する戦略的な方向性を示す「構想力」と、その根拠を論理的に説明する「説得力」が評価されます。


続いて、これらの高難易度フェルミ推定全体を通じて、MBB面接官がどのような点を評価し、どこで差がつくのかをまとめて解説します。

6. MBB面接官からの「一言アドバイス」と「差がつくポイント」

今回の「ナイジェリアのアルミ缶メーカー」のような高難易度フェルミ推定では、単に数値を出すだけではなく、そのプロセス全体を通じて受験者の多面的な能力が評価されます。MBBの面接官は、あなたが将来有望なコンサルタントとなり得るか、そのポテンシャルを見極めようとしています。

MBB面接官からの「一言アドバイス」

  • 「思考の『プロセス』を見せてください。完璧な答えは求めていません」
    • 特に馴染みのないテーマや複雑な問いに対して、最初から完璧な答えを出すことは不可能です。面接官が見たいのは、あなたがどのように問題に取り組み、情報を整理し、仮説を立て、論理を構築していくか、その「思考のプロセス」そのものです。詰まっても構いません。何を考え、どこで困っているのかを正直に伝え、面接官との対話を通じて思考を深めていく姿勢が重要です。
  • 「その『仮定』、なぜそう置いたのですか?代替案はありますか?」
    • フェルミ推定の肝は「仮定を置く力」です。そして、その仮定には何らかの「論理的な根拠」(たとえそれがアナロジーや一般常識からの推論であっても)が求められます。なぜその数値を設定したのか、他にどのような置き方が考えられたのか、そしてその仮定が変わると結果はどう変わるのか(感度分析の意識)を説明できることが重要です。
  • 「木を見て森も見ていますか?(構造と大局観)」
    • 詳細な数値計算に没頭するあまり、全体像や問いの本質を見失ってはいけません。常に「今、何を明らかにするためにこの計算をしているのか」「この結果が、次の問いにどう繋がるのか」といった大局観を持つことが大切です。構造化された思考は、その手助けとなります。
  • 「その数字から、何が『言える』のですか?(ビジネス的示唆)」
    • フェルミ推定は数学のテストではありません。算出した数値や比較結果から、どのようなビジネス上の意味合いや戦略的な示唆を引き出せるかが問われます。「So What?(だから何なのか?)」を常に自問自答する癖をつけましょう。
  • 「プレッシャーの中でこそ、あなたの『地力』が見えます」
    • 高難易度フェルミ推定は、意図的にストレスのかかる状況設定になっていることがあります。時間制限、馴染みのないテーマ、鋭い質問…。そのような中で、冷静さを保ち、論理的に思考を続け、建設的なコミュニケーションを取れるか、あなたの「知的体力」や「精神的なタフさ」が見られています。

高難易度フェルミ推定で「差がつく」ポイント

上記の「一言アドバイス」を踏まえ、他の受験者と差をつけるための具体的なポイントを挙げます。

  1. アプローチ設定の戦略性:
    • 複数の推定アプローチを想起した上で、なぜそのアプローチを選択したのか、そのメリット・デメリット、他のアプローチの課題などを明確に説明できること。単に「やりやすいから」ではなく、お題の特性や情報の制約を考慮した戦略的な選択が求められます。
  2. 仮定の質の高さと説明責任:
    • より現実味のある、あるいは納得感のある仮定を置けること。そのためには、日頃から幅広い分野に関心を持ち、一般的な数値データ(人口、GDP、産業構造など)に対する感覚を養っておくことが有効です。
    • そして、その仮定に至った思考のプロセスや根拠を、たとえ簡潔であっても論理的に説明できること。
  3. 構造化の巧みさと深さ:
    • 複雑な問題を、MECEかつ意味のある切り口で、多階層にわたって構造化できること。そして、その構造が、推定の精度向上や本質的な論点の抽出に貢献していること。
    • 例えば、単に「生産ライン数」と置くのではなく、「大型ラインと小型ラインがあるのでは?」「それぞれで生産品目が異なるのでは?」といった、より解像度の高い構造化ができると評価が上がります。
  4. 数値に対する感度とビジネスセンス:
    • 算出した数値が、現実のビジネス感覚から大きく乖離していないか、常にチェックする姿勢。
    • どのパラメータが結果に最も大きな影響を与えるか(感度分析)を意識し、そのパラメータの妥当性を重点的に議論したり、複数のシナリオを提示したりできること。
    • 原価計算においては、単に計算するだけでなく、そのコスト構造の特徴(例:変動費比率が高い)を捉え、それが企業の価格戦略や収益性にどのような影響を与えるかまで言及できると、ビジネスセンスの高さを示せます。
  5. ディスカッションにおける思考の柔軟性と発展性:
    • 面接官からの質問や指摘を、単なる「間違いの訂正」と捉えるのではなく、自らの思考を深め、新たな視点を得るための「ヒント」として積極的に活用する姿勢。
    • 例えば、面接官から「その仮定は楽観的すぎませんか?」と問われた際に、単に数値を修正するだけでなく、「確かに、〇〇というリスクを考慮すると、より悲観的なシナリオとして△△という数値も考えられます。その場合、結果は□□となり、当初の結論に対する示唆も変わってくる可能性があります」といった形で、議論を発展させられると高く評価されます。
  6. 時間管理能力と結論へのコミットメント:
    • 複雑な問いであっても、与えられた時間内に、必ず何らかの結論(たとえそれが完璧でなくても)を提示する能力。途中で思考が停止したり、時間切れで何も言えなかったりするのは最悪のケースです。時間を意識しながら、思考の深度と速度のバランスを取る訓練が必要です。

高難易度フェルミ推定は、まさにあなたの「コンサルタントとしての器」を試すものです。日頃から論理的思考力を鍛え、幅広い知識を吸収し、そして何よりも「考えることを楽しむ」姿勢を持つことが、突破への近道となるでしょう。

最後に、本記事のまとめとして、高難易度フェルミ推定を制し、思考の深さを示すための総括を行います。

7. まとめ:高難易度フェルミを制し、思考の深さを示す

これまでの章で、高難易度フェルミ推定の代表例として「ナイジェリアのアルミ缶メーカー」の事例を取り上げ、生産量推定から日本との比較、原価計算、そして将来の市場成長と価格戦略の考察に至るまで、その思考プロセスとMBB面接官が注目するポイントを詳しく解説してきました。

高難易度フェルミ推定は、単に数値を当てるゲームではありません。それは、未知の状況や複雑な情報に直面した際に、あなたがどのように論理的に思考を組み立て、本質的な洞察を引き出し、ビジネス上の意味合いを読み解き、そしてそれを説得力を持って伝えられるかという、戦略コンサルタントに不可欠なコアスキルを試すものです。

高難易度フェルミ推定突破のための総括ポイント:

  1. 「前提設定」で土台を固める:
    • 曖昧なお題に対して、何を問われているのか、どのようなスコープで考えるのかを面接官と明確にすり合わせることが全ての出発点です。特に馴染みのない国や製品がテーマの場合、この初期設定の巧拙がその後の思考の質を大きく左右します。
  2. 「構造化」で複雑性を解きほぐす:
    • 一見捉えどころのない問題も、適切な切り口でMECEに分解・構造化することで、思考の全体像が見え、論点が整理されます。供給ベース、需要ベースといった基本的なアプローチの型を理解しつつ、お題に応じて柔軟にカスタマイズする能力が求められます。
  3. 「仮定」に論理と根拠を込める:
    • 未知の数値に対して仮定を置く際は、なぜその数値を設定したのか、その背景にある思考プロセスや比較対象(例:日本の事例からの類推、一般的な業界構造からの推論)を明確に説明できるように準備します。「何となく」ではなく、「論理的な推測」であることが重要です。
  4. 「数値」から「意味」を読み解く:
    • 算出した数値は、それ自体がゴールではありません。その数値がビジネスの文脈で何を意味するのか(例:生産性は高いか低いか、コスト構造はどうなっているか、市場の魅力度はどうか)を考察し、そこから示唆を引き出す能力が問われます。「So What?」「Why So?」の精神を忘れないでください。
  5. 「比較」と「接続」で思考を深める:
    • 複数の問いが連なる場合、それぞれの問いを独立して解くのではなく、前の問いの結果や考察を次の問いにどう繋げるかを常に意識します。例えば、生産量の推定結果は、原価計算の分母となり、市場比較のインプットとなります。このように、思考を連動させ、積み重ねていくことで、より深い洞察に至ることができます。
  6. 「ディスカッション」で思考を進化させる:
    • 面接官との対話は、あなたの思考を試し、深める絶好の機会です。質問や指摘を恐れず、むしろ思考を進化させるためのヒントとして積極的に活用しましょう。自分の考えに固執せず、柔軟に軌道修正できる能力も評価されます。
  7. 「時間管理」と「結論への執着」:
    • どんなに複雑な問題でも、与えられた時間内に必ず何らかの結論(数値や方向性)を出すことが求められます。完璧を目指すあまり時間切れになるよりは、ある程度のところで割り切り、論理的なプロセスを示しながら結論を出す方が評価されます。

高難易度フェルミ推定は、あなたの「知的瞬発力」と「ビジネス基礎体力」の証明

高難易度フェルミ推定は、まさにあなたの知的な瞬発力、論理構築能力、ビジネスに対する基礎的な理解度、そしてプレッシャーの中で冷静に思考を続ける精神的なタフさを総合的に測るものです。

日常的にニュースやビジネス記事に触れ、様々な数値データ(人口、GDP、市場規模など)に対する感覚を養い、物事を構造的に捉え、仮説を立てて考える訓練を積むことが、これらの能力を高める上で不可欠です。

Strategistsでは、このような高難易度なフェルミ推定にも対応できる本質的な思考力を養成するため、実践的な問題演習と、個々の思考プロセスにまで踏み込んだ徹底的なフィードバックを提供しています。

この記事が、皆さんの戦略コンサルタントへの挑戦、特に難解なフェルミ推定に対する自信と具体的な対策の一助となることを心より願っています。


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